―そもそも地産地消に興味を持ち始めたきっかけは何ですか。
横浜にある私の実家が飲食店を営んでいることが、食に関心を持ったきっかけのひとつなのですが、特に地産地消に興味を持ち始めたのは、高校3年生の時です。
当時「横浜スローフード少年団」という小学生を主な対象とした食育団体にボランティアとして参加し、「スローフードフェア2007 IN ヨコハマ」というイベントの際、農家の方と直接話す機会がありました。そこで初めて横浜の農業が思っていたよりもずっと盛んだということを知ったんです。
パシフィコ横浜で「スローフードフェア」-希少食材の販売も(ヨコハマ経済新聞)
―実際に自らアクションを起こしていったのは大学生に入ってからと伺いました。
私の在学する横浜国立大学経営学部では、起業支援などを行っているNPO法人ETIC.(エティック)と連携しているカリキュラムがあります。その中で私は横浜産の野菜のみを使った料理を出す企画を立てて、実家の飲食店にて1日限定のイベントを開催しました。ランチメニューで、サラダとポトフ、湘南小麦で作ったパン、横浜産苺のソースをかけたパンナコッタをセットにして980円、100食限定で提供し、完売することが出来ました。
―好評だったんですね。
はい。ETIC.さんの入れ知恵のおかげで(笑)事前に新聞や地域紙で宣伝をお願いしたのがよかったです。来て下さったお客さんから「美味しかった。今後もやって欲しい」と声をかけて頂いたのが嬉しくて、この活動を継続していこう、という気持ちになりました。そこで大学2年生になってから、副専攻プログラムの地域交流科目という授業のゼミナールで「横浜地産地消推進プロジェクト」を立ち上げたんです。
―「横浜地産地消推進プロジェクト」ではどんな活動をしてきましたか。
畑へ赴いて作物を見せてもらったり、各地で行われる地産地消イベントに参加したりしてきました。昨年からは「濱の料理人」への参加を活動の軸にしています。「濱の料理人」は、横浜で飲食店などの食に関わる仕事や活動をしている社会人が集まった任意団体です。「横浜地産地消推進プロジェクト」は、この「濱の料理人」と協力関係にあって、「濱の料理人」が主催する「『濱の鉄人』料理コンテスト」の運営に携わっています。
―昔宮さんは「濱の料理人」の会長も務めていますね。発足の経緯や活動について教えて下さい。
「濱の料理人」の発起人は、椿直樹さん(横浜野菜推進委員会代表、株式会社よこはまグリーンピース代表取締役)です。実家の店で行ったイベントにいらした横浜市役所職員の方が、「はまふぅどコンシェルジュ」への参加を薦めてくれて、そこで講師をしていた椿さんと出会いました。「はまふぅどコンシェルジュ」は横浜市が主催する、地産地消を目的とした横浜の農業について学ぶ講座です。この講座を大学2年の時に受講後、椿さんが「濱の料理人」を立ち上げたいというお話をしていた時に、面白そうだなと思って、自分も参加したいと名乗りを上げました。「濱の料理人」は、私が大学3年生の時の4月に発足して、「はまふぅどコンシェルジュ」で出会った方々を中心に、現在会員は30人ほどです。
「濱の料理人」プロジェクト始動-「地産地消」都市横浜を目指す(ヨコハマ経済新聞)
横浜産の食材を使って新たな横浜名物を生み出そうというコンセプトで、「濱の料理人」は「『濱の鉄人』料理コンテスト」を主催している。第2回目の開催となった今年のコンテストは、「横浜産の調味料を引き立てる地産地消メニュー」をテーマに据えて、横浜市内で生産されている調味料5点ピックアップ。エントリーした市内8つの飲食店が、創作した「コンテスト対象メニュー」を開催期間中提供し、注文した来店者が料理を審査する形で実施された。9月23日から10月16日まで行われ、11月5日の横浜市主催「よこはま食と農の祭典2011」というイベント内で表彰式が催された。
―今回のコンテストを終えての感想を聞かせて下さい。
無事終えられて良かったというのと、コンテストを通じて参加店舗さんとご協力いただいた調味料会社さんの繋がりができたことが、今回の一番の成果だったと思います。今回新たにできた繋がりを活かして、今後も地産地消を推進していきたいと思います。
横浜の調味料を使った「濱の鉄人」料理コンテスト-地産地消がテーマ(ヨコハマ経済新聞)
「ハマコン 2011」は、RCE横浜 若者連盟の主催。横浜市内にキャンパスを置く3つの大学から、5つの環境団体が参加した。プレゼンテーションは「横浜地産地消推進プロジェクト」の立ち上げから共に活動してきた塚田拓也さんが担当し、見事グランプリであるハマコン賞を獲得した。地産地消に的が絞れており、実際に横浜という地域と連携したアクションを既に始めていることが評価された。
―「ハマコン」の第1回グランプリを獲得した感想は。
私はこの「横浜地産地消推進プロジェクト」を通じ、横浜の農業を知り、様々な社会人の方と一緒に活動させて頂いて、色んなことを教えてもらい本当に勉強になりました。今後の自分の人生にも役に立つ、貴重な体験をさせてもらったなと考えています。そのことがこうして評価されたことが嬉しいです。自分たちは、横浜を全国に誇れる地産地消の代表都市にする、という理念を掲げているので、その熱意が伝わったのが嬉しいです。自分の地産地消に捧げた4年間の活動が、報われたなと思います。
―「ハマコン」で発表者だった塚田さんは、「プレゼンに関して言えば、自分より他の団体の方がわかりやすかった」と話しておられましたが。
今はメンバーが11人しかいないので、プレゼンの内容は塚田がほぼ1人で全部作って、発表も1人でやってくれて。本当に頑張ってくれました(笑)
横浜で学生環境活動コンテスト「ハマコン」-RCE横浜・若者連盟が企画(ヨコハマ経済新聞)
―現在コアで活動してる昔宮さんと塚田さんは、大学4年生なので来春卒業ですね。プロジェクトの後継者など、今後の見通しはありますか。
「横浜地産地消推進プロジェクト」は授業の一環としてやっているものなので、1年単位でメンバーがほとんど入れ替わってしまっていまい、なかなか後継者を確保しにくいのが現状です。今後、横浜市内の他大学からも「濱の料理人」の活動に参加してもらえたら、自分たちが取り組んできた地産地消の為の活動がより広がっていくかなと思います。
―大学生をはじめとする同年代の若者に伝えたいことはありますか。
私自身は地産地消を1つのキーワードに活動してきて、同じような発想を持っている同世代や、その他のいろいろな人と出会えました。地域活動に参加することで、社会と接点が生まれるので、少しでも関心を持っていることがあることなら、積極的に参加して欲しいです。アルバイトやサークルだけの学生生活ではなく、地域活動に深く関わることで、もっと充実した面白い体験ができると思います。
―卒業後は有機野菜などの食品宅配サービスを行っている会社に内定しているそうですね。
はい。こうやってずっと農業や地産地消に関わってきたので、横浜にこんなに一杯いいものがあるってことは、全国で見たらもっと色んなものがあるんだろうと、それをもっと多くの人に知ってもらいたいという気持ちで就職先を決めました。
―どんな社会人になりたいか、ビジョンはありますか。
自分が出会ってきた社会人みたいになりたい、という思いがあります。皆さん、食に対する思いが強い方ばかりでした。自分もそれくらい語れる、しっかり食に対する思いを持っている社会人になりたいです。食に関する仕事に就くことも決まっていますし。自分としては、スローフード的な考え方を実践していける人間になりたいと考えています。それは手間がかかっているけれども良質な食品を選んだり、質の高い生産品を作っている生産者を守ったり、消費者に味覚の教育をする、などという取り組みです。「美味しい・綺麗・正しい」というスローフードの理念を大切にしていきたいです。
―最後に、昔宮さんが考える横浜の食の魅力とは何か、お聞かせ下さい。
私の考える横浜の食の魅力は、生産地と消費地が近いということです。横浜市は大都市でありながらも、神奈川県内で農地面積が最大なので、生産地と消費地が近接している、というよりもはや内在していると言っていいと思います。それぞれの農家は小規模なので、各農家が育てる多種多様な作物が季節毎にあるのも魅力です。横浜は、地産地消を実践するのに最適な土地だと思います。
―これからも地産地消推進活動、頑張って下さい。ありがとうございました。
阿久津李枝 + ヨコハマ経済新聞編集部