
山手十番館(横浜市中区山手町)を舞台とした映画「奇麗な、悪」の上映が2月21日、ムービル(横浜市西区南幸2)などで始まった。
原作は芥川賞作家・中村文則さんの短編小説「火」で、これが2回目の映画化となる。主演は「由宇子の天秤」「火口のふたり」などで知られる瀧内公美さん。監督を務めるのは、「RAMPO」以来約30年ぶりにメガホンを取った奥山和由さん。
一人の女性が自らの悲惨な人生を精神科医に向かって打ち明けるモノローグ・ドラマで、1時間以上カットなしの長回し撮影を何度も繰り返し、それを編集して仕上げるという独特な手法で製作されている。唯一の出演者である瀧内さんは、36ページにわたる脚本を丸暗記して撮影に臨んだ。
山手十番館は1967(昭和42年)に明治100年を記念して建てられた洋館で、横浜の街並みを一望できる丘の上にある一軒家レストラン。劇中では診察室として登場する。ロケ地候補は他にもあったが、奥山監督は建物を見て「瀧内さんをここに閉じ込めて、自由に動いてもらいたいと思った」という。
横浜の古い洋館や夕焼けの外人墓地などは「無意識に好きなもの」だという奥山監督は「自分という人間を解放して一人の女性を見つめきることで究極の実験映画を作ってみたい。映画という自由表現が与えてくれる可能性をのぞきこみたい」とコメント。原作者の中村さんは出来上がった映画を見て、「原作の通りではあるけど、これは一人の女性が話しているだけの映画。なのに、これほどまでに引き込まれる」と驚いたという。
3月1日には、上映後に奥山監督が登壇して舞台あいさつも行う。チケットは劇場ホームページで2月22日0時から発売(劇場窓口では開館時間から)。