—藤田さんは3代続くハマっ子の家系ということで、横浜で特に愛着やなつかしさをを感じることはありますか?
子供の頃は、家族と横浜に出かけるといえばまず横浜駅西口の高島屋というイメージがありました。学生時代も、社会人になってからも、家族や友人と出かけたりする時に最初に行く所は必ず横浜でした。何をするにもまず横浜が始まりで、いろんな意味で全てのきっかけを作ってくれている街という感じがします。
—レポーターになったきっかけはどのようなことだったんですか?
祖母や母から本を読み聞かせてもらうのが楽しみで、国語の教科書を読んだり、おしゃべりすることが子どもの頃から好きでした。高校の時に、将来は声に携わる仕事をしてみたいと友人に話していたところ、友人がオーディションの雑誌を持ってきてくれたんです。それが喋りの世界の門を叩く始まりで、声の仕事に就くきっかけになりました。
—横浜での出会いが今につながっているんですね。
そうですね。仕事への道筋を教えてくれたのも友人で、その時の友人たちとの出会いが今の自分につながっていると思います。
—FM横浜「THE BREEZE」では、13年間街角レポートをされていて、レポートする場所はあらかじめ決めてから行くんですか?
駅や場所だけ決めておいて、具体的にどのお店に行くかとかは全く何も決めずに行きます。1日に4回放送があるので、その最後の回だけは、お祭りをやっているとか、おいしいケーキ屋さんがあるとか、気になる情報を見つけておいて、あとは目に見えるものや自分が気になったものをレポートしながら、最終目的地に着くように進めています。
—実際に知らない街を歩くような感覚でレポートをしているんですね。
全部決めていくと、街に目を向けなくなってしまうんです。どこに行くかを決めずに行けば、街の空気感や匂い、見える景色や人の声をいろいろと聞くようになって、何かおもしろいものはないかと、意識が研ぎ澄まされます。なのでなるべく決めないようにして、道の曲がりたいところを曲がって、街の様子を探るようにしています。
—レポートをするときに気をつけていることはありますか?
自分がいかに街に興味を持つかということが大事だと思ってレポートをしています。自分がそれを見たり、体験したりすることによって、どう思ってどう感じたか、というところをリスナーの方に伝えられればと思っています。いかに自分がその街を歩いて感動できるか、それを貴重に思えるかが、伝えるということにつながっていくと思います。
—街歩きの中での印象的な出来事は?
レポートをしながらいろいろな人と出会うので、急遽予定を変更することもよくあります。おもしろい出会いであったりとか。良い意味でのハプニングはいろいろありますね。 リスナーさんから車に乗っていきなよって言われて乗せて頂いて、そのまま静岡県まで行ってしまったこともありました(笑)。
—現場からの放送はいつも1人でやっているんですか?
はい、1人ですね。放送機材もシンプルなもので、携帯電話かPHS、公衆電話で行っています。音も十分キレイに取れますし、あまりクリア過ぎるとスタジオにいるような音になってしまうので、外の雰囲気が伝わる方がいいんです。
—ラジオで街の情報を伝えることの魅力はどのようなところにあると思いますか?
声しか聞こえない分、イマジネーションや想像力をかき立てるという点で、ラジオはすごいツールであると思います。声の力によって、想像力を広げることができる。テレビやインターネットがあってもラジオが絶えないのは、やはりその想像力に魅力があるからだと思います。
—THE BREEZEは13年続いている長者番組で、長く続いている要因はどのようなところにあると思いますか?
一緒にやっているパーソナリティの北島美穂さんの話が素晴らしくて、本当に頼りになるんです。リスナーさんにも支えられていて、僕だけ、誰かだけというのではなくて、みんなでいい番組を作ろう、聞いている人に楽しんでもらおうという思いがかみ合ってまわっている。それがありがたいことに長寿番組になっているのかなと思います。
FMヨコハマとコミュニティーFM8局が防災の日に同時生放送(ヨコハマ経済新聞)
—街歩きを続けているなかで、横浜の街並みで変わったと感じることはありますか?
この仕事を始めてから、街をたくさん歩くようになって、横浜の「風」を改めて感じるようになりました。でも、みなとみらい地区も昔はもっと風が優しかったと思うんですが、最近はビルも増えてきたからか、その風がだんだん強くなってきているのを感じます。
—ずっと街を歩いて見てきたからこそ、その変化に気づけるんですね。
街の雰囲気は景色からだけでなく、肌でも感じるもの。横浜の優しいハマ風を子どもたちの世代が感じられるように残していきたいという思いがあります。10年後、20年後、横浜に来る人たちに昔のような優しい風を感じてもらえるようにすることで、これからの子供たちにとっても優しい横浜であり続けて、横浜に住んでいる人たち、横浜を訪れる人たちがのんびり過ごせるようになると思います。
—これからの街角レポートで新しくチャレンジしていきたいことはありますか?
外を歩くことを楽しんでやっているので、まだまだ街を歩いていろいろな人と出会ってみたいですね。ラジオレポートは、必ずしも人生に必要なものではないと思いますが、それでも、仕事をしながらであったり車を運転しながら放送を聞いて、「あ、今日も藤田くんどこかでレポートしているんだ」という感じで、リスナーの方がその日1日ちょっとでも頑張る活力の1つになれたらいいなと思っています。ラジオが生活の中心になるのではなく、1日の中で、みなさんの背中をちょっと押せるような存在であればいいなと思います。
—どうもありがとうございました。
古屋涼 + ヨコハマ経済新聞編集部