NPO法人「横濱ジェントルタウン倶楽部」(横浜市中区常磐町2)が現在、2006(平成18)年に作成した指先で触って道路などの関係性を感じることのできるバリアフリーマップ「触る地図」を、大きく変化した街の情報に対応して作り直すため、クラウドファンディングを立ち上げ寄付を呼び掛けている。
横浜駅やズーラシア、羽田空港などの触地図や点字ガイドブックなども作成してきた櫻井さん夫妻
横濱ジェントルタウン倶楽部は、誰もが気軽に街に出掛け、買い物や食事、観光などができるようなまちづくりを目指して、障がい当事者とともに活動している非営利団体。「ジェントルタウン」には「人にやさしいまち」という意味を込める。
地図の範囲は横浜駅周辺やみなとみらい、関内・関外、山手などを含む横浜都心エリア。中でもみなとみらい地区はこの10年間での変化が大きい。オリンピックを前に横浜市のホスピタリティーをアピールするためにも、「今こそ地図を再び作成したい」とクラウドファンディングを立ち上げた。
現在の「触る地図」には、使われてきた中で、さまざまな感想や意見が寄せられた。同NPO理事の櫻井悦子さんは「みなとみらい地区が開発される前に失明した人から『みなとみらい地区の位置関係がやっと分かった』、東京の視覚障がい者から『触って分かる地図があるなんてうれしい。この地図で横浜の街を歩いてみたい』と言われた」と振り返る。これまでの十数年での触る地図にまつわるエピソードもクラウドファンディングサイトで紹介する。
地図のリニューアルに当たり、触って読み取る際に街の構造を理解しやすくなるよう、触地図と点字では必要な情報を「厳選して」掲載するほか、みなとみらい地区に建物が増えたため、同地区全体を地図に入れるなどの機能向上を予定する。
視覚障がい者にとって分かりやすいだけでなく、目の見える人が見ても同様の理解ができる地図を目指す。点字のそばに対応する印刷文字を置くなど細部にもこだわり、地図の同じ地点から同じ情報を共有できるようにする。視覚障がい者から地図を触りながら質問されたとき、触地図では分かりやすさのため省かれた詳細な情報について、言葉にして伝えることでコミュニケーションが生まれるという。
副理事を務める櫻井淳さんは「何よりもうれしかったことは『よく作ってくれた』と本心で伝えられたとき。『一緒に街の地図を使うことがうれしい』という喜びが自分にも生まれた。地図を通じて仲間になることができた」と話す。
「触る地図」に触れられる場を設けるため、横浜中華街のギャラリー「爾麗(にれい)美術」(山下町)で今月16日まで開催中の写真展「目と指で見るパラスポーツ写真」とタイアップ。触る地図の実物を展示し、自由に触れることができるようにした。希望者は地図を持ち帰ることもできる。11日には、見える人と見えない人合わせて3人程度が1組になって、触る地図を体験するワークショップも開く。
写真展の入場料は500円。ワークショップは13時~17時、1組当たり10~15分。駅からの誘導が必要な場合などの問い合わせは同NPO(TEL 045-681-3877)まで。
クラウドファンディングは「READY FOR」のシステムを利用。目標金額は180万円。達成した場合のみ成立する「オール・オア・ナッシング」方式で行う。支援募集は2月28日23時まで。