横浜市医療局は11月22日、実際に患者や医療従事者が体験したエピソードに基づいてそれぞれの「視点の違い」を描く「視点が変わる『医療マンガ大賞』」受賞作品を発表。大賞は、独特のシンプルなタッチで親子の最後の別れを描いた油沼さんの作品が受賞した。
医療に関するコミュニケーションギャップの改善を目的とした同賞では、医療情報検索サイト「メディカルノート」の監修で作成した6つのエピソードと、ツイッターで集まった156のエピソードから選定した4つを原作とした漫画作品を漫画家向けコミュニティーサービス「コミチ」上で募集。9月30日~10月10日の期間内に計55本の作品応募があり、大賞1作品・入賞7作品を選出した。
大賞に選ばれた油沼さんの作品は、ガン末期で在宅医療を受ける父とその娘の思いを描いた。審査員の一人で医師の井上祥さんは「描写の一つ一つがとても丁寧で、素直に感情移入ができるものだった。自宅で最期を迎えるという選択肢をぜひ知っていただければ」とコメント。大賞作品には30万円、入賞作品には各10万円の原稿料が授与され、作品は医療機関などでの医療広報に活用される。
また、選外にするには惜しい作品として、3作品が特別賞に選出された。中でも転院に対する患者や家族の不安に関するエピソードをギャグ漫画で描いた小山コータローさんの作品に、荒木田百合横浜市副市長は「行政単独で主催していたら、こうしたユニークな作品が応募されなかった可能性がある。『医療マンガ大賞』の将来性を感じた」と評価した。
12月13日に都内で行われる受賞作品決定記念トークセッションには、審査員の一人で医師・コラムニストの大塚篤司さんら医療コミュニケ―ションについての啓発活動を行う「SNS医療のカタチ」メンバーが登壇。特別ゲストにがん患者としての率直な思いをブログやSNSで発信する写真家・幡野広志さんを迎え、受賞作品について議論しながら、新しい医療の情報提供の形を考える。