第27期(2022年度)の横浜マイスターに、活字鋳造の大松初行さんと表装(壁装)の山崎隆さんが選ばれ、8月30日、横浜市役所で「横浜マイスター称号授与式」が行われた。
横浜市は1996(平成8)年度から、市民の生活・文化に寄与する卓越した技能職者を「横浜マイスター」に選定する事業を行ってきた。対象職種は「手作業により、または工程の一部に手作業で制御する機械を用いてものづくり、またはサービスの提供を行い、技能の習得に長年にわたる研鑽と経験を要する職種」で、横浜市内に在住し、15年以上の実務経験と、卓越した技能を有する職人などを選んでいる。
大松さんは1944(昭和19)年生まれ。1919年創業の活版活字鋳造販売「築地活字」(横浜市南区吉野町5)に1963(昭和38)年から勤務。活版印刷において必要となる金属活字の鋳造や鋳造機のメンテナンスに従事。300℃以上の高温で溶かした鉛を水冷、一瞬にして金属活字ができ上がる工程を緻密に制御する技術を持つ。
金属活字は主に活版印刷業者へ販売されるが、一般向けの活字製品である「活字カレンダー」や「活字ホルダー」にも使われており、事業所で一日体験会や活字鋳造・基礎コースを行うなど、活字の魅力を伝える活動にも力を入れている。
山崎さんは54歳。高校卒業後、不動産仲介業の会社員時代に、現場で壁紙を貼る仕事に興味を持つ。1996(平成8)年から約4年間の修業の後、一人親方として独立。サンユウ(港北区)で、輸入壁紙、ケイ藻土壁紙、デジタルプリント壁紙など特殊な材料の貼りにも取り組んでいる。
所属する横浜市建設労働組合連合会では近隣の小学校で親子工作教室、高校で職業体験教室を行うなど、壁紙を貼る仕事の魅力を伝える活動にも力を入れている。
認定式では「横浜マイスター称号授与証」が渡され、大松さんは「この年になってこんな素晴らしい賞をいただき感無量」と話し「今後、横浜マイスター称号を励みに、活字の魅力を後世に残していくために努力精進して参ります」と述べた。山崎さんは「お知らせを聞いたときは、気持ちが高まり頭が真っ白になってしまいました」と話し「横浜マイスターとしての誇りを持ち、後進の育成や社会活動に貢献し、自信も技術、技能をさらに磨き精進いたします」と続けた。
2人が加わり、事業開始以降、選定された横浜マイスターは総勢68人(故人18人を含む)となった。