横浜港から旅立った移住者の足跡を当時の写真や映像で紹介する「ヨコハマ発海外移住」が、国際協力機構(JICA)横浜・海外移住資料館(横浜市中区新港2)で開催されている。1859年の開港直後から移民の出発地としてにぎわった横浜と移住者のかかわりを写真や映像で振り返る。
横浜は、開港直後から「世界への窓口」として移住する日本人たちでにぎわった。港の周辺には、移民たちが出発までの短い期間を過ごした「移民宿」と呼ばれる旅館が立ち並び、戦後には「移住あっせん所」が設立されるなど南米移住の拠点となった。
横浜開港150周年を記念した同展では、主として南米移住者の渡航までの道のり、移民船・移住地での暮らしなどを、記録写真、パネル、資料で紹介している。
1899年、790人を乗せ2月28日に横浜を出港し、4月3日にリマのカヤオ港に到着した「第1回ペルー移民船佐倉丸」、「14歳の時に家族で移住したアントニオ猪木さん(さんとす丸)」「船内のど自慢大会」「ハワイでの娯楽のひとつであった相撲大会」など珍しい写真が並ぶ。
また、海外移住宣伝映画上映コーナーでは、当時実際に移住者たちが目にした「移住啓発映画」を上映する。「あるぜんちな丸」の船内学校、語学講座、青空道場、船内新聞、運動会、赤道祭、演芸会などの船内生活とボリビア、パラグアイ、アルゼンチンの移住地の様子を紹介する「南米の新天地(1962年)」、「海外への道(1962年)」「虹の国パラグアイ移住者とともに(1960年)」など貴重な映像を見ることができる。
また、5月24日11時・14時には、ブラジル移住をテーマとする悲恋のドラマ「さようならの季節」(1962年、日活制作)の特別上映会(事前予約制、400円)を開催する。吉永小百合さん主演で、1961年に磯子区根岸に移転したばかりの外務省移住あっせん所でも撮影が行われた「海外移住」をめぐる当時の雰囲気が伝わる作品。
同資料館では「この展示を通して、横浜と海外移住のかかわりの深さを知ってもらいたい。また移民に対する多様なイメージがあると思うが、新たな理解をはぐくんでいただけたらうれしい」と話している。
入場無料。開館は10時~18時(入館は17時30分まで。月曜休館)。開催は6月21日まで。映画上映時間などの問い合わせはJICA横浜・海外移住資料館(TEL 045-663-3257)まで。