国内で最高齢の現役大道芸人とされるギリヤーク尼ヶ崎さん(89歳)が、5月14日に東京都内の病院で心臓の手術を受け、無事成功した。ペースメーカーの本体を交換する手術だった。
ギリヤークさんは函館生まれ、東京在住。旧制中学では器械体操の選手で、俳優にあこがれ上京したが、方言なまりがとれずに苦戦。舞踊の道に進んだのち、38歳で決意し、大道芸を始めた。
心臓に疾患が見つかり、2008年からペースメーカーを使用していた。先月の定期健診時に、ペースメーカーの電池残量が少なくなってきたことが分かり、13日に入院した。
8日、入院を5日後に控え、行きたい場所を尋ねられると「駒沢オリンピック公園」。若き日に練習で通った場所、車椅子を押されながら巡った。「なんだか公園も年をとったね」。夕暮れ時の西日で木々が落ち着いた色に見えていた。
11日、再び公園を訪れた。緑のある風景を、踊る舞台に選んだ。2016年にパーキンソン病と脊柱管狭窄症が悪化して以来、創作舞踊の代表作の「じょんがら一代」は、冒頭の歩きのシーンで車椅子を使用していたが、この日はゆっくりと自分の足で歩き出し、無観客のまま最後まで踊り切った。
14日午前、手術を無事終えた。午後に目を覚ますと、開口一番「先生が『絶対成功させるんだ!!』って張り切っているのを感じたよ」と話した。左胸にペースメーカーを植え込んだため、しばらく左手を挙げないようにという指示がある中、右手と顔だけでベッドの上で踊りだした。「もう大丈夫だ!あと50年くらい大丈夫だ!」と力を込めた。
新しいペースメーカーの電池は、10年程度もつ予定。
ギリヤークさんは、白楽駅近くの六角橋商店街(横浜市神奈川区六角橋)の「ドッキリヤミ市場」で、例年5月の第3土曜に公演を行ってきた。16日開催予定だった同イベントは、新型コロナウイルスの影響で全体が中止となっている。