横浜在住のグラフィックデザイナーでカメラマンの川名マッキーさんが5月、写真集「百顔繚乱(ひゃがんりょうらん)」を発刊する。モデルとなった100人の、最も人に見られたくない顔と笑顔を並べることで作品にした。
川名さんは、グラフィックデザイナーとして経歴をスタート。1992(平成4)年クリエーティブ・ファクトリー「B-CUBE(ビーキューブ)」を設立。広告、雑誌、CDジャケットなど商業出版物の企画、デザインなどを手掛け、テレビ神奈川の音楽情報バラエティー「saku saku」のキャラクター「白井ヴィンセント」の制作にも関わった。デザインにあたり必要な写真は自ら撮っていたが、キャリアを重ねる中、頼まれることで成り立つ「デザイン」から、一から生み出す「写真」へと軸足を動かしてきた。
ポートレートを撮ることが好きで、撮られ慣れているプロのモデルよりも、市井の人を魅力的に撮ることに強く引かれた。2009(平成21)年に始めた家族写真の出張撮影「家族の肖像」プロジェクトでは、プロのモデルではない家族から魅力的な表情を引き出すことに心血を注いだ。被写体の「一番すてきな顔を撮る」ことを考え続けて過ごす日々、ある朝目覚めてふと「一番変な顔を撮ったらどうなるんだろう」とひらめいたという。「ただ変な顔だけを撮られたい人はいないけれど、一番いい表情と一番変な表情を並べれば、人間の表と裏が見えてくるかもしれない」
試しに変顔を撮影してみると、モデルからは「気持ちがいい」「心からスカッとした」「こんなに楽しいと思っていなかった」など良い反応。このプロジェクトには「秘めた可能性があるのでは」と直感した。SNSを通じて友人ら100人のモデル希望者が集まり、100通りの笑顔と変顔とが見開きで並ぶ写真集になった。
「思いつきで始めたが、変顔撮影をやってみたところ、新たな自己の発見や、見える景色が変わったという人もいた。ストレスを抱えている個人や社会へのメリットがあるかもしれないと可能性を感じた」と川名さんは話す。大学の心理学の先生から、実証試験をしたいという申し出も受けているという。
写真集は自費出版で初版1000部。発行はB-CUBE。定価3,500円だが、4月中は先行予約として先着順で50冊を500円引き。3月中の出版を目指していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、5月11日に変更した。
川名さんはまた、新型コロナウイルスの影響で経営が苦しくなった店に何か協力したいと、新たにテークアウトを始める店からの依頼があれば、料理の撮影を無料で引き受けている。「料理撮影をなりわいとしている同業の人にも配慮したい。だが本当に苦しい店の役に立てれば」という。
写真集購入、料理撮影依頼とも、問い合わせは川名さん(TEL 080-3456-0672)まで。