5月28日、横浜開港150周年記念テーマイベント「開国・開港Y150」の記者発表が都内で行われた。横浜出身の女優の米倉涼子さんも参加したこの発表会で、開港150周年記念テーマイベント総合プロデューサーの小川巧記さんは、「Y150は一人ひとりの可能性の種に気づく『巨大な実験場』」と語った。この2009年4月28日~9月27日の153日間にわたり開催される記念イベントを主催する横浜開港150周年協会によれば、来場者数が延べ510万人に達するという予測もあるそうで、横浜では2002年に開催されたサッカーW杯決勝戦以来の大イベントとなる。
横浜開港150周年はハマッ子が主役 新しい「市民力」の創造を目指す「市民創発」とは?(ヨコハマ経済新聞)そして、横浜開港150周年記念テーマイベント「開国・開港Y150」のチケット販売が開始される149回目の開港記念日の6月2日、「Y150市民参加プラットホーム」という新たな仕組みがスタートする。また、5月31日~6月2日にはキックオフイベント「ハマ波150」が開催。赤レンガ倉庫で「ハマっ子イベント大賞」受賞団体の活動アピールが行われる。
ハマ波150 ~開港150周年市民参加プレイベント~2009年4月28日~9月27日の153日間にわたり開催される「開国・開港Y150」では、横浜動物の森公園ズーラシア隣接地区のヒルサイドエリアで横浜が元気になるプロジェクトを市民がつくり出す「市民創発プログラム」のワークショップや、日比野克彦アートプロデューサーが監修する「横浜FUNEプロジェクト」、創合演劇プロジェクト「DO-RA-MA YOKOHAMA 150」、横浜の夜景をキャンドルで灯す「横濱・開港キャンドルカフェ150」などの市民参加型のプロジェクトが既に動き始めている。
5月28日の記者発表会では、ベイサイドエリアで行われる記念テーマイベントとして、市民が企画・運営に参加できるプロジェクトの概要も紹介された。「開国・開港Y150」の期間中、大さん橋と赤レンガ倉庫という展示ホール型の施設では、横浜市内の18区による、区ごとのステージイベントや、テーマ型市民催事が行われることになる。また、開港150周年の1年前となるこの6月から、さまざまなプレイベントや関連企画がスタートする。この多種多様な150周年関連イベントと市民の接点となる新しい仕組みが「Y150市民参加プラットホーム」だ。
段ボールで船を再現「横浜FUNEプロジェクト」-開港記念会館で(ヨコハマ経済新聞) 市民演劇公演に向けワークショップ-横浜開港150周年記念(ヨコハマ経済新聞) 横浜ベイエリアで7千本のキャンドル点灯-ボランティア募集(ヨコハマ経済新聞)「Y150市民参加プラットホーム」は、赤レンガ倉庫に近い、横浜開港150周年協会の施設の1階に拠点を置き、「市民参加」をキーワードに、Y150のプログラムの情報をワンストップで提供し、開港150周年に主体的に関わりを持ちたい市民に対する相談や、イベントやプロジェクトの企画や運営の支援を行っていくという。
運営するのは、Y150市民参加プラットホーム運営委員会。これまでイベント創造プラットホーム運営委員会として、地域SNS「ハマっち!」の設置・運営、市内の団体との連携により「横浜のイベントをエコにするネットワーク」の立ち上げや開港祭のエコプロジェクトなどに取り組んできた「イベント創造プラットホーム運営委員会」が、「Y150市民参加プラットホーム推進委員会」に名称と組織を変更するものだ。
横浜地域SNS「ハマっち!」 横浜のイベントをエコにするネットワーク(ハマっち!内コミュニティ)「Y150市民参加プラットホーム」は5月31日から6月2日の開港記念日まで、「開国・開港Y150」の市民参加プレイベントとして「『ハマ波150』~ハマっ子イベント大賞~」を開催する。会場となる赤レンガ倉庫1号館の2階と3階のスペースを3日間フルに使って、横浜開港150周年に関連するさまざまなプロジェクトの内容や市民参加の方法を紹介する。初日の31日はテーマイベント総合プロデューサーの小川巧記さんや、横浜在住の作家でY150市民参加プラットホーム推進委員会の委員長を務める山崎洋子さんなども参加する市民参加キックオフパーティーも行われる。また、「市民の船出」をテーマに、市民から公募したイベント企画のうち、優秀な4つの作品を「ハマっ子イベント大賞」として発表する。
ハマ波150 ~開港150周年市民参加プレイベント~「横浜開港150周年は市民が総出で創り上げるイベントにしていきたい」という思いで活動を開始する同委員会が、3月から4月上旬にかけて、「歴史」「港」「横浜らしさ・横浜ならでは」「次の時代に向けての横浜の可能性」などの切り口で、市民が実施するイベントの企画(ステージ部門・展示部門)を募ったところ、市内15区から「展示部門」14件「ステージ部門」21件の合計35件の応募があったという。35団体から4団体の優れた企画提案を「ハマっ子イベント大賞」と認定し、イベントの企画・運営を資金や会場提供で支援するイベントプランコンテストで、今回が初の開催となる。イベントの準備段階で、大賞を受賞した4団体それぞれに話を聞いた。
決定! ハマっ子イベント大賞(記者発表資料 pdf書類)海が好きな人たちが集まった「海をつくる会」は、1981年に山下公園の海底の掃除から活動をスタート。メンバーにはダイバーのライセンスを持っている方も多いという。当時の横浜港の海水は茶色く濁っており、「山下公園でデートすると波しぶきからドブのような臭いがしたからね」と、代表の坂本昭夫さんは振り返る。現在は山下公園前の海底以外に、横浜市金沢区の野島海岸や、箱根の芦ノ湖の掃除活動、アマモの移植活動、環境活動、生物調査など活動の幅を広げている。また、直接海辺で活動する以外に、多くの人に海の素晴らしさや大切さを知ってもらおうと自然観察ガイドブックや神奈川新聞への連載記事掲載など、海に関連した出版事業などにも取り組んでおり、2006年4月には単行本の第2弾「ハマの海づくり」を発行している。
海をつくる会 「ハマの海づくり」当日会場では「横浜 海の散歩道」として「海に触れる」「体験できる海」というテーマで展示部門に出展し、横浜の海を紹介する。海底トンネルを模した展示では、横浜の魚を5つの水槽で紹介。生きているヒトデやカニがいるタッチングプールでは、生き物に直接手で触れることができる。また、清掃活動で見つかったゴミをパネルで展示。注射器が捨てられていたこともあったのだそう。「危機感を感じてほしい。人や生き物に対して真剣に考えてほしい。人は海で遊んで、海にはたくさんの生き物が存在する。だから海を汚くしないでほしいということが伝えたい」と坂本さんは語る。
約3年前に知人のポーランド人女性から、スマトラ沖地震被災地などの支援チャリティーイベントをしたいと、「国際交流ゆめプロジェクト」代表の内山郁子さんに相談があった。内山さんは「自分にできることはすべてやろう」と即決。すぐにボランティアを集めるために奔走したという。集まったボランティアは約150人。「このイベントを陰で支えたのはほかならぬ横浜の学生ボランティアたち。これが国際交流ゆめプロジェクトの前身となった」と話す。
現在の活動内容は、横浜市内の高校での外国人講師らによる「夢授業」の実施やアート展、日本で暮らす外国人を招いて行う料理教室など。一見、統一感がなさそうだが、メンバーたちは「世の中を明るくしたい。日本だけではなく世界につながることができれば」という思いで一致しているそうだ。イベント当日は、音楽・造形・絵・プロジェクター影絵・人形・布絵本・コーラスなど多岐にわたるアート作品・ワークショップを実施する。特に「横浜」をテーマに世界各国から集めた200点以上の子ども達の絵の展示は見逃せない。「人と人のつながりを横浜から世界に発信できれば」と、内山さんは意気込みを語る。
「今の横浜も好きだけど昔の横浜も好き。だから後世に伝えたい」。そう語る茨木さんの言葉に、「横濱夢語りプロジェクト」の活動は集約される。横浜の歴史的な話や人々の生活など、「はまっ子の記憶」を後世に残すことを目的に、内田充昭さんと茨木三恵子さんが始めたプロジェクトだ。その後、さまざまな人の協力を得て、「横浜」にこだわり「横浜」を読み聞かせる朗読ライブへとつながっていった。
横濱夢語りプロジェクト 横濱夢語りに83歳現役お座敷芸者の京子姐さんが出演(ヨコハマ経済新聞)6月2日の赤レンガ倉庫ホールで行われる特別公演は、横浜が歴史上大きく変貌した3つの時代「開港」「戦争」「戦後」にスポットをあて、金田賢一さん、桐山ゆみさんによる朗読と、丸岡めぐみさんとゲストの中村裕介さんの音楽で、横浜の歴史を語り伝えるもの。本牧に実在したリンディというディスコを舞台に若者群像を描いた物語「本牧60s-70s フェンスの外の青春」は、当時の横浜の流行をリードしていた「本牧ナポレオン党」のメンバーをはじめ、本牧で生まれ育った6人のインタビューを基に、横浜在住の作家・山崎洋子さんが脚本を手掛けたものだ。
60~70年代の本牧が朗読音楽ライブに-横浜開港記念会館で(ヨコハマ経済新聞) 戦後横浜の裏面史を伝える朗読ライブ-開港記念会館(ヨコハマ経済新聞)「50代~60代がコア客層ですね、朗読を聞いて心に染みる世代なのかも。先日、ナポレオン党のメンバーをライブに招待したのですが、とても気に入ってくれたようです。『静かに聞くのはいいなあ』なんて言ってくれたのは嬉しかったですね」と微笑む茨木さん。「朗読と音楽の空間で横浜を感じ、浸ってほしい」と話す。
「失業保険では求職者に対してお金が足りない」「起業したいけど家賃が高いから出店できないな」「どうしたらいい街になるかな」……。こんな問題を中学・高校生たちが真剣に議論し合っている。高校生以上の年代が集まる別グループでは「将来何になりたい?」「私は保育士になります」「僕は弁護士になる」「今はまだわからない」という声が飛び交い、ときには「それは違うと思う」などヒートアップするシーンも見受けられる。イベント1週間前、「U-19シンポジウム」の打ち合せ風景だ。そんな子どもたちのやり取りを軽快な口調で仕切るのが主催するNPO法人「 ミニシティ・プラス」(三輪律江理事長)の副理事長の岩室晶子さん。「ステージは好きなことを話していい場所で、結論を出す場所ではないから。質問に対してはそのときの気分で答えていいから」と、すべての行動を子どもたちの意志に委ねているスタンスが特徴だ。
NPO法人ミニシティ・プラスミニシティ・プラスは、ドイツのミニミュンヘンが発祥の「こども創る遊びのまち」を研究し、横浜で実践するための組織「ミニヨコハマシティ研究会」として、まちづくりの研究者や横浜市職員、まちづくりNPOの構成員らが中心になり生まれ、今年5月にNPO法人化したもの。「ミニヨコハマシティ」とは、“大人口出し禁止”をルールとして、19歳以下の子どもたちが就労や政治、都市計画などを、遊びながら体験ができるイベントで、横浜ではNPO法人「I LOVEつづき」が初めて実施し、ミニヨコハマシティ研究会が協力してきた。今年3月に開催されたイベントには1,300人の子どもたちが参加し、400人あまりが今後も市民として活動したいと登録している。ドイツのミュンヘン市で2年に1度行われる「ミニミュンヘン」がモデルとなっており、同種のイベントは千葉県佐倉市をはじめ全国各地に広がっている。
ミニヨコハマシティ(特定非営利活動法人I LOVEつづき) 赤レンガで「ミニシティヨコハマ」子どもシンポ-大人口出し禁止(ヨコハマ経済新聞)ミニヨコハマシティの市長は高校2年生の三浦絢佳さんが務める。三浦さんは今年ドイツ・ベルリンで開かれる「第1回こどものまち世界会議」へ参加することが決まっており、そこで行うスピーチの骨子を今回のイベントで集めるという。また、2009年の横浜開港150周年に合わせて、第2回の同会議を横浜に誘致することも視野に入れている。今回は、このミニヨコハマシティや公募で集まった19歳以下のメンバーらが1部と2部に分かれて「まち・みらい・ゆめ」をテーマに、横浜に住む様々な子どもたちが普段考えていることを本音で語る。
次回は、横浜開港150周年のイベントと市民のつなぎ役を担う「Y150市民参加プラットホーム推進委員会」の活動の詳細についてリポートしたい。
宗美香 + ヨコハマ経済新聞編集部