特集

グリーングループ代表 鈴木潤さん
「ヨコハマは自転車が似合う街」

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■「街乗りスポーツ」をコンセプトに、お客様のニーズに合ったものを提案

―グリーングループでは、「グリーンスタイル」と「グリーンサイクルステーション」という自転車ショップを山下町に展開されていますが、2店舗にはどのような違いがありますか?

 「グリーンスタイル」は、初心者の方や女性にも安心してご来店いただける、自転車に絡めたグッズやファッションなども含めたサイクルショップです。「グリーンサイクルステーション」は、より嗜好性の高いハイクオリティーな自転車のみを扱うサイクルショップです。

―1931年に自転車部品卸業「鈴木商店」として横浜で創業したのが始まりということですが、3代目としてお店を継がれる時にはどのようなお店にしたいと考えていましたか?

 先代である父がやっていたお店は当時鶴見にあって、ほぼ9割がマウンテンバイク、もしくはBMX、あるいはクロスバイクにロードレーサーという、100パーセントスポーツ自転車専門店でした。でも、お客様がマウンテンバイクを購入後に自転車の定期検診でご来店されると、タイヤをゴツゴツしているものではなくツルツル系のスリックタイヤに替えてほしいということがよくあったんです。それは、もうマウンテンバイクをマウンテンバイクとして使わず、「街乗り」に使うということなんですね。競技性の強い自転車を実際に手に入れても、結局は皆さん街乗りを中心に楽しんでいらっしゃるわけで、当時日本にはまだ「街乗りスポーツ」というものをコンセプトにしたお店がなかったので、初心者の方に気軽に街乗りスポーツを提案できるサイクルショップにしたかったんです。

―乗り手のニーズにさらに応えるために、新しいコンセプトを取り入れたんですね。

 自転車といえばママチャリかロードレーサーかマウンテンバイクという当時の時代の中、ママチャリからちょっといい自転車を買いたいなと思った時に、ロードレーサーかマウンテンバイク以外の選択肢として、実はもうちょっとゆるく走れるカジュアルスポーツバイクというものがあるんですよ、ということを伝えていきたいと思ったんです。それで、タイヤの小さい自転車「ミニベロ」を中心に扱うようになりました。

グリーンスタイル

グリーンサイクルステーション

■趣味と趣味をリンクする街乗り自転車「ミニベロ」

―ミニベロを知ったきっかけはどのようなことだったんですか?

 実家を継ぐ前に、マウンテンバイクのメーカーに務めて修行していたんですが、あるショップの社長さんからミニベロのことを教えていただいたのがきっかけでした。最初に見せてもらった時は、タイヤは小さいし、スピードも出るように見えない、これでほんとにスポーツバイクなの?と思いましたね。

―でも徐々にその性能の高さや魅力にのめりこんでいったんですね。

 そうなんです。修行を終えて実家を継いで仕事しているうちに、そういえばミニベロというのがあったなと思って、いろんなメーカーから仕入れて自分で走ってみてテストをしました。すると乗ってみるうちに、これこそ街乗りスポーツとして、ユーザーさんがいろんな遊び方できる自転車だと気づいたんです。街乗りだけでなくちょっと足を伸ばしてツーリングもできますし、折りたたみ式のものであれば、車に乗せたり電車に乗せたり飛行機に乗せたりしていろんな場所で乗ることができる。乗る方のライフスタイルを広げるのにもとても適している自転車だと思います。

―ミニベロが街乗りに適している点はどのようなところですか?

 人や信号や車が非常に多い日本独特の道路環境を考えると、せっかくスピードが出ても300メートルくらい走るとブレーキをかけなければいけません。大きいタイヤのロードレーサーやマウンテンバイクは、一定のスピードでずっと走れる時にその良さが生まれるので、それが300メートルごとにブレーキをかけていたらせっかくスピードにのったところで止まらないといけなくなってしまいます。

 ところがミニベロは、こぎ出しにものすごく強みがあるんです。最初のひとこぎがサッと軽くできるので、go and stopの連続が求められる街乗りには最も適した自転車だと思います。街乗りだったら時速20キロ出れば充分スポーツバイクとして認められると思いますし、ミニベロの中にもロードレーサーやマウンテンバイク並にスピードが出るものもあります。なおかつ小回りも効きますし、折りたたみであれば室内にも置けるので、日本の生活文化にぴったりなんです。

―ママチャリよりもスピードは出るし、マウンテンバイクよりも小回りが効く。まさに街乗り自転車なんですね。

 もう1つミニベロが街乗りに適している所は、「◯◯しながら」ができるところです。自転車に乗りながら街を散走したり、カメラで写真を撮ったり、土地の名物料理を食べたり、絵を描きに行ったりというように、趣味と趣味をリンクするために自転車を生活に取り入れることができる。スポーツ自転車だと、自分のスタイルをその自転車に寄せていかなければいけないカテゴリーが多い中、ミニベロやクロスバイクは、自転車を自分のスタイルに寄せることができます。着るものも普段のままでいいので、途中で休憩してカフェに入ったりする時も違和感がないですし、そういった意味でもミニベロはすごくいいかなと思います。

―レジャー施設や歴史的建造物がたくさんある横浜の街を走るのにも適していそうですね。

 そうですね。横浜はぜったい自転車が似合う街だと思います。歴史的建造物がたくさんある山下地区と、未来的なみなとみらい地区が共存していますし、さらに中区や西区は横浜市でも唯一フラットなところ。横浜駅からみなとみらい、赤レンガや臨港パーク、新港パーク、象の鼻地区、山下公園、中華街、日本大通り、横浜公園、このエリアは車で巡るより自転車で巡るのが有効だと思います。go and stopがしやすいミニベロは、横浜を走るのにも特におすすめですね。

山下町の自転車店GCSが開港150周年モデル-タルタルーガ試乗会も(ヨコハマ経済新聞)

■これから自転車を始めてみたいという方に向けた、乗り手に優しい自転車

―1月25日に初のオリジナルモデルとして、細部まで横浜にこだわった「横浜ブランド」の自転車を発売されましたが、どのような気持ちで作られたんですか?

 これまではそれぞれのブランドの自転車を販売させていただいてきたんですが、もっと横浜の色を出したい、これから自転車を始めてみたいという方に向けた乗り手に優しい自転車を作ってみたくて、横浜を走ってもらうことをイメージしながら作りました。企画、パーツセレクト、組み立て、塗装、ロゴデザイン、アフターサポートまで全てを横浜で行っている、まさに「横浜ブランド」の自転車になんです。初心者の方が横浜を走るのにふさわしい自転車はどういうのだろう、という思いで設計しました。

―ずっと横浜で自転車店を営んできたからこそ生まれた思いがあるんですね。

 たくさんのお客様と出会いがあって会話させていただく中で、これから自転車を始めたいという方がいろいろなヒントをくださいました。これはお客様の声を反映して作った自転車だと思っています。特徴としては、乗り降りのしやすさや、乗車姿勢など、お客様の目的によってある程度ポジションを変えられるようになっています。あとはご自身と触れる所、手で持つ部分とお尻の部分は、お客様のフィーリングに合うように3つのバージョンを用意させていただいています。スポーティーに走っていただきたい場合はシャープなシートとサドル、気軽に乗りたい場合はワイドでソフトなものにしたり、お客様の希望に添う方で選択できるようになっています。

―乗り手が自分のライフスタイルに合わせてカスタマイズできるんですね。

 そうですね。あとは自転車の塗装にもこだわっていて、横浜鶴見にある塗装会社「カドワキコーティング」さんに塗装していただいています。ここまで美しい自転車の塗装をする企業はカドワキコーティングさんしかないと思いますし、しかも同じく横浜の企業。それに、カドワキさんの塗装されるものはすべて有機溶剤を使わない、環境にも健康にもいいパウダーコーティングなんです。その点でも環境都市を目指す横浜にはぴったりだし、塗料が丈夫で傷がつきにくく、深みがある綺麗な色で、健康で環境にやさしい。これぞ横浜という組み合わせになっていると思います。

―単純にモノを売るのではなく乗ってもらうことを楽しんでもらいたいという思いが、このオリジナルモデルに表れているように思います。

 はい、うちの場合は販売車に対してすべてご購入後の点検・整備・調整は永久に無料にさせていただいています。お客様から、この自転車で小田原まで行ってきましたよとか、車に積み込んで千葉の方走ってきたんですよというのを聞かせていただくと、本当にうれしいんですね。自転車は1台1台組み立てると、僕らの子どもみたいに感じますし、自分の知らない土地をこの子が走ってきたんだと思うとすごく幸せですね。だから販売させていただいた自転車に関しては責任もってアフターサービスをして、愛着をもって長く乗っていただけるようにサポートをさせていただいています。

カドワキコーティング

グリーングループオリジナル街乗り自転車ブランド「G」

■横浜の街で自転車を通じて広がるライフスタイル

―横浜を舞台に撮影された映画「大決戦!超ウルトラ8兄弟」でサイクルコーディネーターとして製作スタッフを務められたり、お笑いコンビ「アリtoキリギリス」の石井さんと写真展も開催されたり、自転車を通じてさまざまなつながりも生まれていますね。

 自転車が主役になると、競技やレースという部分になってしまうと思うんですが、ライフスタイルとしての自転車も大切にしていきたいと思っています。映画の中に自転車があってもいいし、カメラが趣味の中に自転車があってもいい。アリtoキリギリス石井さんとの写真展も初めての試みでしたし、街と溶け込む中での自転車のあり方、趣味と趣味をリンクするものとして自転車を追求していきたいですね。

―自転車に乗る人たちに、これから横浜の街をどのように楽しんでいってもらいたいですか?

 150年の歴史がある街ですから、その奥深さはもちろん、進化していく部分も長期的に楽しめると思います。異国文化も漂う中、エリアが変わると街の景色がいろいろと変わってくる。それは自転車の速度で見るのが一番いい街並じゃないかなと思うんです。街が様変わりする様子が、自転車で走っていると映画を見ているみたいに目に入り込んでくる。その変化がおもしろいので、1回2回で楽しむのでなく、自転車を使ってくまなく自分なりの横浜探しをしてもらえたらなと思います。

―どうもありがとうございました。

山下町の自転車店で写真展-「アリtoキリギリス」石井正則さんら(ヨコハマ経済新聞)

古屋涼 + ヨコハマ経済新聞編集部

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