1968年から街頭公演を行い続け「伝説の大道芸人」と称されるギリヤーク尼ヶ崎さん(本名=尼ヶ崎勝見)が自ら監督、主演の90歳記念記録映画「魂の踊り」が完成した。
ギリヤークさんは独自の創作舞踊を見せる大道芸人。「88歳(米寿)で芸歴50周年」を自ら目標に掲げてきたが、目標達成以後も現役で活動を続けている。横浜では毎年5月に六角橋商店街(横浜市神奈川区六角橋1)のイベント「ドッキリヤミ市場」で踊るほか、春の連休に関西、夏に北海道、10月に新宿での公演など、日本の各地で踊り続けている。
パーキンソン病と脊柱管狭窄症を抱えて闘病が続く中、昨年は5月に心臓ペースメーカーの電池交換手術を受け、成功した。医師からは踊り続けても大丈夫と診断されたが、夏までの公演はすべてコロナ禍で中止になった。
「公演ができなくても、踊りに込める生き様を見てもらいたい」と映画の制作を決意。これまでの人生を振り返り、原点に立ち戻ろうと、同居する弟の光春さんと、横浜在住でギリヤークさんの芸の黒衣役を務める紀あささんともに旅に出た。両親の墓がある秋田県や、ふるさとの北海道函館市などゆかりの地で踊る様子を映画におさめた。
役者の近藤正臣さんが全編を通して、語り(ナレーション)を担当した。近藤さんはギリヤークさんが街頭公演を始めて間もない頃より親交がある旧友で、踊りで使っている数珠や、刀のツバ、50周年記念のノボリも近藤さんがギリヤークさんに贈ったもの。
映画の題字は円覚寺(神奈川県鎌倉市)の管長、横田南嶺老師が書を贈った。かつてギリヤークさんの30周年記念映画で、題字を前管長の足立大進さん(2020年2月29日没 享年87)が手掛けていた縁を受け継いだ。
劇中歌には横浜在住のシンガーソングライター、友部正人さんの「大道芸人」が流れる。1991年のアルバム「ライオンのいる場所」など複数のアルバムに収録されている曲で、ギリヤークさんがモデルとなっている。
公演ができず、投げ銭も絶たれる中での映画製作だったが、ファンからの予約注文を力に完成。完成した映画を試写したギリヤークさんは、涙を流しながら「これすごくいいね」とスクリーンの自分の姿とともに踊り出した。完成したDVDを手にした日は「母のふるさとの海での踊りは命がけの思いだったが、映画に残すことができてよかった。体を整えて、動きを取り戻してまた踊りたい。100歳まで踊りたい。長いようだが、日々を過ごしていると99歳になり、明日は100歳か、となるような気がする」と話した。
緊急事態宣言下の完成のため、上映は当面の間見送り、DVD(2,500円)と、フォトブックとDVDの映画応援セット(5,000円)を販売する。