シネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区若葉町3)で8月2日から、アニメーションディレクター・伊藤有壱さんによる横浜発の短編アニメーション作品「HARBOR TALE(ハーバーテイル)」の続編「Blue Eyes - in HARBOR TALE -」が公開されている。
伊藤有壱監督(左)、女優の五大路子さんを迎えたトークショーの様子(8月2日)
「ハーバーテイル」は、港町の洋館から抜け出した赤レンガの物語。横浜がモデルの「Y」という名の港町を舞台に、主人公の「赤いレンガ」がさまざまな出会いを通してまちの魅力を発見していく。
続編となる最新作「Blue Eyes - in HARBOR TALE -」は、港町「Y」の片隅のバーに住む130年を超えるビスクドール(声:川村万梨阿さん)が主人公。命が芽生え動き出したビスクドールが一人暮らしの老女(出演:五大路子さん)を「たった1人のお客様」と呼び、密やかなステージを繰り広げる。新たな映像表現と世にも不思議なドラマの交錯が見どころ。上映時間は7分40秒。
ビスクドールは、撮影専用の人形を今回のアニメーションのために制作。ひとり芝居に定評のある五大さんに出演を依頼し、製作期間1年半をかけて、今シリーズとしては初めてリアルな人間とクラフトアニメの共演が実現した。
上映プログラムは、1作目「HARBOR TALE」、3つの映像で構成される「YOKOHAMA TALE」(写真:森日出夫、音楽:鬼武みゆき)、最新作「Blue Eyes - in HARBOR TALE -」。関連イベントとして、上映後に伊藤監督とゲストを迎えたトークショーも開催する。ゲストは写真家の森日出夫さん(8月9日)、声優の川村万梨阿さん(8月14日)。
公開初日の2日には、横浜夢座主宰の女優・五大路子さんがトークショーに登場した。五大さんは、「伊藤監督とはもともと『横浜から何かを発信しよう』という共通のキーワードで意気投合。今回はお人形との共演にドキドキしたが、伊藤監督のファンの一人として、この作品に参加することができ大変うれしい。また、初めてコマ撮りアニメーションの撮影現場を見て感動した」と振り返った。
一方、伊藤監督は「独自の視点をもち、演劇の世界で横浜から発信し続けている、素晴らしい表現者の五大さんをお迎えし、今作で初めてクラフトアニメと人間の共演に挑戦した。お客様と作品が出会い、はじめて作品は完成する。今しか見ることのできない、人間の温かみが伝わるようなネオクラフトアニメーションを多くの方に見てもらえたら」と語った。
新作完成にちなみ、アニメーション工房「 I.TOON」ではバーにちなんだ「BAR HARBOR TALEプロジェクト」も同時開催。「HARBOR TALE」公式サイトで「赤いレンガくん」が訪れたおすすめのバーを紹介している。
上映時間は日程による。チケットは一般=1,000円、大専=800円、高校生以下・シニア=800円。8月15日まで。
「 I.TOON」は、立体アニメーションを得意とするアニメーションスタジオ。2006年に横浜に移転し、元物流倉庫をリノベーションしたオフィスビル「万国橋SOKO」(中区海岸通4)にスタジオを構える。これまでに、NHK教育テレビの「ニャッキ!」やNHKみんなのうたの「グラスホッパー物語」、ミスタードーナツのテレビCM「ポン・デ・ライオン」などを手がけている。
1作目となる短編アニメーション作品「HARBOR TALE」は2011年に制作。コマ撮り映像とCGを組み合わせた「ネオクラフトアニメーション」技法を駆使した映像表現が世界中の映画祭で評価され、2012年にチェコの歴史ある国際映画祭「ZLIN FILM FESTIVAL」のアニメーション部門で最優秀賞と観客賞の2冠を獲得したほか、さまざまな映画祭や芸術祭で受賞している。