ヨコハマ映画祭実行委員会は、映画ファンが主催する映画祭として知られる「第33回ヨコハマ映画祭」の開催に先駆け、2011年度の日本映画ベストテンと個人賞を発表した。
グランプリは阪本順治監督の「大鹿村騒動記」。長野県の大鹿村で300年以上受け継がれてきた実在の村歌舞伎を背景に、人間味あふれる群像劇を描いた映画。作品賞のほか、同映画に大きく関わった俳優の故・原田芳雄さんに、これまでの功績も含め、ヨコハマ映画祭最優秀男優賞が贈られる。2位は園子温監督の「冷たい熱帯魚」、3位は成島出監督の「八日目の蝉」。
以下、4位「恋の罪」(園子温監督)、5位「一枚のハガキ」(新藤兼人監督)、6位「アントキノイノチ」(瀬々敬久監督)、7位「モテキ」(大根仁監督)、8位「婚前特急」(前田弘二監督)、9位「エンディングノート」(砂田麻美監督)、10位「まほろ駅前多田便利軒」(大森立嗣監督)と「その街のこども 劇場版」(井上剛監督)と続く。
「冷たい熱帯魚」が、監督賞と助演男優賞(でんでんさん)、助演女優賞(神楽坂恵さん、黒沢あすかさん)の4冠を獲得し、園監督と神楽坂さんは夫婦での受賞。また、「婚前特急」は、新人監督賞、主演女優賞(吉高由里子さん)、最優秀新人賞(浜野謙太さん)の3部門を制覇した。主演男優賞は、「まほろ駅前多田便利軒」の瑛太さん。
最優秀新人賞に輝いたのは、松坂桃李さん(「僕たちは世界を変えることができない。But,we wanna build a school in Cambodia.」「アントキノイノチ」)と杉野希妃さん(「歓待」)、浜野謙太さん(「婚前特急」)。
今年の各賞は映画評論家、ジャーナリストら36人の投票で決まった。
表彰式と上映会は、来年2月5日に関内ホール(横浜市中区住吉町4)で開催される。当日は「大鹿村騒動記」「婚前特急」「冷たい熱帯魚」の3作品を上映するほか、各賞受賞者やゲストを招いた表彰式、最新作予告編上映を開催。入場料は前売2,700円、当日3,000円。詳細は同映画祭ホームページで。
ヨコハマ映画祭実行委員会の北見秋満さんは「選考の過程で見えてきたのは、秀作群の多くが震災前に作られたものであるにもかかわらず、震災後の人々のこころが絆の再構築や思いやり助け合うことの尊さに向かっていることを先取りするかのような、予感に満ちていたということです。映画『大鹿村騒動記』と原田芳雄さんの、かくある表現その姿がすべてを物語ってくれています」と話している。
今年で33回目を迎える同映画祭は、自治体やスポンサーからの支援を受けず、会社員や学生など日本映画ファンがボランティアで主催する映画祭。審査員を務めるのは映画評論家や映画ライターなどの映画関係者と一般映画ファンで、映画人と映画ファンの出会いの場となっている。今年2月に行われた「第32回ヨコハマ映画祭」には、主演男優賞を受賞した豊川悦司さん、主演女優賞の満島ひかりさんら約35人の映画人と1,100人の映画ファンが訪れた。