横浜市中央図書館(横浜市西区老松町1)で、横浜市立図書館の100周年に合わせた企画展「横浜と新聞」が行われている。ニュースパーク(日本新聞博物館、横浜市中区日本大通)と協力し、横浜にまつわる新聞紙面などを展示している。
展示は、ニュースパーク所蔵の新聞を紹介する第1部「開港地 横浜と新聞」と第2部「新聞が伝えた横浜」に分かれ、関連のおすすめ本の紹介や、同館所蔵の貴重な資料を紹介する「開港期の邦字新聞」の関連展示もある。
「開港地 横浜と新聞」では、横浜で発刊された日本初の日本語の日刊新聞「横浜毎日新聞」の1875(明治8)年3月10日付の紙面や、横浜の外国人居留地でアメリカ人のヴァン・リードが発行した新聞「横濱新報もしほ草」の1868年(慶應4)年4月25日のオリジナル紙面を展示。日露戦争時の「横浜新報」(現・神奈川新聞)の号外や、明治政府の成立後に神奈川府(のちの神奈川県)からの通知などを伝えた広報紙「金川府日誌」もある。
「新聞が伝えた横浜」では、歌人の与謝野晶子の寄稿「感冒の床から」を掲載した1918(大正7)年11月10日の「横浜貿易新報」(現・神奈川新聞)の「婦人と家庭」欄を大型パネルにして展示。当時、流行していたスペイン風邪について、「政府はなぜいち早くこの危険を防止するために、大呉服店、学校、興行物、大工場、大展覧会等、多くの人間の密集する場所の一時的休業を命じなかったのでしょうか」「貧民であるという物質的の理由だけで、最も有効な第一位の解熱剤を服することが出来ず」(注・かなづかいの一部をあらためた)など政府や社会の対応について書いた文章を読むこともできる。あわせて、関東大震災での横浜での被害を伝える大阪発行の「読売新聞」の号外や「大阪朝日新聞」の写真入りの付録、太平洋戦争での横浜空襲を報じる「朝日新聞」も展示している。
「開港期の邦字新聞」では、難破してアメリカに渡ったジョセフ・ヒコ(浜田彦蔵、アメリカに帰化)が発行した日本で初めての日本語新聞「海外新聞」の復刻本などを展示している。ジョセフ・ヒコは1864(元治元)年、横浜の外国人居留地で「新聞誌」を発刊し、翌65(慶應元)年に改題した。その他、日本人による初めての本格的新聞として1868(慶應4)年に江戸で発刊された「中外新聞」もある。
図書は、ニュースパークの尾高泉館長や学芸員の推薦本をはじめ、新聞やメディアについて考える書籍を展示・紹介。市立図書館の70周年を記念して出版された「横浜の本と文化」や、「神奈川新聞小史」など同紙の歴史に関する書籍などが並ぶ。
同館調査資料課の福地浩さんは「現在のわれわれと同じように、与謝野晶子さんもスペイン風邪の流行を経験し、文章を書いた。女性の活躍の場が今より小さかった時代に、横浜貿易新報が発表の場を提供していた。新聞記事を収集し、市民が利用できる形で提供していくのは、図書館の大きな使命で、それには終わりはない。企画展を通して、そうしたことを考えてほしい」と話す。
「横浜と新聞」展は観覧無料。中央図書館の開館時間は9時30分~20時30分(土~月・祝は17時まで)。会期は12月19日まで。