横浜から新たな映画作りを発信する「幻野映画プロジェクト」(福寿祁久雄代表)が企画した「女生徒・1936」(福間雄三監督・脚本)が、「シネマ ジャック&ベティ」(横浜市中区若葉町3)で公開されている。
女性の語りで書かれた名作文学を映画化した「女生徒・1936」
太宰の短編・4作品のヒロインを、ひとつのイメージにした異色の作品は、東日本大震災を境にこれまでの価値観の問い直しを迫られる現在と、開戦から敗戦へと激しく社会が動いた作品の舞台となった時代を重ね合わせ「1人であることの強さと美しさ」を描く内容となっている。6月23日、29日には福間監督の舞台挨拶も予定されている。
「女生徒・1936」は、太宰治が「女性の一人称」というスタイルで書いた「灯籠」「女生徒」「きりぎりす」「待つ」の4つの短編をモチーフに、福間さんが脚本化した。4編はいずれも、戦火が激しくなった1937年から1941年までに執筆されている。出演は、柴田美帆さん、川原崎未奈さん、真砂豪さんほか。
10代から太宰の小説が好きだったという福間さん。今回、太宰作品を取り上げたことについて「国民が、戦争になだれを打って向かっていった当時の世相は、3.11以降の日本にも通じる状況。軍国主義の時代、太宰が女性の1人称で小説を書き続けたのは、個人の表現の自由を明け渡したくないという彼の意思だったと思う。孤独の中、たった1人でも凜(りん)と生きていこうとする強さや美しさを、ヒロインから感じてもらいたい」と話す。
この映画は、福間さんと、かつて横浜日劇などで50年以上支配人を務めた福寿さんが運営する「幻野映画プロジェクト」が企画した。同プロジェクトでは、デジタル映像技術の発展と機材のコストダウンによって「もっと自由に身軽に地域で映画をつくる」というコンセプトで映画を企画し、2009年7月に映画『私の青空・終戦63』を制作。今回の「女生徒」は、同プロジェクト初の長編映画となっている。
6月23日12時30分の回上映後に福間監督、福寿さんが舞台挨拶。29日には15時の回上映後、福間監督と映画でリコーダー演奏などの音楽を担当した高野浩一さんが舞台挨拶を行う。公開は7月12日まで。