横浜市が、旧横浜生糸検査所附属生糸絹物専用倉庫(通称「旧帝蚕倉庫」、横浜市中区北仲通5)を歴史的景観の保全を図る「歴史的建造物」に認定した。
高さ200メートルの超高層ビルが建つ北仲通北地区再開発完成イメージ
旧帝蚕倉庫は、関東大震災後の1926年に建てられた、建築家・遠藤於菟(おと)さんの晩年の大作と言われる建築群の一つで、もともと4棟あった。現存する1棟は、地上3階、地下1階建ての近代建築で、生糸などの保管に使用されていた。今後いったん解体し、隣の棟があった位置に、部材を活用した忠実な復元を予定している。内部は歴史性を生かした文化施設などとしての利用を検討しているという。
横浜市認定歴史的建造物は、「歴史を生かしたまちづくり要綱」の規定により、歴史的建造物登録台帳に登録された建物のうち、専門家による調査で特に価値があると判断されたもの、要綱により設置された「歴史的景観保全委員」の意見を聞きながら、所有者との協議のうえ、適切な保全活用計画が作成されたものの2つの要件を満たしたもの。保全すべき部位とその意匠・材料・色彩および活用方法などを「保全活用計画」として定め、市長が認定する。認定された歴史的建造物を保全するための改修などに必要な費用の一部は、市の助成を受けることができる。認定件数は、今回で89件目。
北仲通北地区には、旧横浜生糸検査所附属倉庫事務所(通称「旧帝蚕倉庫事務所」、横浜市指定有形文化財)と復元された旧生糸検査所(現第2合同庁舎、横浜市認定歴史的建造物)も現存する。
横浜市都市整備局企画部都市デザイン室長の綱河功さんは「旧帝蚕倉庫は、この地区の歴史の象徴的な存在。これを生かしてまちづくりを進めていきたい」と話している。
旧帝蚕倉庫がある北仲通北地区A-4地区は、森ビルと丸紅が共同で「北仲通北再開発等促進地区地区計画」に取り組んでいる。倉庫棟は東日本大震災後に行った検査で、安全性の確保が難しいと判断されたため解体後復元保存されることになった。旧帝蚕倉庫事務所棟は現物保存する。横浜市建築局が2013年10月に公開した北仲通北地区の都市計画提案によると、同地区には地上57階、地下2階、高さ約200メートル(最高高さ223.2メートル)の店舗や事務所も備える超高層タワーマンションの建設が計画されている。着工は2014年12月、完成は2018年3月の予定。