横浜美術館(横浜市西区みなとみらい3)で現在、彫刻家・澄川喜一さんの、首都圏の公立美術館では初となる大規模な回顧展「そりとむくり」が開催されている。最新作を含む約100点の資料で、約60年に及ぶ創作活動を振り返る。
東京スカイツリーの造形のほか、横浜の公共構造物の造形にも関わる
澄川さんは1931(昭和6)年、島根県鹿足群六日町(現在は吉賀町)生まれ。東京芸術大学彫刻科に進学し、木彫の師・平櫛田中さんや塑像の師・菊池一雄さんから学んだ若き日の具象的な造形作品から、木や石といった自然素材をモチーフにした抽象彫刻作品へと連なる創作活動を展開する。
プロローグでは、彫刻家を志す原点となるほど魅了された構造物、山口県岩国市の錦帯橋の模型や錦帯橋にまつわる写真を展示。東京湾アクアライン川崎人工島「風の塔」や東京スカイツリーのデザイン監修をはじめ、都市の巨大構造物や野外彫刻など、公共空間における造形分野への進出も紹介。横浜市内でも、横浜駅「万里橋」、馬車道駅「銀波・金波」、横浜公演「R.H.ブラントン記念像」、横浜銀行本店「そりのあるかたち」など、多くの公共造形物を手掛けている。
1970年代後半から現在に至るまでライフワークとして取り組む「そりのあるかたち」シリーズは、日本の伝統建築や意匠の特徴である曲線美に大きく影響を受けた。反った部分が「そり」、膨らんだ部分は「むくり」とされ、自然素材の特性と対話しながら技と工夫を生かして制作している。
3月20日は、澄川さんと内藤廣さん(建築家)、逢坂恵理子さん(キュレーター)との鼎談(ていだん)、5月2日は澄川さんによるギャラリートークを予定する。
開館時間は10時~18時。チケットは、一般=1,500円、大学・高校生=900円、中学生=600円、小学生以下無料。3月28日は観覧無料。5月24日まで。
※横浜美術館は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、2020年2月29日から3月15日まで、全館臨時休館となりました。3月16日以降については、横浜美術館ウェブサイトで随時案内していくとのこと。(2月28日発表)