東日本大震災から半年がたち、被災地の避難所はほとんど閉鎖され、仮設住宅での被災者支援に焦点は切り替わってきた。発生直後から、個と個のニーズのマッチングを図り、被災地へ物資やボランティアを結びつけるさまざまなインターネットのサービスが立ち上がり、大きな成果を挙げている。
被災者に支援物資を送る事を目的としたサイト「Toksy」もその一つだ。サイトを運営するのは、横浜のIT企業「オンザボード」(横浜市神奈川区鶴屋町2)。現在までに2万6000件以上(9月11日現在)の物資の出品があり、9割の取引が成立している。登録人数も7500人以上と物資支援サイトの中ではトップクラス。
オンザボードは、ソーシャルウェブサービスなどのシステムを開発する会社で、設立は今年2月8日。「Toksy」を始めたきっかけは、社内の技術者から、大震災に対してIT技術を生かして何かできないかという声があがったこと。震災後に、物資調達・寄付サイトなどが数多く立ち上がったが、必要なセキュリティ対策が十分でないサイトが多いことに問題を感じ、支援する人される人の個人情報を守りながら、必要なものが必要な人に届く、お互いの「顔が見える」物資支援サイトの構築を目指したという。
「Toksy」では、被災者が必要なものをリクエストし、支援希望者は自らが提供できる品物を写真付きで掲出する。情報交換をして需要と供給がマッチすると確認できた段階で、出品者は被災者宛てに支援物資を送るという仕組み。
同社代表の和田憲治さんは、送料が物資提供者の負担になるため、当初は「お金を払ってまで被災地に物資を送る人などいるだろうか」と懸念していたという。だが、利用者数・成約数が急激に上昇していく状況に「こんなに人のために何かしたい人がいるのか」と感動したという。
和田さんは「『Toksy』を使って物資を調達した被災地のユーザー調査のため、青森・岩手・宮城・福島の利用者を訪ね、そこで受けた感謝の言葉と現地と顔の見えるつながりができたことが、活動の原動力になった。すぐ利益には結びつかないが、世の中に役に立つことをしながら、出会ったことがない考え方の人たちとのネットワークを広げる経験ができたことは、今後の事業にも生きていくはず」と話す。
また、「今後の継続的な被災地支援のためには、支援に取り組む団体や企業の連携が不可欠。技術やシステムを、必要とする団体や企業へ提供していきたい。被災地訪問では、本当に物資支援を必要としている高齢層は、パソコンや携帯電話を使いこなしていない人が多いことを肌で感じた。今後、ITを使えない人たちに、どのように物資を届けていくことができるのか考え、アクションに移していきたい」とも。
今月の台風12号の被害状況を踏まえ和田さんは「さまざまな災害被災地への物資支援の仕組みとして『Toksy』を育てていきたい」と今後の展望を語った。