10月 29日・30日、パシフィコ横浜で国際協力&交流の大規模フェスティバル「横浜国際フェスタ2005」が開催される。これは昨年まで過去8回にわたり山下公園前の産業貿易センターで「横浜国際協力まつり」として開催されてきた秋恒例の行事を、今年からさらに規模を拡大して開催されるものだ。参加するのはNGO・NPO・市民団体・学校・国際機関・企業・行政・政府機関など約250団体。それぞれがブースを出展し、活動紹介や情報交換等を通して、地域活動のより一層の活性化を目指す。横浜を中心に、その近郊で活躍する国際機関・国際協力・在住外国人支援と、それに関わる多くのボランティアが一同に会し、市民に国際協力と国際交流の取り組みを知ってもらうためのイベントだ。
パシフィコで「横浜国際フェスタ」、ファッションショーも外国人が自国の文化や生活を紹介する「お国自慢スピーチ大会」や、約30の団体が出店するエスニックフードの販売、世界の民族舞踊・音楽の披露、エコクイズ、また行政書士会による多言語対応外国人相談コーナーや各種セミナーなど多様な楽しみ方ができる。なかでも今回の見所について、横浜国際フェスタを運営している横浜国際フェスタ市民NPOネット代表の角内望さんに話を聞いた。「今年は途上国との公平な商取引を推進する『フェアトレード』の取り組みを大きく紹介します。フェアトレードは途上国の経済的自立を助けるとともに、児童労働をなくして子どもが学校に通えるようにするためにも重要な活動です。パネル展示の他に、フェアトレード商品の販売、またフェアトレードの衣服を着たモデルがメッセージを発信する『フェアトレードファッションショー』を開催して、活動がより多くの人に伝わるようにと企画しました」。また今年から企業や行政、横浜市友好姉妹都市も参加する。またiss国際交流センターが主催する海外留学の無料カウンセリングコーナーも設置されるなど、フェスティバルの輪はより大きくなっている。
横浜国際フェスタ市民NPOネット iss国際交流センター横浜国際フェスタのスタッフ総勢約200名を率いる角内さんは、若干26歳の青年。3年前に「横浜国際協力まつり」にボランティアとして参加したことがこのイベントに関わるきっかけだった。「大学時代に比較文化を専攻し、在日コリアンの教師から在日外国人の立場や、難民問題について学びました。難民への興味や関心が湧き国際関係機関にインターンとして通ううち、国際協力のできる業界で働いてみたいと思ったんです」。「横浜国際協力まつり」に関わるようになった最初の年、NGOからの派遣としてイベント運営に参加した角内さんは、「責任あるポジションをやらせてほしい」とお願いし、その積極性を買われて1年目から部会長を任された。実際にイベント運営に関わってみると、その関わる人たちの多様性に驚いたという。フェスタの開催にあたっては国も文化も言葉も世代も違う人たちが集まるのだから、運営していくうえでは様々な問題が起こる。角内さんは、参加者がいかに気持ちよく働ける環境をつくれるかをいつも考えているという。
毎年イベントが開催され多くのボランティアが参加するが、終了すると実行委員会は解散してしまう。そのためボランティアのなかで継続的に国際協力や支援に関わって行きたいと考える人がいるのに、その受け皿がない――そう感じた角内さんは、「横浜国際協力まつり2004実行委員会」の参加スタッフを母体に、単年ボランティアではなく国際交流や国際協力の活動支援を行う市民団体「横浜国際フェスタ市民NPOネット」を2005年1月に設立。現在、下は17歳の高校生から上は74歳の方まで幅広い層の42名で運営している。ゆくゆくはNPO法人化していくことも検討中だ。
横浜市のなかで国際交流や国際協力の支援を行っている機関は、財団法人横浜市国際交流協会(略称:YOKE)だ。横浜市国際交流協会の活動テーマは、「多文化社会づくりの促進」「ボランティア活動・市民活動の活性化」「国際協力としての人材育成」「地球的規模の課題への対応」等で1981年に設立された。横浜市国際交流協会は今年で創立25年周年。入管法(出入国管理及び難民認定法)の改正で日系人の就労が認められるようになった1991年以来、横浜市の外国人登録者数は増加を続けている。横浜市統計によると2005年現在、横浜には市民の2%に当たる約7万人の外国人市民が暮らしている。とりわけ、アジアが半数以上を占め、ついで、中南米、アメリカ、欧州となっている。横浜市国際交流協会は地域の中で、日本人と外国人の共生をスムーズにしてゆく役目を担っている。
財団法人横浜市国際交流協会(YOKE)横浜には外国人が多く住む地域がいくつかある。泉区では、ボートピープルの難民が定住しその後、帰化して行ったためにいちょう団地はベトナム人が多く住んでいる。また、鶴見区は中南米の日系人が多く、その背景は100年前に始まった南米への移民には沖縄県出身が多かったことがある。遠くブラジルへ渡った人のうち日本へ帰ってきたが、沖縄より雇用機会の多い京浜工業地帯に移り住んだのだ。鶴見区には、子孫が親戚を頼って来日し就労する為の働き場所がありコミュニティが形成された中で、容易に地域に馴染む土壌が出来上がっているようだ。
横浜市国際交流協会 情報サービス課の木村さんに、国際協力で求められていることについて話を聞いた。「YOKEで提供しているサービスのなかも、特にニーズが高いと感じるのは日本語教室です。在日外国人は古くから日本に住んでいる人と、近年日本に入ってきたニューカマーの大きく2つに分かれるのですが、ニューカマーにとって日本語の壁は大きい。YOKEでは新しく横浜で生活を始めた外国人住民に実践的な日本語を教える日本語教室を開催してサポートしています」。木村さんの紹介で日系ブラジル人3世の橋本さんを訪ねた。橋本さんは雑貨屋、飲食店、パブレストランなどを経営しまがらフリーペーパーを発行し、ブラジル人社会と、日本社会の情報発信基地として、国内に住む約30万人のブラジル人の連帯を図っている。
橋本さんと食事をしたときのことだ。レストランで、メニューが出てきても注文をしないから、どうしたのか聞いてみると、字が読めないという。話し言葉は不自由なく話せても、ひらがな、漢字が読めないのだ。日本名を持ち、容姿も日本人と変わらない人でも、海外で生まれ育ったため日本語の教育を受けていない人は多い。日系2世、3世になると言語、宗教、食事のスタイルの違いから日本に来ても生活に馴染めなくケースがほとんどだ。働きながら日本語を覚え、日本社会での生活に慣れるには、横浜市国際交流協会やボランティアグループのサポートは欠かせない。
ニューカマーのための日本語教室日本語教室とともに、市民通訳ボランティア制度も在日外国人にとって重要なサービスだ。これは横浜市国際交流協会が市民通訳ボランティアに交通費相当の費用を支給し、市役所や区役所、福祉施設、保育園、公立の小・中・高校などに派遣するというもの。なかでも特に教育現場での通訳が求められていると横浜市国際交流協会 情報サービス課の猪熊さんは語る。「ニューカマーの子どもたちは、言葉の壁の問題を抱えている。言葉がわからないなかで授業を受けても理解できず、自信をなくしたり、不登校になったりというケースも多い。日本の学校の生活・学習に参加できるようにするためにも、彼らの言葉でサポートする必要がある」。
横浜市内の公立学校には、外国籍、外国につながる子どもたちが約4,700人もいるという。昨年度の市民通訳ボランティア派遣総数は、674件であったのだが、そのうち、学校への派遣は半数を占める337件もあった。通訳の対応言語は約20言語だが、通訳ボランティアが少ない言語も多く、ボランティア一人あたりの負担が多くなってしまう。通訳ボランティアには一律2,000円の謝金を支払っているが、交通費や通訳の事前準備などを考えると非常に安い謝金である。通訳ボランティアの人材確保と、制度運営・維持のための財源の確保が大きな課題だ。語学のサポートは、次世代の日本社会を担う人材を育てる重要なことだが、その予算が十分に計上されていない現在、市民通訳ボランティア制度は市民の寄付も募って、活動を続けている。費用面で外国人の生活をサポートすることも、地域に根ざした国際交流を支援するために大切である。
市民通訳ボランティア派遣制度とは?横浜市国際交流協会では、国際交流を促進するための様々な講座「ヨーク国際カレッジ」を年間3期にわたり開催している。これは在日外国人というよりは、広く横浜市民を対象とした講座だ。2005年度第2期は、英語と韓国語の語学講座に加え、「絵本の世界を旅する~絵本の選び方から読み聞かせ実践まで~」、「ディズニーランド『夢と魔法の王国』を科学する」、「多国籍集団を率いるリーダーシップ」など、多様な切り口でユニークな講座を開催している。また、「地球の歩き方」と連携し、旅で得た感動を文章で表現するためのスキルとノウハウを学ぶ「地球の歩き方 トラベルライター講座」も開催している。まずは自分の興味のある身近なところから国際交流・国際協力に参加してはいかがだろうか。
地球の歩き方 トラベルライター講座西依玉美 + ヨコハマ経済新聞編集部