横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3)で1月26日、「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」展が開幕した。
作品「前線に向けて出発する軍用列車、バルセロナ」(1936年8月)より
同展は、世界的に著名なハンガリー出身の写真家ロバート・キャパと、ドイツの女性写真家ゲルダ・タローそれぞれの写真作品による2つの「個展」で構成される。他界後も注目を浴びるロバート・キャパと、その陰でほとんど紹介されることのなかったゲルダ・タロー。約300点の豊富な写真作品と関連資料によって2人の生涯と活動の軌跡を紹介する。主催は横浜美術館と朝日新聞社。
ロバート・キャパは、1930年代から54年の死に至るまで、報道写真家として世界中を駆け巡り、各地の戦争や人々の暮らしの様子をカメラに収め続けた。横浜美術館には、ロバートの実弟コーネル・キャパからの寄贈作品を中心に、キャパの写真193点が所蔵されている。
その内容は、写真家としての本格的デビュー作となったコペンハーゲンでの革命家レオン・トロツキーの演説を捉えた写真(1932年)に始まり、スペイン内戦での「崩れ落ちる兵士」(1936年)、第二次世界大戦「Dデイ」のルポルタージュ(1944年)などの記念碑的作品を含む戦争写真、最晩年の日本滞在期の風俗写真(1954年)まで、キャパの生涯の仕事を網羅したコレクションになっている。同館のキャパの全所蔵作品を公開するのは開館以来初めての試み。
ゲルダ・タローは1934年にパリでキャパと出会い、公私にわたるパートナーとして活動をスタート。女性初の報道写真家といわれ、26歳という若さでスペインの戦場で命をおとした。今回はタローのオリジナルプリントを中心とした写真83点と関連資料(国際写真センター所蔵)を通して、その短い生涯における活動を総括的に紹介する。
26日に行われた記者会見には、横浜美術館館長の逢坂恵理子さん、同館学芸員の松永真太郎さん、国際写真センター(ICP)キュレーターのシンシア・ヤングさんが登壇。松永さんは「死後の名声が全く対照的なロバート・キャパとゲルダ・タローの個展を同時に開催することで、両者の深いつながりと個性の違いを見出してもらえると思う。キャパの日本初公開作品をはじめ、数々の現場で行動を共にしたと言われるキャパとタローが、同一現場でそれぞれの視点で撮影した写真にも注目してもらえたら」と話している。
関連イベントとして、戦場カメラマンによるフォト・ヨコハマ プレゼンツ「渡部陽一トークショー」(1月31日)、ノンフィクション作家でエッセイスト・沢木耕太郎さんの記念講演会「青春のキャパ」(2月3日)、学芸員によるギャラリートーク(2月8日・22日、3月8日)、担当学芸員の解説付きで展覧会を鑑賞する「夜の美術館でアートクルーズ」(2月6日、3月9日)。
そのほか、作品の時代背景をたどりながら報道写真のメッセージを考える観賞ワークショップ「撮られるイメージ・創られるイメージ」(2月9日)、キャパの長編ドキュメンタリーやミュージカル映画などの上映会「Capa & Films」 (2月23日・24日)を実施する。各イベントの詳細はホームページで。
開館時間は10時~18時(入場は閉館30分前まで)。観覧料(当日)は大人1,100円、大・高校生700円、中学生400円、小学生以下無料。木曜休館(1月31日は開館)。3月24日まで。