国の文化審議会は11月17日、横浜市中区本牧三之谷にある「三渓園」を「名勝」に指定する答申を文部科学大臣に対して行った。同答申により同庭園は名勝として指定されることになり、来年1月に官報により告示される。
「名勝」は庭園・橋梁・峡谷・海浜・山岳などの景勝地を指し、国にとって芸術上または観賞上価値の高いものに対して、文部科学大臣が指定するもの。三渓園は、審議会で「近代の自然主義に基づく風景式庭園として傑出した規模・構造・意匠を持ち、保存状態も良好で、学術上、芸術上・鑑賞上の価値は極めて高い」と評価された。また今回の答申により、同区にある、「山下公園」「日本大通り」「横浜公園」も「登録記念物(名勝地)」として登録される予定。
現在の神奈川県下の国指定名勝は鎌倉の建長寺庭園、円覚寺庭園、瑞泉寺庭園と横浜の山手公園の4件目で三渓園は5件目。今回の指定・登録により、横浜市域に所在する国指定名勝は2件、国登録文化財は41件となる。三渓園保勝会の中島哲也事業課長は「異国情緒の街というイメージの強い横浜で純日本式庭園の『景観』が評価されたことで、市民の財産が一つ増えることになる。自分の庭を一般公開するという概念のなかった時代に『自然を私有してはいけない』と公開に踏み切った三渓の情熱・精神をこれからも広く周知したい」と話している。
三渓園は、生糸貿易で財を成した実業家、原三溪(本名=富太郎)建造による広さ17.5万平方メートルの庭園で、1906年5月1日に開園し今年100周年を迎えた。新進芸術家の育成と支援の場となり、前田青邨や横山大観、下村観山などの作品が園内で生まれている。同園には、重要文化財建造物10棟、横浜市指定有形文化財建造物3棟があり、2000年にはコンベンションなどへの利用が可能な横浜市指定有形文化財「鶴翔閣(かくしょうかく)」を整備・復元した。