神奈川県を除く全国46都道府県に住む人を対象とした「横浜市に関するイメージ調査」の結果が発表された。結果の一部を紹介し、担当者に調査のきっかけや所感を聞く。調査の実施主体はYocco18とジック(横浜市港北区新横浜2)。
Q.あなたは横浜市を訪れたことがありますか。
※以下、グラフ画像はジックWebサイトより引用。
Q.横浜市に訪れたことがあると答えた方にお尋ねします。横浜市を訪れた理由は何でしたか(複数回答)
「横浜市を訪れたことがあるか」という設問には、全体の3/4近くが横浜を訪れたことが「ある」と回答した。遠く離れた都道府県も含めた調査の結果としては、非常に多いといっていいだろう。
横浜市を訪れたことがあると回答した人のうち、8割近くが観光のために訪問している。買い物やイベントの回答も2割以上あり、横浜に“楽しみ”を求める人が多いことが伺える。
ビジネスで訪問した人も2割近くいるが、通勤・通学をしている人は1.7%と少ない。統計から見ても、市外から横浜市に通勤・通学する人は約42万人、横浜市から市外へ通勤・通学する人は約72万人と、流出が大幅に上回っている(平成27年国勢調査より)。
Q.横浜市で暮らす「横浜市民」に対するイメージについてお尋ねします。下記に挙げるキーワードの中から、当てはまるものをすべて選択してください。(複数回答)
横浜市民に対するイメージを問う設問では、「おしゃれ・かっこいい」という回答が4割を超えた。次いで「開放的・新しいもの好き」「地元愛が強い」「プライドが高い・気が強い」「明るい・元気」も3割を超えている。
普段からこういったイメージを持たれることは多いようで、当の横浜市民からも「『ですよね』という感じ(笑)」「自己紹介するとよく言われる」という声が聞かれた。また、「おしゃれでもかっこよくもないので私は横浜市民ではないのかもしれない」という声も挙がった。
Q.「横浜市」と聞いて思い浮かべる風景のイメージについてお尋ねします。下記に挙げるキーワードに対し、それぞれ最も当てはまるものを選択してください。(複数回答)
やはり横浜港やみなとみらいのイメージからか「海・港」を思い浮かべる人が非常に多い。次いで「繁華街・歓楽街」「観光施設・観光地」が続く。上位はみなとみらいや関内、中華街、横浜駅周辺等、都心部のイメージが占める。
他県から横浜に引っ越してきた人が坂道の多さに驚いているのをよく見かけるが、「坂道」は「イメージがある」と「少しイメージがある」を合計して5割を超えた。坂の多さはじわじわと認識されてきているようだ。
一方、あまり認識されていない項目でも、「神社・お寺」ならば伊勢山皇大神宮や横浜成田山、「河川」ならば鶴見川、「田畑」ならば市内28カ所の農業専用地区に広がる広大な畑など、横浜市民からすれば「これがあるだろう」と一言申したくなる項目も多いのではないか。
Q.横浜市の「まち」に対するイメージについてお尋ねします。下記に挙げるキーワードに対し、それぞれ最も当てはまるものを選択してください。(複数回答)
「街」自体に対するイメージの設問でも、人と同様「おしゃれ・センスが良い」という回答が多かった。「都会」という回答も同じくらいある。次いで「賑やか・華やか」「新しい・先進的」「若々しい・エネルギッシュ」など、活動的なイメージが多く挙がっている。
「ロジカル」と「エモーショナル」のイメージがどちらも同程度あるのが興味深い。どちらも兼ね備えたイメージなのか、見る人によって異なるイメージがあるのか、ぜひ聞いてみたいところだ。
本記事では5つの設問の結果を紹介したが、ジックのWebサイトではその他の結果も公開しており、「おまけ」としてPDFファイルもダウンロードできる。
アンケート調査を実施したYocco18の代表・遠藤望さんと、ジックの岸本雅弥さんに話を聞いた。
――横浜に対するイメージ調査を行うことになった経緯は?
遠藤 望さん(以下、遠藤):私たちYocco18は「身近な地域を知り、楽しむ」をコンセプトに、横浜市の18区の魅力や特徴を発信しています。活動においては地域の統計データを大切にし、各区の統計データも個性として知ってもらいたいと思っています。そこで、統計調査を行うジックさんと地域統計情報の発信でこれまで何度かコラボをさせていただいたご縁から、今回初めてイメージ調査を行うことになりました。
遠藤さんは横浜市の18区をモチーフにしたオリジナルキャラクターも制作 ©2020 Yocco18
岸本 雅弥さん(以下、岸本):我々としても、地域の統計に親しんでもらいたいという想いがあります。
遠藤:イメージ調査にあたり、最初は横浜市民の皆さんを対象にしたアンケートを考えていました。しかし、市民に対する調査は行政による市民意識調査等で既に実施されています。そこで、逆に外から見た横浜のイメージを調査してみてはどうかと提案しました。市民の感覚では、横浜は港以外にも商店街や緑地など多彩な魅力を持っています。その多様性がどのくらい外部の方に知られているのかも明らかにしたいと思いました。
岸本:横浜はメディアで紹介されるイメージが先行している印象もあり、実際にはどういうイメージを持たれているかを改めて聞いてみるのは面白いと思い、実施させていただきました。
――結果を見てみてどうですか?
遠藤:旧来からのイメージ通りの回答が非常に多く、すこし驚いたというのが素直な感想です。実際に横浜に住んでいると横浜市が地産地消を推進しているのも知っていますし、農業や緑などにも親しみがあります。でも他都道府県の方から見るとそういうイメージは一切なく、「港!!」というイメージだというのが強く伝わってきました。
岸本:港という代表的な観光資源があることは素晴らしいと思うので、そこは活かしていければと思います。あとはYocco18様のTwitterで横浜市民の皆さんから引用リツイートで反応してもらえることが多く、それぞれの横浜観を語ってもらえたのがよかったなと思いました。
――予想通りだった、もしくは意外だった結果は?
遠藤:横浜市民に対するイメージで「地元愛が強い」や「プライドが高い」という回答が多かったことは予想通りでしたね。横浜市民の地域愛はテレビ番組で取り上げられることもありますし、全国的に認知されている実感があります。私自身もYocco18の活動をする中で、地元愛が強い人が多いと感じています。
岸本:「プライドが高い」というとマイナスイメージにも思えますが、「横浜市民はプライドが高い」と回答した人でも「横浜市に対するイメージが良いか悪いか」を聞いた設問で「イメージが悪い・やや悪い」と回答した人はほとんどいないんですよ。
仮説を立てるとすれば、「横浜市民はプライドが高い」というイメージはもう市民性として日本全国から認知されているのではないかと考えています。だから好き/嫌いではなく、もう「横浜市民とはそういうものだ」と思われているのではないかと。
遠藤:意外だったのは、「横浜と聞いて思い浮かべる風景」で「海・港」に次いで「繁華街・歓楽街」が2番目に高かったことですね。「観光施設・観光地」が2番目にくるかと思っていました。
――今後もっと発信したい横浜のイメージはありますか?
遠藤:私たちYocco18のミッションの一つは、多様な地域から成り立つ横浜市を、日本全国の方に認知してもらうことです。港はもちろん大切な資源ですが、他のエリアや多様な地域資源もまんべんなく知ってもらえたら嬉しいです。私は商店街の近くで生まれ育って下町的な雰囲気がすごく好きなので、アットホームで人情が感じられる町というのも横浜の魅力として発信していきたいと思っています。
また、Twitterの反応で「実際はこうだぞ」と横浜のいろいろな地域の写真をアップしてくださった方が何人もいたのが印象的でした。実際に暮らしている市民の感覚と、市外からの認識の差を少しずつ埋められたらいいですね。
岸本:「横浜に来たことがあるか」の設問で「ある」と答えた人のほうが、横浜市に対するイメージが良い傾向があります。ここから「実際に横浜に来ると好感度が上がる」と考えてみると、まだまだポテンシャルが高い地域だと思うんです。
今は港や繁華街を好きになってくれる人が多いと思いますが、横浜にはまだまだ多くの資源があるので、他の部分も好きになってもらえるような取り組みができたらと思っています。
Yocco18とジックのコラボによる横浜市の人口推移の動画
予想通りの結果、意外な結果、横浜市民としては色々言いたいこともあったのではないだろうか。海や港など、メディアでよく紹介されるイメージはやはり強い。それが横浜の魅力であり、外部から求められる要素でもあるのだろう。
一方で、横浜に「庶民的・大衆的」というイメージを持つ人も半数以上いることに注目したい。おしゃれで先進的なイメージとは正反対だが、横浜の持つ多面性・多様性が認識されてきているようだ。
幸い横浜市民の地元愛の強さは、他都道府県からも広く認識されている。ヨコハマ経済新聞も地元愛を発揮し、これからも横浜の色々な面を知ることができるニュースを発信していきたい。
文:内島美佳
協力:ハマケイサポーターの皆様