次世代の循環型有機農業システム開発や家庭菜園栽培キット販売の「おうち菜園」(横浜市中区相生町3)は、魚と植物を1つのシステムで育てる農業「アクアポニックス」の技術を応用したコンテナ型オフグリッド農場を開発し、非政府国際協力組織「ヘイファー・インターナショナル」(米国アーカンソー州)へ納品した。
「アクアポニックス」は水産養殖と水耕栽培を掛け合わせた未来の農業
農場のオープニングには、途上国を中心に世界40か国から約150人の視察団を迎え、「END HUNGER」(世界から飢餓を無くす)をテーマにパネルディスカッションと農場の見学会が開催された。今後アフリカ、アジアなどの途上国支援にアクアポニックス技術を活用する。
農場は、1基設置することで約150~200人分の食料を生産できる。年間収穫量は、2年目で32,000株のレタス、400キロのトマト、350キロのスプラウト、900キロの魚を見込む。太陽光と風力のハイブリッド発電機能を備え、100パーセント再生可能エネルギーを利用した栽培が可能。従来の慣行農法に比べて70~80パーセントの節水ができる。
資材はすべてコンテナに詰めて世界中へ発送し、現地で組み立てる。輸送に使ったコンテナは魚の養殖場とオフグリッドシステムの設置保管所として現地で再利用される。資材、水、エネルギーが手に入りにくい途上国において、効率的な食料自給を支援し、現地雇用の創出を目指す。
「未来の農業」として期待されているアクアポニックス(さかな畑)は、水産養殖と水耕栽培を掛け合わせたシステム。魚の排出物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収、浄化された水が再び魚の水槽へ戻る仕組みとなっている。無農薬で水やりや肥料が不要、虫がつきにくい、土づくりが必要ない、生態系の縮図を体感できるなどの理由から、自宅の庭や室内で家庭菜園として楽しむ人が増えているという。
おうち菜園は「アクアポニックスを広めたい」と2014年4月に横浜で創業。2018年にアクアポニックスの本場アメリカに調査・開発拠点を設け、農場や研究所を回って最先端の技術を取り入れ、農場設置を重ねてきた。
おうち菜園代表の濱田健吾さんは「納品先のCFOから『これで5万人を飢餓から救える』と言われ、鳥肌が立った。アクアポニックスの技術がこのように活用できることに感動した。もっと早く、会社を大きくしたいと思う」と意気込む。