情報媒体の制作・発行や雑貨販売を行う星羊社(横浜市中区伊勢佐木町1)は12月15日、昭和初期に誕生した横浜独自の組合「市民酒場」にスポットを当てたムック本「横濱市民酒場グルリと」を刊行した。
同社が2013年12月から隔月で発行してきた酒好きのためのミニコミ誌「はま太郎」では、「オヤジ尾行」や酒場にまつわるトラブルの法律相談「阿部先生ならどうする?」、野毛のバー「喫茶みなと」経営者で映画監督の渋谷正一さんによるコラムなど、ユニークな企画を連載。今回創刊号から巻頭特集として取材してきた市民酒場の魅力をより深く紹介したいと、市内16店舗をあらためて取材した。
市民酒場はビールや酒も配給制となった太平洋戦争末期の1944年、神奈川県の主導で開かれたとされている。最盛期には市内に200軒あったといい、現在もその名を掲げる店舗は3軒。取材を続ける中で、南区、中区、西区、神奈川区などを中心に市民酒場の系譜を受け継ぐ店は30軒ほどあること、また行政主導の組合が結成される前の1938年から、有志による呼び掛けで南区発祥の組合が結成されていたことが分かった。
勤労階級のささやかな楽しみを守ろうと、できるだけ安く酒を提供する「市民酒場マインド」を持った店舗は、ふぐやすっぽん料理など昔ながらのメニューを出す店から、洋食や中華なども出す店までさまざま。店が所蔵する昔の写真や、星羊社の成田希さんによる店主や料理のイラストと共に紹介する。
プライベートでも取材先の店舗に足を運んだという成田さんと星山健太郎さん夫妻は「何回か行くと、初めてのときとは違う話が聞けることもある。『はま太郎』では載せきれなかった、のれんをくぐるところから席に着いた後までの空気感、雰囲気が伝われば」と話す。
小説家の山崎洋子さんや音楽家の大谷能生さんもエッセーを寄せ、酒場周辺の下町の魅力を紹介。写真家の森日出夫さんによる撮り下ろし写真も掲載する。
販売価格は1,500円(税別、200頁カラーA5判)。横浜・東京を中心に全国の書店で取り扱う。
22日の19時からは、さくらWORKS<関内>(中区相生町3)でトークイベントも開催。参加費はワンドリンクと市民酒場ゆかりの振る舞い酒付きで1,000円。