現存する日本最古のジャズ喫茶ちぐさ(横浜市中区野毛町2)を建て替える「ジャズミュージアム・ちぐさ」が5月29日、起工式を行った。
起工式は雨の中、テントを張り決行。約50人が集まった。野毛山キリストの教会の奈良昌人牧師が司式。式辞ののち「土地の祝福と建設開始のために」として盛られた土をスコップで順に少しずつ崩し、ワインを注いだ。
祝福と黙とうで式を結び、「ジャズ喫茶ちぐさ・吉田衛記念館」代表で「村田家」(野毛町2)を営む藤澤智晴さんがあいさつ。「ちぐさは創業90周年。歴史の重みを感じている。実は、今回起工したのは、第1期工事。2期工事、3期工事、4期工事といつまで続くかわからない。まず地下をつくります。地上は何もない状況から始まります。実は密かに、ここは野毛のサグラダ・ファミリアという風に自分たちは呼んでいます」と、地上部は壁の無い空間で始まる見込みを明かした。
乾杯の発声は、横浜市立大学の客員教授で都市デザインを担当していた国吉直行さん。「サグラダファミリアを作るという不思議な未来。作りながら育っていく建物、それはまた楽しい出来事」と藤沢さんの話を受け「これを機に資金集めもみんなで頑張ろうという場でもあるかなという認識をした」と述べ、「ジャズファンの今後の楽しい未来を祈念して」乾杯を行った。
続いて、設計の山本理顕設計工場の山本さん、施工を担当するキクシマの執行役員の溝辺強子さん、野毛の町内会を代表して野毛2丁目町内会会長の松本真純さんらがあいさつ。
式典に参加者として出席した元カップヌードルミュージアム館長でジャズミュージアム・ちぐさの館長になる筒井之隆さんは「カップヌードルミュージアムができて横浜に赴任した時はこれでちぐさに行けると喜んだ」ことを明かし「野毛らしい起工式、金はないのに起工するのも野毛らしい」と笑顔を見せていた。
ジャズ喫茶「ちぐさ」は1933(昭和8)年に、当時20歳の吉田衛さんが野毛町1丁目23番地で創業。1945(昭和20)年5月29日の横浜大空襲で店舗と約6,000枚のレコード(SP)を焼失したが、1946(昭和22)年に復員した吉田さんが千数百枚のレコードを集め、翌年再開した。
1994(平成6)年に吉田さん没後、妹の吉田孝子さんと有志の常連客数名によって営業が続けられたが、2007(平成19)年に、一度幕を閉じた。2012(平成24)年からは2丁目で、有志で営業を始め、「ジャズ喫茶ちぐさ・吉田衛記念館」を一般社団法人登記した
創業90周年にあたる2023年、新たに「ジャズミュージアム・ちぐさ」として生まれ変わる計画は2022年2月に発表、当初は博物館とライブハウスの機能を備えた鉄筋コンクリート構造の地上2階建てで、下層階に旧ジャズ喫茶ちぐさを再現し、3月完成を目指していた。
建築資材の高騰などで、建設資金の調整に苦慮し、着工、竣工がずれ込み、設計も見直した。新しい建設計画では、地下は当初計画通りで、旧ジャズ喫茶ちぐさを再現。路上階はイベントスペースとし、第2期工事でガラス屋根と2面の構造壁に囲まれたオープンエアのステージにする予定。
建設資金の寄付は、Jazz Museum CHIGUSAファンドのホームページで受け付けている。