新型コロナウイルスの感染拡大の影響で4月8日より休館しているミニシアター「横浜シネマリン」(横浜市中区長者町6)が、このままでは3カ月も持たないと、映画館の存続のためオンラインショップを立ち上げた。シネマリンのキャラクター猫の「クリコ」グッズや映画鑑賞補助券などを扱う。
グッズには、シネマリンのキャラクター猫クリコちゃんと、飼い主のマリコちゃんがプリント
横浜シネマリンは1964(昭和39)年に「イセザキシネマ」としてスタート、1986(昭和51)年「横浜シネマリン」に改名した。現オーナーの八幡温子さんは、前オーナーが押し寄せるデジタル化の波を前に映画館を閉じようとしていたことを知り、2014(平成26)年に運営を引き継いだ。
他のミニシアターの元社員らも参加した映画サークル「横浜キネマ倶楽部」に発足時から関わるなど、映画への愛は人一倍あったが、映画館経営となると全くの素人。私財を投じてリニューアルを始めたが、1957(昭和32)年築の古いビルは老朽化が激しかった。デジタル機材を入れるにも配電は古く、工事中に地下水が出たり、スクリーンを大きくするために天井のドレープを取ったら壁が倒れてきたりと、トラブルの連続だった。
それでも八幡さんを駆り立てた原動力は「一度終わらせると、映画館としては二度と再生できない」という危機感。営業し続けていれば、映画館でいられるが、閉館してしまうと既存不適格(旧法下の建築で現行法に対しては不適格)な建築物では、新たな営業許可は取得できない可能性が高い。営業を続ける形で引き継ぐことが必要だった。意を決し、前オーナーから運営会社ごと買い取った。
リニューアル後は、大きくなったスクリーンと、アンプ一体型のライブハウス用スピーカーとで、映像と音響の質が格段に良くなった。シネマリンならではの、ドキュメンタリー作品を大切に扱う姿勢や、独自の特集上映などを通じ「シネマリンのファン」が少しずつ増えてきた。先日亡くなった大林宣彦監督の「傑作選特集上映」を一昨年行った際には、妻でプロデューサーの恭子さんから直々にお礼の電話をもらうなど、映画人との交流も深めてきた。
苦節5年でやっと軌道に乗ってきた新体制。昨年初めて黒字になった。「正月も好調で、ああ、今年も赤字にならなくてすむかな、良かった」と思っていたところに、新型コロナウイルスのまん延となった。家賃とスタッフ6人の給料、後払いとなっていた上映料の支払いものしかかる。収入が止まっても、支出は止まらない。
矢も盾もたまらず、1週間奮闘し、14日からオンラインショップを立ち上げた。八幡さんは「ここまで苦労してやってきた、なんとしても続けたい」と応援を呼び掛ける。応援グッズは、オリジナル手ぬぐい(1000円)、Tシャツ(3500円)、映画鑑賞補助券セット(3000円~)などをそろえた。
早く再開したいとの願いを込め、シネマリンのサイトには、休館中の作品の振替上映を考慮して組み直した、連休明けの上映予定が記されている。