「横浜ベイクォーター」は「ヨコハマポートサイドA-3街区プロジェクト」として進められてきたもので、事業者は土地を所有する三菱倉庫、運営はその100%子会社である横浜ダイヤビルマネジメント(本社:横浜市神奈川区)。トータルプロデュースを北山孝雄氏率いる北山創造研究所(本社:東京都港区)が行っている。北山氏は安藤忠雄氏の双子の弟。
横浜ベイクォーター 75店舗が出店し「横浜ベイクォーター」がオープン北山創研は、1997年の「サンストリート亀戸」(東京都江東区)、2002年の「ビナウォーク海老名」(神奈川県海老名市)、2005年の「アスナル金山」(名古屋市中区)などといった商業施設のトータルプロデュース実績があり、コンセプト、デザインから店舗のリーシングまでを一手に引き受けている。事業概要は、建物としては地下2階・地上8階で延床面積58,640平方メートルを持つが、そのうち地上2階から7階までに店舗が入っている。店舗の総面積は12,500平方メートルで、75店が入居する。駐車場は730台が収容できる。
年間売上は約100億円、年間来街者数は約1,000万人、商圏人口は約300万人をそれぞれ想定している。「主婦に強い百貨店、『そごう横浜店』に隣接していますし、平日の昼間に来られる30代から50代の大人の女性が、もう一歩踏み込んで楽しめる施設を目指しました」と語るのは、横浜ダイヤビルマネジメント営業部の田中智枝さん。
75店のショップは、タラソテラピー・スパ「テルムマラン ヨコハマベイ」、大型インテリアショップ「アクタス」、横浜港を一望できそうなレストラン群のほか、4階にはバイリンガル託児サービス「だっこルームプラス」もあり、外国人も含めて女性が小さな子供を預けて、自分の時間を楽しめるように配慮されている。
横浜ベイクォーターに「バイリンガル教育」対応の託児所コンセプトは「美・交・創」とのこと。商業施設としては、ファッション系のアパレルの店はメンズはもちろんレディースも少なく、広い面積を占めるインテリア関連や26店あるレストラン&カフェ、タラソテラピーのような美容関連が主流になっている。これは、新田間川に架かるかもめ橋で連結している「横浜そごう」との相互補完関係を考えたもので、百貨店の売り上げの本丸であるアパレルや食料品とは別の部分で、集客する意図を反映している。シネコンをはじめとするファミリー向けの施設、若者向けのファッションを展開せずに、あくまで大人の女性にターゲットを絞って、既存の横浜駅周辺の商業施設との差別化が行われている。
また、商業施設ではおそらく初めて、犬を連れて散歩できる場所になっており、一部ではあるがドッグカフェ「フレッシュネス・ドッグカフェ」など、犬と入れる店もある。ベットブームを考慮した新しい試みで、小型犬を籠に入れて来店する顧客も目立った。3階には「シーバス」横浜駅東口の乗り場があり、1時間に約4本がみなとみらい21、ピア赤レンガ、山下公園を結んでいる。みなとみらい21地区や中華街、元町へのアクセスも便利で、観光客の取り込みも狙える立地である。全般的にオープンモール形式で、路面店のような感覚で店が並んでおり、それぞれの店の個性が発揮できるようになっている。なお、施設の開店時間は午前11時で、閉店は午後9時、レストランのみは午後11時まで営業している。
さて、既報のように「横浜ベイクォーター」の一つの売りは、施設を彩る様々なアートである。まず、何といっても豪華客船をモチーフにした全体のデザインは、なかなか迫力があり、夜景に映えるデザインだ。「横浜らしさって何だろうと考えていった時に、根っこにあるものを表現することが必要だと感じました」と、北山創研執行役員計画推進担当の松岡一久氏。雨天の日や厳寒の冬の日は不利な環境になるが、それを補って余りあると判断して採用したという。
壁、天井、床など共用部のデザインには、スウェーデンの代表的デザイナー、ニーナ・ヨブス氏を起用。「オアシスクルーズ」をテーマに、鳥・木・葉・雲のグラフィックスが、やさしい色使いで描かれており、癒されるデザインだ。また、横浜に縁の深い若手アーチストの発表の場として、3、4、5階の共用部の壁面に「ギャラリーボックス」と呼ばれる27個のガラス張りの空間を設置した。キュレーターを務めるのは、「横浜トリエンナーレ2005」のキュレーターとして活躍した芹沢高志氏。オープンから2カ月は、「横浜ベイクォーター」のメインビジュアルを手掛けた、遠山敦氏の作品を展示する。
あるいは、駐車場の壁面には、1日の行動・生活のパターンを21色の色分けで表現したアートプロジェクト「ライフストライプ」を採用。横浜にゆかりがある、中田横浜市長、横浜ベイスターズの選手、「よこはま動物園ズーラシア」の人気者オカピなどの「ライフストライプ」が展示されている。
広場など共用部のファニチャーは、インテリアショップ「シボネ」がセレクト。「シボネ」は館内3階に入居する「ジョージズ」による、感度の高い人向けのショップブランドで、オランダの「モーイ」など、ヨーロッパの新進気鋭デザイナーの作品を選んでいる。施設内のBGMもオリジナルにこだわり、大人向けのジャズをはじめとするコンピレーションサウンドを、1日をデイタイム、イブニングタイム、ナイトタイムと、4時間ごとの3セットに分けて、流している。音楽のセレクトを担当するのは、日本のDJの草分けで「レコード番長」こと須長辰緒氏、DJ・クリエイティブディレクターの沖野修也氏、アーティスト・DJなどで活躍する田中知之氏の3人となっている。買物などのついでにアートに触れてもらい、市民が心豊かな生活を送れるような環境をつくる、狙いがある。
さて、テナントのほうに話題を移すと、この商業施設の性格を決める店舗の1つが、最上階の6、7階に位置する世界初の都市型タラソテラピー・スパ「テルムマラン・ヨコハマベイ」である。延床面積は約2,100平方メートル。運営は、タラソシステムジャパン(本社:東京都中央区、以下タラソ社と略す)の子会社である、タウ(本社:東京都中央区)。タラソ社は、フランスのテルムマラン・ド・サンマロ社と技術提携し、日本での「テルムマラン」ブランド使用権を有している。
ベイクォーターに「テルムマラン」の都市型タラソスパタラソ社は日本でのタラソテラピー草創期の1997年に、南房総の千葉県勝浦市に直営で、「テルムマラン・パシフィーク」をオープン。次に2003年には、愛知県蒲郡市にコンサルティングを行った「テルムマラン・ラグーナ」をオープンしている。そして、今回の横浜の施設は、「テルムマラン」ブランドでの3店目の展開となる。
フランスでは健康増進のための医療行為であり、健康保険の対象ともなっているタラソテラピーは、1876年にフランス人医師のラ・ボエディエール博士によって命名された。ギリシャ語の「タラサ」(海)と、フランス語の「セラピー」(療法)の造語で、日本語では「海洋療法」と訳される。海水・海藻・海泥といった海洋資源を活用するため、従来の施設は、水のきれいなリゾート地の海辺に立地していた。しかし、「テルムマラン・ヨコハマベイ」では、伊豆の駿河湾沖で汲み上げた海水を毎日輸送するシステムを整備し、都市型タラソテラピーを実現した。
7階のスパエリアには、メインの施設として、海水を人間の体温に近い35度前後に温めた多機能プール「アクアトニック」(平均水深1.2メートル、約310平方メートル)がある。10カ所にジェットを備えた、ミネラル成分たっぷりのいわば「海水のお風呂」の各ゾーンをめぐることで、肌がきれいになり、ストレスや疲労からの回復、健康維持、疾病予防などに役立つ。
そのほか、スチームサウナ、ドライサウナ、霧状の海水を充満させたマリンミストルーム、休息のためのリラクゼーションルームが設置されている。また、6階には有機栽培で育てられた天然素材の各種ドリンクを提供するドリンクバーがある。料金は平日5,250円、土曜・日曜・祝日7,350円だが、お得な何度でも使える月極めの会員料金(オールタイム会員31,500円、デイタイム会員及びナイトタイム会員21,000円)もある。
6階のトリートメントエリアは、女性のみ利用可能で、29のプログラム(別途8,400円~36,750円)があり、ボディ、フェイシャルの海水や海藻を使った施術を個室で受けられる。2つあるデラックスキャビンは、1人用(チャージ4,200円)と2人用(チャージ6,300円)があり、利用は2時間単位。ホテルの1室をキープしたような気分で、横浜港を眺めてゆったりとリラックスできる。
男性は会員か、会員の同伴者、または女性の同伴者は入場できるが、トリートメントエリアには入場できない。年齢制限もあり、女性でも16歳未満は入場できない。タウでは、50代のお金の余裕がある、大人の女性をメインターゲットに想定している。定期的なトリートメントを必要としていて、リゾートまで何度も通うには忙しくて時間の都合をつけるのが難しい顧客を取り込み、従来になかった新しいタイプのタラソテラピー愛好者を開拓したいとしている。
5階にある「アクタス」は、アクタス(本社:東京都新宿区)が展開する東京・新宿に本店を持つ、グレード感のあるインテリアショップで、直営店では10店目、横浜には初の出店である。売場面積1,450平方メートルは「横浜ベイクォーター」の物販では最大規模で、横浜都心部の新しい高層マンション住民をコアターゲットとしている。
ショップは4つのブロックに分かれており、Aブロックの「アクタスオリジナル家具・インテリア小物」では、北欧、イタリア、ドイツ、アジア、日本等々、「アクタス」が持つさまざまなテイストをつなぎ合わせて、常に新しいタイフスタイルを提案。
Bブロックの「キッズストア」では、今年12月に東京・自由が丘にオープンを予定している同社初のキッズ専門ショップへのリサーチを兼ねて、年間を通じてデザイン性の高いキッズストアを展開。様々なギフトを提案する。
Cブロックの「クヴァドラ&テキスタイルスタジア」は、アクタスが日本総代理店を務める、デンマークのテキスタイルブランド「クヴァドラ」の本格展開など、より専門化したテキスタイルとベッド、ベッドウェアのコンサルティングスタジオである。
Dブロックの「ポーゲンポール&モルティーニ&C」は、ドイツのシステムキッチン「ポーゲンポール」と、イタリアのファニチャーブランド「モルティーニ&C」」という、ヨーロッパのトップブランドのブースである。より深いサービスが提供できる、エグゼクティブ・ラウンジのような空間を目指している。
アクタス広報の池田景子さんによれば、「今回はアクタスとしては初めて提案した『キッズストア』と、5セットのシステムキッチンで、ダイニングとリビングが調和した空間のシーンを見せていく『ポーゲンポール&モルティーニ&C』を、特に強調したいです」とのこと。
リフォームスタジオの「アクタスラボ」も、東日本で初めて設けるなど、幾つかの新しい試みも導入している。そのほか、インテリア関係では、全国に約70店のショップを持つ、ジェイテックス(本社:東京都目黒区)の「ワンズ」が、新ブランド「ワンズテラス」1号店を3階に出店している。従来の「ワンズ」は郊外中心に出店しており、季節感を出した商品でファミリー層を狙っていた。しかし、今回の「ワンズテラス」では、20代、30代のシングルの女性をターゲットに、トレンドを強調していきたいという。10月には東京・自由が丘に2号店が予定されている。
また、3階の「ジョージズ」は、京都・烏丸三条の「新風館」、東京・国立の路面店(「シボネ」のブランド名で出店)と同じく、カフェ「アスク・ア・ジラフ」を併設した出店で、18店目のショップである。今回の店は約115平方メートルの小型店で、本格的な家具の展開はなく、こだわりの雑貨を販売する店である。また、カフェは従来、表参道のカリスマカフェ「ロータス」のオーナー、山本宇一氏とのコラボレシーョンを行ってきたが、今回はコラボせずに単独で出店している。
さらに、3階の東京・恵比寿に本店を持つ料理研究家・栗原はるみさんのショップ「ゆとりの空間」は、全国5店目(カフェのみの展開を含めれば9店目)の出店で、レストランを併設し、食事、食器、雑貨、エプロン、ウェアをトータルに生活提案する。青山の北欧インテリアショップ「サマンナ」が、日本初上陸のデンマークの若手デザイナーによる、インテリアグッズを中心に商品展開する「サマンナ・ストランド」も3階にあり、「横浜ベイクォーター」のインテリア関連のショップは全般的に、東京発のアッパーなブランドで充実している。オープン初日は、子供連れで賑わう「アクタス」をはじめ、「ジョージズ」、「ゆとりの空間」あたりは来店数も非常に多く、順調にスタートを切った模様だ。
「横浜ベイクォーター」各階の海側に面した眺めのいい場所には、レストランが集まっており、この商業施設の売りの1つになっている。目立つのは、地元企業のコロワイドが3店を展開していることと、柿安本店(本社:三重県桑名市)が3店、クリエイト・レストランツ(本社:東京都渋谷区)が2店出店するなど、2000年前後から台頭してきた、中堅どころの外食企業が大きな勢力を占めていることだ。また、柿安本店、クリエイト・レストランツ、ゼットン(本社:名古屋市中区)あたりは、北山総研のプロデュースで昨年、名古屋の金山総合駅駅前にオープンした「アスナル金山」で、意欲的な出店を行っていた会社で、強い結びつきを感じさせる。
コロワイド、横浜ベイクォーターに3店舗同時オープン 横浜ベイクォーターにクリエイトレストランツが新業態店横浜市内「横浜ランドマークタワー」に本社がある飲食チェーンのコロワイドは、1977年に逗子市内にオープンした居酒屋「甘太郎」を発展の足掛かりとしており、神奈川県あるいは横浜はいわばホームグラウンドである。今回オープンした3店は、3階のカリフォルニア料理「ウルフギャング・パック・カフェ」とフーディアンバー「一瑳」、5階の地酒とそば・釜めし処「三間堂」。「ウルフギャング・パック・カフェ」は、これまで東京都内の赤坂「アークヒルズ」、新宿「ルミネ・エスト」、六本木「ロアビル」に店舗があり、横浜は初出店。ハリウッドのセレブ御用達のスターシェフ、ウルフギャング・パック氏がプロデュースした、デザイナーズカフェである。
「一瑳」はカップルを狙った和食と洋食の店で、飛騨牛を使ったサーロインステーキやたたき寿司、和風ハンバーグなどが売りである。バーテンダーが常駐し、本格的なカクテルも楽しめる。横浜市内で4店目となる。「三間堂」は横浜市内6店目の出店で、京風のおでんは単品でも注文できるなど、お酒を飲まない女性にも、ゆっくりとくつろいでもらえる店を目指している。名物の板蕎麦は飲んだ人のほとんどがオーダーするという、人気メニューだ。
柿安本店は、ビュフェレストラン「柿安三尺三寸箸」、中華の「ヌーベルシノワ瑠璃」、飲茶・点心「ホンコンカフェ」を出店。いずれも3階にある。「柿安三尺三寸箸」は10店目の展開だが、横浜では初の出店となる。和・洋・中の80種類以上の料理、デザート、ドリンクが食べ放題の店で、デトックス(体内浄化)や免疫力アップのメニューまである。デリの「柿安ダイニング」の外食部門らしい店だ。「ヌーベルシノワ瑠璃」と「ホンコンカフェ」は、ともにブランドとしての1号店で、「ヌーベルシノワ瑠璃」はフレンチ、イタリアン、和食の要素を取り入れた、スタイリッシュな新しい中華を提案。「ホンコンカフェ」は、点心師のつくる料理実演を見ながら、麺と炒飯と点心のセットメニューなどが楽しめる店だ。
クリエイト・レストランツのスペインバル「バル・デ・カンテ」は東京・吉祥寺に次ぐ2店目で、オール500円のおつまみ「タパス」や、約60種類の魚介をメインとしたスペイン料理を、予算3,000円程度で存分に楽しめる。3階に立地している。一方、5階の「アトランティック」は、同社初の業態で、豪華客船のラウンジを思わせるシックなキャビンスタイルのインテリアが見所だ。料理はオマール海老やタスマニア産「キャッツアイ」オイスターなど極上素材で提供する、シーフード&グリルである。
その他、5階の「キンカウーカ・グリル・アンド・オイスターバー」は、横浜そごうにもある「ガンボ・アンド・オイスターバー」のグリル料理やワイン、カクテルにこだわった新業態で、オイスター・バーの全国展開を目指すヒューマンウェブ(本社:東京都千代田区)の15店目のショップ。
5階の「我流風」は東京・立川の「立川ラーメンスクエア」にも出店する、鹿児島ラーメンの名店で、関東では2店目。今回は、カフェ風の内装で、黒豚しゃぶしゃぶ、薩摩揚げ、芋焼酎など、鹿児島料理も出すラーメン居酒屋に初めてチャレンジしている。
さらに、「横浜ワールドポーターズ」のデザートカフェ「ケーキマニア」が、日本初のオーベルジュ「オー・ミラドー」を箱根で成功させた勝又登シェフと組んで出店した、4階の「ケーキマニア 上海カフェ&ダイニング アジアンフレンチ」は、モダンアジアンの世界を表現した本物志向の店で、料理の見た目も鮮やかで期待できそうな内容だ。
すべて紹介はしきれないが、寿司、韓国料理、イタリアン、バーベキュー、ジェラートの店などもあってグルメはなかなか賑やかである。なぜかフレンチ、インド料理、懐かしい洋食、お好み焼、豆腐料理など、現在の飲食のトレンドからみれば、あって不思議ない業態が見当たらないことや、横浜中華街や元町、裏横浜・奥横浜の敏腕飲食業者がほとんどかかわっていないのは、寂しい感もある。
しかし、初日を見たかぎりでは、全般になかなか好調で、特に3階のイタリアンジェラートの「ドナテロウズ」は、長蛇の列ができていた。テレビの情報番組で紹介され、かつ暑さもあって、ヒートアップしたようだ。また、「ケーキマニア 上海カフェ&ダイニングアジアンフレンチ」も行列が絶えず、比内地鶏・石臼蕎麦と素材を厳選した5階の「平戸庵」は、売れ行きが良すぎて、夕刻には仕入れ分が切れてしまっていた。一方で、あまりにもストレートに東京っぽい店は、デザインが良くても顧客があまり入っておらず、一部横浜の顧客を読み違えた業者も出てきた模様だ。
面白いと思うのは、ハワイに関する店が多いことだ。女性の間で空前のフラダンスブームが、盛り上がっている背景を反映してのものなのだろうか。ダイニングでは、ゼットンが4階に、ハワイのコナコーヒーやロコモコなどのハワイアンフーズが楽しめる「アロハテーブル」を出店。同社はハワイアンダイニングで、すでに名古屋3店、東京1店の実績を持っており、「アロハテーブル」ブランドとしては名古屋2店に続く3店目である。夜になると店頭でたいまつが燃える店舗デザインは、名古屋の店から引き続き、神谷デザイン事務所が担当している。
「クアアイナ」は、東京・丸の内の「丸ビル」でも好評を博している、ハワイ・オアフ島ノースショアに本店を持つ、グルメハンバーガーチェーン。国内では12店目、神奈川県内では、「横浜赤レンガ倉庫」、鎌倉に続く3店目である。この店も4階にある。「フラハワイ」はズバリ、ハワイアングッズの店で、鎌倉の稲村ガ崎を本店として、15店目、横浜市内では3店目である。フラ用品、レイ、アパレル、ジュエリー、アクセサリー、ウクレレなどの楽器、CD、サンダル、食器など、多種多様な商品がそろっている。この店も4階に立地している。
横浜ベイクォーターに「フラハワイ」15号店 -市内3店目3階にある「マカアニアニ」は、横浜市内の元町と「横浜ワールドポーターズ」にショップを持つアイウェアのショップ「VOIR」による、ハワイアンブランド「マカアニアニ」のオンリーショップ1号店。マカアニアニとはハワイの言葉で「水晶の眼」を意味し、サングラスのフレームの側面に、沈金彫りの技法を使うなど、ハンドメイドの良さが実感できる商品群だ。顧客の入りも好調で、「アロハテーブル」と「クアアイナ」は行列ができており、「フラハワイ」店内はごった返していた。
犬を連れて入ることができる店もあるように、ペット関連の店が充実しているのも、「横浜ベイクォーター」の特徴だ。2階には、シルフ・コーポレーション(本社・東京都千代田区)が展開する、ドッグカフェ「フレッシュネス・ドッグカフェ」と、ペットホテル「イーボルドッグ・ホテル」がある。「フレッシュネス・ドッグカフェ」は、「フレッシュネスバーガー」と提携して、人間用と犬用の喫茶、軽食メニューを提供しており、散歩の途中に気軽に立ち寄れる店を目指している。川崎市麻生区のはるひの店に続く2店目だ。ドッグライフカウンセラーをスタッフに有し、犬をめぐる生活上の悩み事の相談にも乗る。
店内には犬の写真館「イーボルドッグ・フォト・スタジオ」を併設しており、「犬の洋服3着を選んで、50カットを撮り、6つ切りフォト2枚」というセットで1万円など、様々なオプションがある。人間だけでも利用でき、同店では「住環境の問題で犬を飼えない人でも、犬と気軽にふれあえるような、人と犬とのコミュニケーションの場にしていきたい」としている。
「イーボルドッグ・ホテル」は、買物や食事の時の犬の一時預かりを行うサービスで、小型犬から大型犬まで対応できる、多彩な部屋を備えている。また、犬の宿泊も可能で、3連泊以上すれば犬のシャンプーサービスが付いてくる。4階の「ペットパラダイス」は、長野市に本社を構える、クリエイティブヨーコによる、全国展開のドッグファッション&雑貨の店で、自社でデザインし、製造したオリジナル商品を販売している。犬の服にラインストーンで犬の名前を入れたり、人間と犬とのおそろいのアクセサリーがつくれたりするなど、「表参道ヒルズ」のショップで人気というカスタマイズサービスが受けられる。
初日から「ペットパラダイス」は犬連れの顧客で賑わい、「イーボルドッグ・ホテル」もそこそこの利用者があった模様だ。しかし、「フレッシュネス・ドッグカフェ」は犬のいない時間帯もあり、いかに店を認知させていくのかが成否を分けるだろう。
この他にも、日本初上陸のアメリカのかわいらしいデザインテレビ「ハンスプリー」や、ヨーロッパの優秀な5人のパン職人の味が楽しめる、関西から進出したベーカリー「ヴィクトワール」、お洒落な4プライスの着替える眼鏡のロープライス店「エキスプレス・グラス」など、物販は落ちついて見ていくと、「使える」品物を置く店が結構ある。また、ヒーリングのサービスとして、ボディセラピーが楽しめる酸素バー「オーツービーナス」があり、ヨーガスクールの「スタジオヨガッタ」、日比谷花壇によるフラワーショップと少人数フラワーアレンジメントスクール「エイチケー・プラス・モード」といった、女性が通いたくなるようなスクールもそろっている。
ただし、商業施設が増えすぎた最近の首都圏では、面白い店がいろいろあったとしても、オープン景気が3カ月も続かなくなっている。それだけに、継続的な情報発信によって、常に話題を提供していくことが必要だが、「たとえば『サンストリート亀戸』では365日イベントをやって、近所のお客さんをうまく集客できています」(北山創研:松岡氏)と、突破口はあると考えている。「横浜ベイクォーター」の場合は、横浜市の南半分から鎌倉あたりまでを商圏と見ているので、亀戸に比べれば広域から集客することになるが、地元メディアとの連携、「シーバス」沿線のみなとみらい21、元町、中華街などとの連携が重要になってきそうである。
あるいは、「たとえば今後は各店がブログによって情報を小まめに提供し、お客さんとコミュニケーションを取ることも考えていく」(北山創研:松岡氏)との構想もある。もし実現すれば、全国でもまず前例のない試みとして注目を集めるだろう。館内のショップは、20代をメインターゲットと見ている店から、50代を狙ったところまで、想定顧客はまちまちとなっている。開業してからしばらく動向を見ないと、実際の顧客のつかみにくいと、各ショップも手探りのようだ。
全般的な施設の印象は、横浜を象徴する建物に、渋谷・青山あたりの流行を入れたような感がある。欲を言えば、滞在できるプチホテルや、近隣のマンション住民をターゲットにした高級スーパーもあれば良かったとも思う。とは言え、豪華客船をイメージした、ユニークなデザインのインパクトは大きく、「メインデッキ」と呼ばれる3階の広場でのイベントの打ち方次第では、十分目標の来街者数は達成できそうである。
ただし、「横浜そごう」の中や脇を通らなければ到達できない立地はわかりにくく、不利は否めない。来年には横浜駅きた東口から、直接来れるように橋ができる計画もあるが、実際にできるまでは、どのようにして横浜駅から「横浜ベイクォーター」まで、顧客に足を運ばせるのか、運営側の知恵の絞り所と言えるだろう。
長浜淳之介 + ヨコハマ経済新聞編集部