――「鼓和-core-」を結成したきっかけは?
横浜の関東学院中学校高等学校で6年間マーチングバンドを経験した後、マーチングの本場・アメリカのチームの一員としてマーチングバンド世界大会(DCI)に出場するために渡米しました。アメリカではバスケットボールやアメリカンフットボールなどのハーフタイムに、マーチングパーカッションを使用したパフォーマンスを目にする機会が数多くありました。それに比べ日本ではコンテストに出場するほかに、パフォーマンスを披露する機会が極端に少ないと感じました。
日本国内においても部活動やコンテストの場だけではなく、マーチングパーカッションを使用し、エンターテインメントとしてより多くの方々にパフォーマンスを披露出来る環境を作っていきたいと強く思い、学生時代一緒にドラムを続けてきた同世代の友人たちを中心に「鼓和-core-」を結成しました。
しかし、チームを結成したからといってすぐに万全にスタート出来た訳ではなく、現実には資金面や、練習会場、出演機会など全てがゼロからのスタートで、言葉通り試行錯誤の連続でした。中でも、合計100万円以上もする楽器をそろえることは一大決心でした。当時メンバーのほとんどは学生だったため、アルバイトなどで必死に資金を工面しながら楽器をそろえ、活動をスタートしました。
――プロとして活動していこうと決めたのはいつですか?
結成当時は、知人経由で依頼をいただき、ライブハウスなどのイベントに出向いて演奏していました。この頃は、まだオリジナル曲もなく演目数もとても少なかったことを覚えています。
ある日、横浜駅で宮本亜門さんの「僕のショーに出ませんか?」というポスターを見て、彼がプロデュースする横浜開港150周年記念式典「ヴィジョン!ヨコハマ」のオーディションを受けてみようと思ったんです。無事合格し、パシフィコ横浜のホールで、天皇皇后両陛下や麻生元首相も含む4,000人の観客の前で、一日3回ショーを行いました。この時、僕も含めたメンバーの多くが、大勢の観客に魅せることの楽しさや高揚感、達成感を感じたのが、翌年の2010年に赤レンガ倉庫で最初の自主公演を行うきっかけとなりました。
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最初の公演ではやりたいことが形にできていたかというと決してそうではなく、自分たちが数年間やってきたことを、ステージでお客さんにただただ見てもらう、という感じでした。少しずついろいろなイベントに呼んでいただけるようになり、それらをこなしたり、和太鼓でいうと「鼓童」のような、特定の楽器に特化して各地でパフォーマンスを行う先駆者たちを見ていったりする中で、自分たちもよりエンターテインメント性のあるパフォーマーとして認知されたい、そういう活動ができるようなグループになりたい、という気持ちが高まっていきました。
この頃は既に社会人として働いていましたが、業務中でも鼓和の活動の幅を広げることばかり考えるようになり、仕事の合間を縫っては今後の方針についてミーティングを開いていました。起業を考え始めた頃に、現在の統括マネージャー・芝本琢巳との出会いもあり、私と吉岡謙太郎はサラリーマン生活に終止符を打ちました。2011年8月、鼓和の運営会社として株式会社「UNISON COMPANY」を設立しました。
――会社設立後の活動内容は?
会社を立ち上げた時点で決まっていたのが、2012年の横浜赤レンガ倉庫での自主公演でした。今まで自分たちが良いと思っていたものに加えて、一般の方たちにより楽しんでもらえる要素を取り入れ、地元横浜の企業関係者などに広く声をかけました。そこからつながったのが、毎年定期的に出演させていただいている横浜港での豪華客船出入港セレモニーです。そのほか、地域のイベントや企業の式典、KARAのコンサートやEXILEのテレビ番組への出演など、年間多数のパフォーマンスを行っています。さまざまな経験をしていく中で、自己満足で終わらせるのではなく、依頼元のからの要望に応えられるパフォーマンスを、自分たちのオリジナリティーも大事にしながら、創っていくことを学んでいきました。
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UNISON COMPANYでは、そうした出演に至るまでの打ち合わせ、鼓和の運営マネジメントのほか、マーチングバンドの指導なども行っています。私たちがマーチングバンドと出会った原点は学校の部活動なので、その感謝や恩返しのためにも、後進の育成として、全国の小中高校芸術鑑賞会や、マーチングバンド・吹奏楽部の指導を行っています。横浜スタジアムで行われた読売ジャイアンツ戦のオープニングイベントで、横浜市立菊名小学校と横浜市立西谷中学校の生徒さんたちと共演させていただいた時は、感慨深いものがありました。
最近は、みんなで輪になってジャンベなどの打楽器を叩いて人材育成やコミュニケーション、ココロの健康促進を図る、打楽器を使った体感型研修プログラムも企業や団体向けに準備・発信しようとしているところです。
――公演の見どころは?
今回は、「The power of “Core” ~Beat Collection~」と題し、世界のさまざまな音楽ジャンルの中に存在するリズムやグルーヴを鼓和ならではのアプローチで表現します。
自主公演では、ギターやキーボードなども交え、カバー曲も演奏するスタイルでしばらくやってきて、メンバーの出身地である地方にも持っていったりしていました。横浜で久々にやった昨年からは、初心に帰り、打楽器だけ、カバー曲も基本的にはやらない、という形態をとっています。
結成当初からの大きな変化としては、ビシッと立って表情をあまり出さずに叩くマーチングバンドのスタイルから、いろいろな動きや表情を付けて、一般のお客さんが見ても分かりやすい見せ方にすることをすごく考えるようになりました。きちんとそろっていることが評価されるマーチングのコンテストと違って、そろえるところと崩すところのメリハリをつけること、そしてそのメリハリがきちんと伝わるようにすることこそが必要だと分かってきたんです。打楽器をやったことがない人でも、つい体がノッてしまうような、一つのエンターテインメントとして楽しんでいただけるようなパフォーマンスを準備しています。
また、演出面も年々少しずつ力を入れ、今回は女性だけの演目も用意して、初めて外部の振付師に振り付けをお願いしました。今まで使わなかった打楽器も取り入れています。僕らのオリジナル曲の中で、和テイストの曲があるんですが、今まではマーチングドラムだけでやっていたものに、和太鼓を増やし、スパイスを加えました。
普段地域のイベントなどで演奏している曲も、ステージ用にバージョンを変更し、同じ曲でも見せ方がだいぶ変わったりしているので、そういったなかなかお見せすることが出来ない「ショーケース」での鼓和を楽しんでいただければと思います。
大きい舞台で演奏する楽しみを経験してもらうため、地元平沼マーチングバンドの子どもたちにも演奏してもらう予定です。ぜひ、会場でお待ちしています。
――ありがとうございました!
齊藤真菜+ヨコハマ経済新聞編集部