個人出版レーベル「モ・クシュラ」(横浜市中区相生町3)は12月12日、シェアオフィス「さくらWORKS〈関内〉」で、同レーベルが初めて企画・編集を手がけたフォト&エッセイ「世界は小さな祝祭であふれている」(発売・現代企画室)の出版を記念し、著者で写真家の小野博さんを招いたトークイベントを開催する。
オランダ・アムステルダム在住で一時帰国中の小野さんが、オランダの風景・人物の写真を紹介しながら、コミュニティのつながりや多様性を許容する社会のあり方などについて語る。
同書の発行元・モ・クシュラを主宰するのは、編集者の大谷薫子さん。大谷さんは、都内の出版社で映画・美術系の書籍編集を手がけたのち、2011年から「さくらWORKS〈関内〉」に活動拠点を移し、現在はフリーランスの編集者として仕事を続けている。
「世界は小さな祝祭であふれている」の著者・小野博さんは、オランダの首都・アムステルダム在住の写真家だ。岡山県出身で、多摩美術大学彫刻科在学中に世界各地を旅しながら作品制作を行い、1997年「コニカ写真奨励賞」を受賞し、写真家としてデビュー。さらに、2001年「反-記憶展」展(横浜美術館)、2003年「VOCA展」(上野の森美術館)、「旅 ─ここではないどこかを生きるための10のレッスン」(東京国立近代美術館)に出品するなど着実にキャリアを重ねてきた。2008年には出身地である岡山県・大原美術館で個展「大切なことは小さな声で語られる」を開催するなど、現代を表現できる写真家の1人として注目されている。
今回出版された著作は小野さんにとって、2007年に刊行したフォトエッセイ『ライン・オン・ジ・アース』(エディマン)から2作目となる。小野さんは、アムステルダムに移住前に暮らしていた東京での荒涼とした日々と、多国籍・多民族が集まる都市にあって、その多様性を許容しつつ、細やかなコミュニケーションをつむぐオランダの人々が織り成す日常の風景を淡々とした筆致で紹介している。さらに、日本とオランダの日常を切り取った写真26点が、都市の空気感を伝えるように効果的に配されている。
今回の著作を企画・編集した「モ・クシュラ」の大谷さんは、小野さんの写真や文章の魅力について「通常、本を読んだり、写真を見たりすることは、何かを『得る』ためにすることが多いかもしれませんが、小野さんの文章や写真には、むしろ何か過剰なものを捨てさせてくれるような透明感があると思います。この本をきっかけに、小野さんが切り取る世界の魅力を多くの人に知ってもらいたい」と語る。
トークイベントでは、同オフィス運営を手がけ、情報発信者の支援などを軸にまちづくり活動を続けているNPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」理事の宮島真希子さんが聞き手となり、今年でオランダ在住11年目となる小野さんに、アムステルダムという町の魅力について話を聞く。
開催時間は19時~21時。参加費は1,000円。スライドショーも実施する。定員30人程度。申し込みはinfo@mochuisle-books.comまで。小野さんは一時帰国中に、「百年」(武蔵野市吉祥寺本町)、「B&B」(世田谷区北沢)ほか、各地で書店イベントを行う。全日程はモ・クシュラのホームページで確認できる。