横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3)は、「生誕120年記念 長谷川潔展」を開催している。
長谷川潔は、横浜生まれの世界的な銅版画家。同館は現在、660点余りの版画のほか、7点の油彩画、1,350点以上の素描、下絵など多くの作品を所蔵している。同展では、初期から晩年までの版画作品を網羅的に紹介し、下絵や銅原版、道具類なども含め、200点余りで創作の軌跡をたどる。
展示は、「I.青年期 版画家としての出発」、「II.渡仏後 模索の時代」、「III.フランス画壇での活躍と技法的実験、」「IV.第二次世界大戦中の体験と精神性の深まり」の4部に資料セッションを加えた構成で、作品は、堀口大学詩集「新しき小径」表紙の「山羊」(1922年)、いつも見ていた樹木が自分に語りかけてきたという啓示的な体験から生まれた「一樹(ニレの木)」(1941年)、自然界に存在する全てのものは相互につながっているという長谷川の自然観が描かれた「草花とアカリョム」(1969年)ほか。
同展に伴い、5月20日には横浜みなとみらいホール(西区みなとみらい2)でチャリティー・コンサート「鳥の歌~生誕120年記念 長谷川潔展によせて~」を実施する。
会期中は「ジャイアントタンポポ・プロジェクト」と題し、東日本大震災復興支援チャリティーイベントを開催する。「ジャイアントタンポポ」は長谷川潔が好んで描いたモチーフ。館内に募金箱を設置するほか、5月21日にはチャリティートーク「長谷川潔 作品の魅力と謎をめぐって」を実施。筑波大学の竹本忠雄名誉教授と同館・猿渡紀代子特任研究員が対談する。また、長谷川潔作品の図柄をあしらったチャリティー・グッズも販売する。
横浜美術館主席学芸員の沼田英子さんは「長谷川潔は西区の御所山に生まれ育ち、広い海を前に海外を夢見ていた横浜の典型的人物。第2次大戦中はフランスにとどまり、収容所生活も体験しました。このような苦しい体験を経て晩年の作品は精神的にも深められ、生命にやどる美しさをとらえた、静寂と深い精神性が感じられます。世界で認められた横浜ゆかりの版画家・長谷川潔のコレクションを一人でも多くの方にご覧いただければ」と話している。
開館時間は10時~17時(入場は16時30分まで)。観覧料は大人=1,000円、大学・高校生=700円、中学生=400円、小学生以下無料。木曜休館。6月26日まで。