「横浜開港記念みなと祭 ヨコハマ カワイイパーク J-pop Culture Festival」は、初開催にもかかわらず、横浜都心臨海部の一等地の一つである山下公園にステージを設け、300人を超える出演者がパフォーマンスを繰り広げる一大イベントとしてスタートした。「This is文明!歴史、伝統と新しい文化が出会う場所ヨコハマで、萌キュンなステージ、キラキラなパレードを体感する4日間」をスローガンに、5月2日~5日の間、日本が世界に誇るポップカルチャーを会場から発信している。
国や他都市では近年、このコンテンツの力をさまざまな形で活用しようという政策的な取組が盛んに進められている。ゆるキャラ、ご当地ヒーロー、ご当地アイドル、歴史キャラクター、ご当地グルメなどの新たな「コンテンツ文化」が全国の地域から生まれ、こうしたポップカルチャーと地域資源を結びつけた取組が、新しい地域活性化の手法としても注目されている。
横浜市においても、スタジオジブリと連携した「コクリコ坂から」や「映画プリキュアオールスターズNew Stageみらいのともだち」などの連携事例があり、すでに集客や行政施策PRなど一定の効果を上げてきた。市としては今後、より多くのコンテンツ連携を推進する方針を取っている。こうした状況を背景として、今回のイベントは、これまでサブカルチャー的な位置付けだったコンテンツを、メーンとする大胆な企画構成となっている。
2日・3日の盛り上がりを目の当たりにした「J-Pop Culture Festival in YOKOHAMA実行委員会(NPO法人よこはまみらいプロジェクト、横浜市、日刊スポーツほか)」の担当者は「歴史ある伝統文化と大衆・若者文化をミックスし、一緒に地域全体を盛り上げていきたい」と、従来とは異なるアプローチで若者の活力を取り込む可能性を秘めたこのイベントに対する期待を語る。
ジブリ映画「コクリコ坂から」のDVD横浜特別版発売-記念イベントも(ヨコハマ経済新聞)
横浜市が映画「プリキュア」と大規模タイアップキャンペーン(ヨコハマ経済新聞)
5月3日は、公園内「石のステージ」で行われているライブに「オタク文化を世界に発信!」を合言葉に活躍の舞台を広げるアイドルグループ「でんぱ組.inc」、ご当地ヒーロー「横浜見聞伝スター☆ジャン」、横浜発のメード喫茶「ハニーハニー」から生まれたユニット「Honey2」など、プロ・アマ問わず多数のアイドル・アーチストが参加した。会場は大変な賑わいを見せ、また場内に設置されたフードコート、コンセプトカフェ、展示・販売ブースなども、若者を中心に多くの来場者を集めた。
3日のメーンイベントは、長年に渡って開催されている「第61回横浜国際仮装行列(ザよこはまパレード)」とのコラボ企画「ヨコハマカワイイパレード」だ。「ザよこはまパレード」は、横浜国際仮装行列として1953年にスタートした横浜最大のイベントであり、毎年30万人を超える観衆を集めている伝統行事。
そのパレードと連携する新しいプロジェクトとして、今回初めてポップカルチャーをテーマにした「ヨコハマカワイイパレード」が実施された。でんぱ組.inc、 横浜・伊勢佐木町発のアイドル「ももくり3年3組」、メイド喫茶アイドル「Honey2」、秋葉原ディアステージ、ONIGIRI-PROJECT、風男塾、PopLip、ミラクルマーチ、川崎純情小町、横浜見聞伝 スター☆ジャンのほか、アニメの登場人物など、さまざまなキャラクターに扮したコスプレイヤーが横浜の街を練り歩いた。
パレードに集まったのは、ゴールデンウイークに横浜を訪れた観光客や、地元市民など約35万人(主催者発表)。観客は、物珍しそうにその姿を見つめたり、彼ら・彼女らのパフォーマンスの一挙手一投足に注目していた。 毎年パレードを見物しているという男性は「今年は、横浜のパレードに新しい文化が入ってきて、このように盛り上がりを見せていて、非常に面白い」と話していた。
横浜で国際仮装行列「ザよこはまパレード」ーヨコハマ カワイイ パレードも(ヨコハマ経済新聞)
横浜では、以前からコスプレシーンでも、“横浜スタイル”を確立しようという動きが出ていた。イベントは横浜市技能文化会館(横浜市中区万代町)などで開催されてきたが、実施規模も小さかった。しかし、アキバブームの到来とともに横浜赤レンガ倉庫(同区新港1)、横浜市開港記念会館(同区本町1)、パシフィコ横浜(西区みなとみらい1)などのキャパシティの広い会場や、みなとみらい線の馬車道駅などでも開催されるようになり、開催数も増えてきている。
先に取り上げたパレードと同時に、山下公園では「コスプレ撮影会」も行われ、80人程のコスプレイヤーが集結。初音ミクなどのボーカロイドやアニメキャラクターに扮したコスプレイヤー達は、多くの来場者の注目を浴びた。
参加したコスプレイヤーは「素敵なロケーションである山下公園で撮影できてうれしい。また来年開催するのであればぜひ参加したい」と語る。
1859年の開港以来、新しいものと古いもの、異文化と伝統が融合することで発展した横浜の地は、歴史を感じさせる建物なども多く、コスプレイヤーにとっても魅力的な舞台なのだと言えるだろう。
3日のステージのラストを飾ったのは、秋葉原ディアステージを中心に活動するアイドルグループ「でんぱ組.inc」が登場、より一層の来場者が夕焼け色に変わる空の下に集い、この日一番の盛り上がりを見せた。中にはサイリウムなどの応援グッズを持参した熱心なファンも見られ、ライブが始まると会場全体に一体感のようなものも感じられた。
彼女達の人気曲である「わっほい?お祭り.inc」「Future Diver」のほか、5月29日発売の新曲「でんでんぱっしょん」など7曲を歌い、45分間に渡るライブで観客を魅了した。
ライブ中のトークでは「今年から新しく開催されるヨコハマ カワイイパークというイベントは、コスプレ撮影会やカワイイパレードなど、今までにない賑わいと試みを感じることができ、とても楽しむことができた」、「パレードではたくさんの方々に手を振っていただき感謝しています」などと、メンバーらが話した。
「でんぱ組.inc」は、4月1日にPR活動の一環として、林文子横浜市長を表敬訪問し、「メンバー全員がオタクなので、オタクパワー全開でイベントを盛り上げて行きたいと思います!」と決意を表明した。林市長は「横浜がまだ村だった頃にも、進取の気風を持つ、好奇心豊かな人々がいた。『でんぱ組.inc』の皆さんのパワーはその頃の横浜の人々に通じるものがある。ぜひ自由なパワーで横浜を盛り上げてほしい」と語った。
5月3日に引き続き、4日にも対象CDを予約すると会場限定の握手券・チェキ引き換え券がもらえるイベントが行われる。また、9月16日(月・祝)には日比谷野外音楽堂で「でんぱ組.incワンマンライブ」の開催も決まっている。
「でんぱ組.inc」が横浜市長を表敬訪問-ヨコハマ カワイイパークをPR(ヨコハマ経済新聞)
4日には、3日に引き続き「でんぱ組.inc」、日本が誇るコスプレ文化を『コスプレ×音楽』という切り口で海外へ向けて発信する「ONIGIRI-PROJECT」、Honey2、そのほかにも川崎市公認アイドル「川崎純情小町」、Candy Kiss、PopLip、風男塾、ミラクルマーチなどがステージを盛り上げてくれる。
5日は子供から大人まで幅広い層に人気のアニメ「アイカツ!」の主題歌・挿入歌を担当しているアイドルグループのSTAR☆ANIS、marina、富永TOMMY弘明、石田燿子、きただにひろしの出演が決まっている「アニソンキング」が「カワイイパーク」のラストをアニソンで盛り上げる。「ヨコハマ カワイイパーク」への入場・観覧は無料。
大盛況に見える本イベントに対し、実行委員会の担当者は「学生の方を中心に、たくさんの若い方々にも足を運んで頂けるようなイベントとして、来年も実施したい」と話す。こうしたイベントは横浜において単発的に行われてきたが、政策的に継続して実施されるには至っていなかった。多くのコンテンツの舞台となっている横浜で、アニメ、マンガ、映画などのメディア芸術や、デザイン、ファッション、食文化などの「クール・ジャパン」の潜在力をより一層喚起して、若者発のポップカルチャーで地域全体を盛り上げていくことはできるだろうか?
今回の「ヨコハマ カワイイパーク」は、若者に人気のポップカルチャーを中心に異文化と伝統が融合し、横浜に更に豊穣な文化が育ち、新たな魅力あるまちになっていくことを十分予感させるイベントであるだけに、今後の新しい横浜の文化・観光施策を注視していきたい。
横浜開港記念みなと祭 ヨコハマカワイイパーク J-pop Culture Festival
東京都市大学メディア情報学部 上野直樹研究室 + ヨコハマ経済新聞編集部