日本郵船氷川丸(横浜市中区山下町)で5月18日、長編アニメーション映画「氷川丸ものがたり」の製作記者会見が行われた。
今年で建造85年を迎える氷川丸の歴史をつづった同名の本(伊藤玄二郎著、かまくら春秋社)を原作に、オリジナルの物語を交えた同作。劇場版「それいけ!アンパンマン」シリーズや「ゴルゴ13」(テレビアニメ版)を手がけた大賀俊二さんを監督に迎え、虫プロダクション(東京都練馬区)がアニメーション制作を行う。
物語の主人公は、見習い厨房員の平山次郎。母親を関東大震災で亡くし、南京そばの屋台を引く父を手伝いながら二人で暮らしていたが、縁あって氷川丸で働き始める。その後、氷川丸は海軍特設病院船となり、次郎にも赤紙が届く。
作品は来月尺を出すための定尺に入り、7月中にも完成予定。氷川丸はクローズアップ以外は3DCGを使い、日本郵船歴史博物館にある模型を元に描いたという。
八田圭子プロデューサーは「氷川丸は、戦時中たくさんの船が沈んだ中生き延び、今も係留されて、人々が触れられるところにあるというところに大きな意味を感じている。船がたどってきた歳月の重みを感じ、大事なメッセージを受け取ることで、これからの生きるヒントになるのではないか」と話す。
8月22日の横浜ブルク13ほか全国4館を皮切りに、全国順次ロードショー。3年をかけ、公民館や学校で上映運動を行っていく。
氷川丸は1930年に完成し、日米航路の貨客船として活躍。戦時に旧海軍病院船に改造されたため、完成当時の状態は模型でしか見られないという。戦後は引き揚げ船などとして利用され、1960年に引退した。戦前の日本貨客船では現存する唯一の大型船で、現在は山下公園に係留されている。