京浜フェリーボートは現在、運河ライナー「かなもえ号」で「ピア象の鼻」から「横浜日ノ出町桟橋」を結ぶ水上交通の試験運航を行っている。
運航ルートは「ピア象の鼻」(象の鼻パーク付近)から、「ピア運河パーク」(エアキャビン運河パーク駅付近)と「ピア日本丸」(JR桜木町駅付近)を経由し、大岡川の「横浜日ノ出桟橋」(京急日ノ出町駅付近)までの往復。始発地点から終着地点までは37分間。
同社はこれまで、2012年から毎年開催されてきた「よこはま運河チャレンジ」に参加。船団パレードや食の市に加え、会場間を船で移動できる水上交通を展開する同イベントを通じ、内港地区と河川を往来する実証実験で、実績やノウハウを積み重ねてきた。
今回の試験運航は1日4往復で、象の鼻からの横浜日ノ出桟橋行きの出港時刻は10時、11時30分、14時、15時30分。復路、横浜日ノ出桟橋からの出港時刻は、10時42分、12時12分、14時42分、16時12分。
途中「ピア運河パーク」または「ピア日本丸」での乗船・下船も可能。乗船は無料で予約不要だが、アンケートへの協力が必要。
試験運航期間は1月15日から24日までの10日間。初日は46人が乗船、5段階の満足度調査では乗船客の約8割が最もよい評価をつけた。居住地は、約半数が横浜市内在住者で、県外からが4割ほどだった。2日目は強風のため運休だった。
東京から観光で来た乗船客は「ディズニーシーのような楽しさがありながら、自分の時間がゆったり流れている感覚もある」と話し、磯子区から来た親子は「子どもにとってはオープンエアなのがよい」と感想を述べ、SUPで大岡川をよく渡っているという女性は「SUPのスピード感と、かなもえ号で優雅な風の感じはどちらもあるべき」と笑顔を見せた。
試験運航の後は、今年の春からの定期運航を目指す。京浜フェリーボートの佐藤和徳社長は「川の桟橋と海の桟橋を結ぶ『川を使った水上の定期航路』は横浜では初の試み」と話し、「濱橋会などと共に、地元で官民一体で長年取り組んできた『よこはま運河チャレンジ』から生まれた成果」と振り返る。「桟橋を駅と考えると、交通の選択肢が増える。川からは普段見られない景色が楽しめる。夜景時間帯は魅力が一層増す」とも。
吉田新田のまちづくりに取り組むNPO法人「HamaBridge 濱橋会」(中区石川町1)理事長の大島重信さんは「地域だけではなく、水運事業者と共に水上交通を活性化したい。ずっと一緒にやってきた佐藤社長の決断に、感謝の気持ち」という。横浜市都市整備局都心再生化担当課長の遠藤信義さんは「本格的な定期航路の第一号となることを期待」と話す。
発着場のうち「ピア象の鼻」「ピア運河パーク」「ピア日本丸」は京浜フェリーボートの自社桟橋。横浜日ノ出桟橋は公共桟橋で、2025年には石川町に新たな公共桟橋も完成予定。