ミズノオト・シアターカンパニーPLUSは4月17日から19日まで、横浜美術館レクチャーホール(横浜市西区みなとみらい3)で新作「枝わかれの青い庭で」を上演する。
「聞かせる演劇」をモットーに、現代社会に鋭く切り込む作品を発表してきた演出家・平松れい子さんと、プロデューサーの三宅文子さんによるこのユニットは、これまでにも「異文化」や「境界線」をコンセプトにした創作を行ってきた。
今回はアルゼンチンの作家ボルヘスの作品を引用しながら、最近、耳にすることが多くなった、アスペルガー症候群や、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、「博士の愛した数式」でもとりあげられた短期記憶障害、映画「レインマン」に登場した特殊な記憶力を持つサヴァン症候群など、記憶や時間の感覚に障害を持つ人の心や思考を作品に反映させるという。
創作過程では、脳科学や脳神経医学の最新の文献も参照。さらに、俳優だけではなく、短期記憶障害、若年性認知症、ADHD、アスペルガー症候群といった、脳に障害がある当事者との対話やワークショップも行い、ドキュメンタリー的なアプローチも試み、「障害」の概念そのものを再提示するような作品を目指している。
また、芸術と社会、企業との関係を模索する活動として、取材協力に高砂香料工業、本番の舞台には、ビジョンテクノネットの協力で「演劇史上初めて」となる超指向性音響システムを導入したほか、舞台美術に、デザイナーの川崎和男さんによるFORIS.TV(ナナオ)、旭硝子の製品など、さまざまな企業の協力を受けたという。
同公演は、2004年にスタートした明治安田生命社会貢献プログラム「エイブルアート・オンステージ」の一環として、障害者の芸術文化活動を支援する「エイブル・アート・ジャパン」(東京都中野区)と、横浜美術館との共催で行われる。また、アーツコミッション・ヨコハマ(横浜市芸術文化振興財団)より、先駆的芸術活動助成を受けている。
プロデューサーの三宅さんは「協力をお願いする時は、相手をよく理解し、なぜ必要なのか、なぜその企業なのか、クリアに、切々と『その製品に恋しちゃった』と伝えるようにした。私たちは芸術家というわがままな存在だが、その想像力やクリエイティビティは社会を豊かにすると信じている。演劇的、芸術的欲求から出発し、現実社会や企業活動にアプローチする手法を面白がってくださる方々と、これからも遊び心のある社会貢献や広報活動のパートナーとして作品を作っていきたい」と話す。
開演時間は17日19時、18日18時、19日15時。料金は前売3,000円、当日3,500円。問い合わせはミズノオト・シアターカンパニーPLUS事務局(TEL 03-5953-8320)まで。