横浜の飲食店が加盟する横浜市食品衛生協会が「横浜愛 横浜市の飲食店を救おう」を掲げ、クラウドファンディング(以下CF)を立ち上げた。店舗のみではなく、各区の食品衛生協会の存続も目的とする。
CF発案者「ワンズ ダイニング」のオーナーシェフ、田島洋一さん
同協会は、南区の喫茶店「ぱぁら~泉」の八亀忠勝さんが会長を務め、老舗店舗や商店街の飲食店など、現在4000店以上が加盟する。協会全体でのCFを発案したのは元町の「ワンズ ダイニング」(横浜市中区元町1)オーナーシェフ、田島洋一さん。
CFのリターンには、趣旨に賛同した店舗が食事券などを提供。500円の寄付で1,000円分の飲食ができるリターンや、4,000円で5,000円分のコーヒーチケットなど、寄付価格以上の返礼品が並ぶ。「返礼は持ち出しになるが、お客さんが店を訪れてくれるきっかけになれば」という。
可能な限り早期にと5月1日にCFを始めたが、大変だったのは加盟全店舗に立ち上げたCFを知らせること。
「市の協会が18区の協会を束ね、区の協会が区内エリアの協会をまとめているので、各店は『山手飲食保険組合』『野毛飲食業共同組合』といったエリアごとの協会に入っている意識はあっても、市の飲食店協会には入っている認識がない店もある。おじいちゃん、おばあちゃんが営む店など、メールでは連絡が取れない店もあり、開始してからも電話などで加盟各店への説明を続けた」という田島さん。
さらに危惧するのは、個別の店だけではなく、食中毒予防のための食品衛生責任者養成講習会を行う各区の食品衛生協会の存続。「休業時の家賃補償保険や食中毒の保険などに団体保険で加入したり、協会を通すと融資が受けやすくなったりするなど、飲食店を守る存在」だが、講習会は現在中止、収入の要を絶たれた状態に陥っている。
CF目標額には5,000万円を掲げたが、直接の寄付も合わせ1億3,000万を目標としている。内訳の概算は各区食品衛生協会に20万円ずつ計360万円、加盟約4000店に3万円ずつ計1億2,000万円。何百万の赤字が出ている協会や店にとっては焼け石に水のような額かもしれないが、「応援してくれる人が多くいることを、CFを通じて形にし、行政に伝え、公的支援制度が設けられるきっかけになれたら」と田島さんは願いを込める。
会長の八亀さんは「CFを聞いたことはあったが、自分がやるとなると大変。加盟店舗への連絡も不義理になってしまわないよう、今後も誠意を尽くしたい」と話す。八亀さんのもとには、横浜市内からの応援のみならず、全国各地の食品衛生協会の代表者から「よく立ち上げた」「業界のためによかった」と応援の電話が届いている。「お金は集まらないかもしれないけど、気持ちの上で、みんなでがんばりたい。横浜市にも各店を勇気付ける政策をと、働きかけたい」という。
CFの呼び掛け文は「浜っ子の皆さまはもとより、日本全国の皆様横浜になじみがあるようでしたら、ぜひ支援賜りたく」で始まり、「どうにかして横浜市の飲食店を助けていただきたいと思います」で結ばれている。6月末まで。