多くのジャズファンに惜しまれながら閉店した野毛の老舗ジャズ喫茶「ちぐさ」(横浜市中区野毛町2)が3月11日、場所を移して新装オープンした。
同店は、多くのジャズプレーヤーやファンに惜しまれながら2007年、73年の歴史に幕を下ろしたが、同店の元常連やジャズ関係者、地元飲食店らが協力し、営業再開が実現した。復活のきっかけは、一昨年前に野毛Hana*Hanaで開催された「ちぐさアーカイブ プロジェクト」。2週間ほどの開催だったが、同プロジェクトで「ちぐさ」を復元したことで、関係者の思いが強められたという。
新店舗は2階建て。かつての常連客らが、店から受け継いで保管していた名盤のジャズレコード約3,000枚や家具を持ち寄り、店内を忠実に再現した。1階は喫茶店で、2階は当時の貴重な資料を展示するギャラリーとなる。店舗面積は約31平方メートル、15席。
メニューは、コーヒー(500円)や東日本被災地産品として提供する「石巻カレー」(800円)など。岩手県陸前高田市のジャズ喫茶「h.イマジン」も、同日大船渡市に場所を移して再開しており、「h.イマジン」と「ちぐさ」の記念ラベルを貼ったお土産用のコーヒー(800円)も販売する。
店を運営する元常連による団体「ちぐさ会」会長の遊佐正孝さんは「まず、いらしてください。そして、あの圧倒的な音に浸ってください」と話す。
営業時間は11時~22時。月曜定休。
「ちぐさ」は、マスターの故・吉田衛さんが1933年に開店した日本最古と言われるジャズ喫茶。横浜大空襲で焼失後、1948年に再び開店。当時貴重な輸入ジャズレコードを聴かせる店としてにぎわい、渡辺貞夫さん、穐吉敏子さん、日野皓正さんらのジャズミュージシャンたちが通った店としても知られている。 1994年に吉田さんが亡くなり、常連客などが営業を続けたが、2007年1月31日に閉店した。
同店の開店にあたっては、横浜市が商店街の空き店舗で、震災復興支援に貢献する店舗を始める事業者に、開業経費の一部を補助する「震災復興支援商店街空き店舗活用事業」の支援を受けている。