横浜開港資料館(横浜市中区日本大通3)が企画展「レンズ越しの被災地、横浜 ―写真師たちの関東大震災―」を開催している。
東日本大震災から10年の節目に、展示を通じて災害の記録を伝える意義を見つめ直す企画展で、2018年秋に鎌倉市内で発見された西野写真館旧蔵の写真原板(ガラス乾板)を中心に、街の写真師たちが撮影した被災地、横浜の姿に迫る。
写真原板28枚は損傷も少なく、良好な保存状態で発見された。原板からは、倒壊した建物の状態や道行く人々など当時の様子を細部まで見ることができる。現在のJR桜木町駅周辺の様子をとらえた写真では、中央左側にはドーム屋根を備えた神奈川県農工銀行、右側には京浜線の高架や焼けた貨車が確認できる。1872(明治5)年に開業した日本最古の駅舎、初代横浜駅(桜木町駅)は火災によって焼け落ちた。
西野芳之助撮影と考えられる、関東大震災で大きな被害を受けた横浜の様子を記録した写真原板(サイズ:縦105ミリ×横160ミリ)の写真は、神奈川県警察部編「大正大震火災誌」(1926年)をはじめ、震災の記録をまとめた多くの「災害誌」に掲載されている。原板には、和文と英文で撮影場所が記された薄紙が貼られ、被災の記録を伝えている。
西野芳之助は1881(明治14)年10月に現在の横浜市中区日ノ出町に生まれた。写真師の道を志し、大正初年には同地で写真業を営んでいた。その後、鎌倉で写真館を開業し。1952(昭和27年)10月に没した。
同館は、展示図録「レンズ越しの被災地、横浜―西野写真館旧蔵関東大震災ガラス乾板写真―」(1,200円 税別)を販売。横浜市街を流れる河川の状況や、瓦礫(がれき)の山となった山下町、外壁を残して焼け落ちた建造物群、倒壊した港湾施設など、約100年前の地震の惨状を伝える。
会期は4月18日まで。開館時間は9時30分~16時30分(入館は16時まで)。
横浜開港資料館は、1981年6月2日、日米和親条約が結ばれた地に開館した。幕末~大正・昭和初期の横浜に関係する資料を約27万点収蔵し、資料を公開している。中庭には「ペリー提督横浜上陸図」に描かれている木が先祖であるといわれる「たまくすの木」がある。