2005(平成17)年に製作され翌年公開された映画「ヨコハマメリー」が15周年を記念して10月、横浜市内の映画館2館でリバイバル上映される。
ヨコハマメリーは、戦後の横浜に実在した女性、通称「ハマのメリーさん」(以下、メリーさん)を描いた作品。白い衣服に白い顔で都市伝説のような存在だった老女が、1995(平成7)年冬、横浜の街から姿を消した。同作の監督、中村高寛さんはメリーさんの不在が気になり、1997(平成9)年から周囲の人の話などを集め、メリーさんの姿を描き出していく。
15年ぶりの映画上映に当たり、中村さんは「主な舞台となった伊勢佐木町を歩いても、映画の中の景色はほとんどが消え去って『メリーさん』を知っている人たちも少なくなった。メリーさんが去った年に生まれた子どもが25歳になるのだから当然のこと」と振り返りつつ、「インスタ映えする容姿、風貌を見て、ちょっとでも引っかかったのならば、ぜひ見に来てほしい。SNSなどではお目にかかれない、貴重な映画体験になるかも」と来館を呼び掛ける。
書籍「ヨコハマメリー 白塗りの老娼はどこへいったのか」も8月30日に発刊された。中村さんが2017(平成29)年に著した単行本「ヨコハマメリー かつて白化粧の老娼婦がいた」を文庫化したもの。
有隣堂伊勢佐木町本店(横浜市中区伊勢佐木町1)では、レジ前の同書コーナーにメリーさんの全身像パネルを置き、階段の壁に写真家・森日出夫さんが撮影したメリーさんの写真を飾っている。同店向かいにあり、メリーさんがよく訪れていたデパート「横浜松坂屋」(2008年に閉館)で写された一枚もある。
文庫化について、「文字組みなど文庫ならではデザインにこだわった。冒頭に横浜の街の変遷が鳥瞰(ちょうかん)できる地図、巻末に解説を入れるなど、文庫本で新たに追加した内容もある。今、この本を手に取ってくれる人が多くいることがうれしい。映画は見る人が育ててくれるもの。本を読むことでメリーさんの記憶が新たにつながって、映画と本の間を行き来してもらえたら」と話す。
リバイバル上映は、横浜シネマリン(長者町6)=10月3日~16日、シネマ・ジャックアンドベティ(若葉町3)=10月17日~30日。