現存する日本最古のジャズ喫茶「ちぐさ」(横浜市中区野毛町2)が母体となって設立されたジャズ専門レーベル「CHIGUSA Records」が3月11日、第1弾アルバム「金本麻里 Sings JAZZ STANDARD with 今田勝トリオ」を発売する。
初回限定300枚のレコードは鶴見区のアナログレコード工場でプレスした
「ちぐさ」は1933年、故・吉田衛さんが野毛町1丁目に開業した日本におけるジャズ喫茶の草分け。若き日のピアニストの穐吉敏子さん、サックスの渡辺貞夫さんなど、数々の有名ジャズミュージシャンがちぐさで音楽を浴びるほど聞き、吉田さんに支援されて育った。
「CHIGUSA Records」は、吉田さんの生誕100年であり、「ちぐさ」開業80年にあたる節目の2013年11月に、日本のジャズシーンに一石を投じ、ジャズを志す、若く優秀なミュージシャンが一人でも多く輩出されることを願った有志が立ち上げた。
また、同時に「若きミュージシャンを育てたい」という吉田さんの思いを継承するため、毎年10月に優れた新人を発掘し表彰する「ちぐさ賞」を制定。受賞者にはCHIGUSA Recordsがレコーディングの機会を提供し、限定アナログレコードとCDを制作・発売する。
「ちぐさ賞」の1回目である今回は、岩手県盛岡市出身のジャズボーカリスト・金本麻里さんが受賞し、2014年1月4日にみなとみらいにある横浜ランドマークスタジオで、ピアニストの今田勝さん、ベーシストの古野光昭さん、ドラムの田鹿雅裕さんとともにレコーディングを行った。
金本さんはジャズ喫茶「開運橋のジョニー」(岩手県盛岡市)店主の照井顕さんの目に留まり、2011年に照井さんのレーベル「Johnny's Disk」からCD「ホープガール」を出して注目を集めた。
2013年5月に、東日本大震災の被災地支援のため横浜と東北の交流を図っているアマチュアバンド「横濱サクソフォニスト」有志が、照井さんと金本さんを「ちぐさ」へ招へいした。これが横浜のジャズ愛好家の人々の耳にとまり、今回の受賞へと繋がった。
1月下旬には、横浜市鶴見区にあるアジア唯一のアナログレコード工場「東洋化成」でレコードのカッティングが行われ、2月下旬にアナログレコードのプレス生産が行われた。なお、レコードのジャケットには「Made in Yokohama」と刻まれている。
アルバムは全12曲で、「Take the "A" train」、「All of Me」「My Favorite Things」などのジャズスタンダード9曲のほか、金本さんの地元・岩手ゆかりの詩人・宮澤賢治が作詞作曲した「星めぐりの歌」など日本語の歌詞の3曲が収録されている。
CHIGUSA Recordsで広報を担当する鈴木光さんは「横浜から若く優秀なジャズミュージシャンが一人でも多く輩出されることを願ってレーベルを作り、賞を制定した。日本のジャズシーンに一石を投じたい」と話している。
シリアルナンバー入りのアナログレコード(5,000円、簡易版CD付属、初回限定300枚)とCD(2,200円)。「CHIGUSA Records」ウェブサイト、「ちぐさ」店頭、一般店舗(ディスクユニオン、山野楽器)で販売している。また、アルバムの発売を記念し、3月26日18時から、野毛にぎわい座(横浜市中区野毛3)で金本さんのライブを行う。参加無料。