6月18日、12月にグランドオープン予定の横浜F・マリノスの新拠点「マリノスタウン」のなかで、オフィシャルショップ「TRICOLORE ONEみなとみらい店」がひと足早くオープンした。前日の17日には、シーズンチケットを持つサポーターと、ファンクラブ会員に向けたお披露目がなされ、施設の全貌が見えてきた。
横浜F・マリノス 横浜F・マリノス、「マリノスタウン」にオフィシャルショップ「マリノスタウン」は、横浜マリノス本社とグラウンド、クラブハウス、ショップ、レストランなどが入り、横浜F・マリノスの新たな拠点となる複合施設。その総事業費は推定20億円。狙いは、育成からトップまで一貫したトレーニング環境を整備し、これまで2拠点に分散していたクラブの機能を集結することだ。グラウンドは4面のうち3面を横一列に配置し、トップチームの練習の横でジュニアチームが練習できるようにした。日本代表にも選ばれる国内トップクラスの選手を揃えるマリノスだけに、子供たちにとってそのプレーを間近に見て学べるという環境は非常に刺激的だろう。
マリノスのMM21施設名称が「マリノスタウン」に決定そしてもう一つの狙いは、市民やサポーターに憩いの場を提供すること。単なる練習場ではなく、サッカーという文化の魅力を体感してもらうたもの施設なのだ。横浜マリノス代表取締役の左伴繁雄さんはこう語る。「クラブは弱いのに、たくさんの人が応援し続けている、そんな光景をヨーロッパでたくさん見てきました。それはクラブが街の人にとって身近な存在だからできることです。世界規格の強いチームをつくることと同時に、みんなが来やすい場所に拠点を構えて身近な存在になる、だからみなとみらいを選びました。都会で仕事に疲れたビジーな人たちに『楽しくやりましょう』という姿勢をクラブから発信していければと思います」。
ヨコハマ発、「世界規格」のチームへ。横浜F・マリノスの果てしなき挑戦店舗棟の1階にオープンしたオフィシャルショップ「TRICOLORE ONEみなとみらい店」は3店舗目となる直営店。この店で取り扱うアイテム数は約500で、年間売上目標は約2億円。これはJリーグのチームのなかでもトップクラスの充実ぶりと言える。ショップにはトロフィーやユニフォームの小さな展示スペースがあり、その横には大型スクリーンがあり、マリノスの過去の試合を編集したDVDが放映されている。アウェーの試合映像やライブ中継も放映していくという。
ショップの隣には、イタリアンレストランが7月13日にオープンする。サポーターにとって、グラウンドでの練習風景を眺めながら楽しむ料理は格別なことだろう。横浜マリノスの浅見さんは、「スポーツにとって食事は重要なファクターです。それなのに、こうした施設での食事はレトルトものが多いのが現実。ここでは、一流ホテルのシェフを務めた料理人が、本格的な料理を手頃な価格で提供します」と語る。1階にはコンビニエンスストア「ローソン」も7月1日にオープンする。クラブハウス棟は12月に完成する予定だ。
グラウンドの一辺には2,020人収容、中央部分に屋根のついた立派な観戦スタンドがあり、練習の様子を間近で見ることができる。練習場なのに少し豪華すぎるのではないか、と思う人もいるだろう。しかし、それには理由がある。「ヨーロッパでは、サッカーは人の心を豊かにするソフトとして機能しています。マリノスタウンは、サッカーをそうした人の心を豊かにするソフトとして見せていくということを主軸に置いて設計しました。そして、街によって魅力的な施設のあり方は異なります。横浜は分化施設、商業施設が充実した、洗練された大都市。ハイスタンダードな施設にしなければ、ソフトとして相手にされない。だから、品格や質感にこだわりました」(浅見さん)。アメニティの豊富な都市の中で「ソフト」としての強さを生み出すために、高品質な施設が求められるということだ。
「サッカーの街」と聞いて思い浮かぶ日本の街はどこだろう? 清水、浦和、鹿島といった、街ぐるみでチームを応援する一体感のある街が思い浮かぶだろう。358万人もの人口を抱え、アメニティの豊富な大都市・横浜は、そうした「サッカー一色」の街とは性格的に異なる。しかし、この「マリノスタウン」建設をはじめ、横浜は「都市型のサッカータウン」へと少しずつ変わり始めている感覚がある。特に近年、注目すべき動きを紹介したい。
ワールドカップ(W杯)ドイツ大会開幕で日本中でサッカー熱が高まっている現在。日本サッカー協会とキリンビールは5月28日、日本代表の応援基地「SAMURAI BLUE PARK」が横浜赤レンガ倉庫イベント広場にオープンした。約30メートル四方の青色のテント内では、大型スクリーンでドイツから送られる日本代表の最新映像の放映や、日本代表の歴代ユニフォームやトロフィーの展示などが行われている。しかしその最大の目玉は、そこで書いた日本代表への応援メッセージが、ドイツでの日本代表のキャンプ地であるボン市で開設している応援基地「G-JAMPS」に届けられるということだ。子供からお年寄りまで、多様な年代の人がカードに思い思いの言葉を書き、専用ポストへと投函していた。
赤レンガ倉庫にサッカーW杯日本代表の応援基地が出現横浜は前回の2002年の日韓共催ワールドカップで大きく注目された。ワールドカップ本大会初勝利という歴史的な1勝をあげたのは横浜国際競技場(現:日産スタジアム)だった。そして、4年に一度、世界一の国を決める決勝戦の舞台にもなった。もちろん、それ以前にも横浜では多数のサッカーの国際試合が行われている。「SAMURAI BLUE PARK」が横浜に設置された背景には、観光都市・国際都市としてのブランド力の高さと、サッカーの重要な国際試合を行ってきたという実績がある。また、サッカー日本代表チームのオフィシャルスポンサーで、「キリンカップ」などを開催しているキリンビールの発祥の地が横浜であることも大きい。
横浜出身で、日本代表の背番号10番を任されるスタープレーヤー・中村俊輔選手がプロデュースするサッカースクール「Shunsuke Park」が、そごう横浜店の屋上に4月に開校した。現役選手によるアカデミー設立は日本で初めてで、世界的にも稀なことだ。中村選手も帰国時にはスクールの子供たちに直接指導するとのことで、子供たちはその高い技術とサッカーセンスを学び、飛躍的に成長していくことだろう。
中村俊輔サッカースクール設立-現役選手として日本初 中村俊輔サッカースクールは「そごう横浜店屋上」に開校「マリノスタウン」の隣には、横浜市スポーツ振興事業団が高機能都市型スポーツ施設「横浜みなとみらいスポーツパーク」をこの夏オープンする。夜間照明付きの人工芝フィールドと、シャワー室、会議室などを備えたクラブハウスなどが設置される。これは横浜市が日本サッカー協会から「モデル的スポーツ環境整備助成金」1億2600万円を受けて建設が決まったもの。サッカーを中心に、フットサル、ラグビー、アメリカンフットボールなど、フィールド系スポーツで一般市民が利用できる施設だ。商業施設・観光施設が充実した都心部であり、かつサッカーが身近な場所でもある――そんな新しい都市像を目指す横浜の挑戦に期待したい。
高機能都市型施設「みなとみらいスポーツパーク」開設