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5月29日横浜大空襲から76年 シネマリンで「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~」

横浜大空襲 提供:横浜市史資料室

横浜大空襲 提供:横浜市史資料室

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 明治時代に生まれ、戦中、戦後を生き抜いたスズさんとその一家を描いたドキュメンタリー映画「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~」が、5月29日の横浜大空襲の日にあわせて、横浜シネマリン(横浜市中区長者町6)で上映されている。

すずさんが主人公の「この世界の片隅に」片淵監督 「実在のスズさん」と

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 横浜大空襲は、1945(昭和20)年5月29日。9時20分ごろに横浜上空にB29約500機とP51約100機が来襲。約1時間で、総数43万8,576個(約2570トン)の焼夷弾投下と、P51による銃爆撃が行われた。大空襲による被害は、直後の公式発表では、死者3,650人、重軽傷者1万198人、行方不明309人、罹災者31万1,218人とされた。

 映画の主人公、小泉スズさんは、1910(明治44)年横浜生まれ。序章では、スズさんの嫁ぎ先の東京で起こった関東大震災や、戦中の防空訓練、食料難、学童疎開、家を失って親戚を頼り一家で身を寄せた横浜の大空襲など、戦前戦中の日々をつづる。

 後半は戦後の時代に、スズさんが家事をし、日々を送る姿が描かれる。「着物をほどく」「洗い張りをする」「夏掛け布団」「洗濯」「ゆかたを縫う」「お盆を迎える」「お手玉つくり」「おはぎ」「はんてん」「こわめし」「漬物」「お正月の支度」など、家族のために手仕事をする姿から、日々の営みの尊さが伝わる。

 映画に登場するスズさんの長女、小泉和子さんは、母と暮らした当時を振り返る要の役どころ。映画の中で昭和の家事の豊かさについて口にする和子さん。「一番身近なはずの庶民の暮らしが最も残りにくく軽んじられる」と感じ、本作以前から、スズさんの家事を映像に残したり、スズさん一家が暮らしていた家を「昭和のくらし博物館(旧小泉家住宅主屋)」(東京都大田区)として、昭和時代の庶民の暮らしを展示したりしてきた。和子さんが残した映像は、映画「スズさん」の誕生のきっかけになった。

 映画を監督した桜美林大学教授の大墻敦(おおがきあつし)さんは、公開初日の舞台あいさつで「スズさんの視点でどのように家族を守り生き抜いたのか、家事に生きたスズさんの人生、ていねいに日々を生きたスズさんの美しい人生を描けないか」と思ったと話した。横浜大空襲については「横浜市史資料室には横浜大空襲の映像はほとんどなく、米軍が空から撮ったものと、2.3カ月後に進駐軍が撮った写真しかない。当時法律で日本軍に都合の悪いことは撮影してはいけなかった。今回は当時の国策映画、写真、米軍のフィルムなどを集めて再構成することを試みた」という。

 大墻監督はまた、自身の祖父が抑留先のシベリアで亡くなったことや、祖母が戦後に命がけで父を含む5人の子どもを連れて帰ってきたことを話した。「つくづく思うのは、父と母に学童疎開のことや引き揚げのことを、もっともっと聞けばよかった」と振り返り、「映画を見た人が、自分の経験を孫や子どもに伝えておこうという気持ちになってくださったら」と願いを伝えた。

 上映時間は10時~11時30分。2週間限定公開で、6月4日まで。

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