企画展「多様性 メディアが変えたもの、メディアを変えたもの」が現在、ニュースパーク(日本新聞博物館=横浜市中区日本大通)で開催されている。
ジェンダー平等や性的少数者、障がい者、被差別部落など、多様性に関わる幅広いテーマの報道とともに、メディア自体の多様性を考える資料など約300点を展示している。
「近代日本と女性」「近代日本と格差、人権」の章では、明治から昭和前半期までの新聞の報道に焦点を当て、女性の教育・労働・生活ぶりや、民族、障がい、疾病を理由にした差別、貧困・格差の問題を当時の新聞がどう伝えてきたかを紹介している。
1887(明治20)年ごろ、女性が工場や会社で働き始めるようになった。1日18時間の労働など、織物工場での女性の劣悪な労働環境を告発する記事や、そうした状況を黙認するなら、「日本は文明国に並ぶことはできない」と主張する記事(幸徳秋水も所属した「萬朝報」)などを展示。同じ頃に登場した女性を対象にしたページも紹介し、その中には料理の献立や作り方を案内する記事「何にしよう」を載せた時事新報の紙面もある。
「メディアの中の多様性」の章では、特に1985(昭和60)年の男女雇用機会均等法の成立後、メディアの中の多様性がどのように進んできたのかに焦点を当てる。1980(昭和55年)から翌年にかけて「ベビーホテル」(無認可保育施設)の劣悪な実態と利用者の実像に迫ったTBSテレビの堂本暁子記者(当時)の取り組みやコメントを紹介し、女性として初めて警視庁記者クラブに配属された日本テレビの笹尾敬子記者(当時)のメッセージもある。
「いま、メディアが伝える『多様性』」と「次世代の『メディアと多様性』」の章では、読売新聞のスクープ記事から報道が始まった大学医学部入試での男子受験生優遇の問題を伝える紙面、共同通信社と地方紙による「都道府県別ジェンダー・ギャップ指数」作成の取り組みを紹介するほか、犯罪被害者に関する報道、被差別部落であることを明かした記者による連載記事(西日本新聞)、若手記者や若い世代を対象にした試みを取り上げている。
尾高館長は「今求められているDXのDには、デジタルのDXと、ダイバーシティー、多様性のDという2つの意味があるという指摘がある。メディアは、組織の中にも、アウトプットにも、多様性が必要だ」と話す。
開館時間は10時~16時30分(入館は16時まで)。月曜休館。入館料は大人=400円、大学生=300円、高校生=200円、中学生以下無料。8月20日まで。5月20日13時から「新聞を活用した多様性教育-京都の実践ワークショップ(京都デー in横浜)」を開催するほか、関連のシンポジウムも予定する。
※誤解を招く表現がありましたので、記事の一部を修正しました。