子どもと一緒に火災予防を考える絵本「みんな森の仲間とオオカミのサイレン」を横浜市消防局が企画、趣旨に賛同した野毛印刷社(横浜市中区相生町5)が、消防の緊急通報番号「119番」にちなんで、2019(令和元)年11月9日に発行した。
絵本ではパンダ隊長とウサギ・ゾウ・クマの隊員が「キッズ消防隊」として大活躍
横浜市では、将来の地域防災の担い手である子どもたちへの防火・防災の活動に継続的に取り組んでおり、2017(平成29)年、歌って踊れる火災予防ソング「それゆけ!キッズ消防隊」を制作。動画サイトに投稿すると200万回に迫る視聴回数となった。この動画を元に翌年、当時、戸塚消防署長で現在は消防局予防部予防部長の名取正暁さんが原作を書き上げた。
「ここはどうぶつたちがなかよく暮らしている『みんな森』です。みんな森には、森を守るキッズ消防隊がいました」――絵本の書き出しはこうだ。暴れん坊のオオカミのいたずらから大火災になってしまった森の火を動物たちは消すことができるのか。物語を通じて、火災予防の注意点などを伝える。絵は絵本作家の福ヨシトモさんが担当。
「物語に出てくる動物たちにとって、森は我が家であり、楽しい思い出がたくさん詰まっている場所。それを大火事で失ってしまう。物語を自分の大切な我が家や家族に置き換えてみると、何もかも一瞬にして奪う火災を一件でも減らしたい、減らすことのできる火災を何とかしたいと思う」と名取さんは言う。動物たちが仲間を思う物語にもなっており、読者からは絵本を通じて「大切なものや本当の強さとは何か」など子どもと話し合うきっかけになったという感想が届いた。
絵本の形にしたのは、保育園などでの読み聞かせが好評で、保育士さんや保護者から絵本にしてほしいとの声が多かったことと、絵本の物語は時代を超えて、大切なことを伝えていくと感じたからだという。
そうした思いを受けて絵本を編み上げたのが野毛印刷社。同社の江口聡さんは「子どもたちが対象だが、社会にとって優しい絵本でありたいと、印刷方法なども環境に配慮した」と話す。奥付には石油系の揮発性有機化合物(VOC)を含まないインキを使うなど印刷へのこだわりが記されている。
初版4000部で、価格は1,400円(税別)。有隣堂書店などの市内書店で販売中。1月12日に、横浜赤レンガ倉庫(中区新港1)で開催される消防出初め式では、消防音楽隊による演奏を伴った絵本の朗読を披露するほか、絵本の販売ブースも設ける。