横浜市内一帯で10月12日と13日の2日間、日本最大級のジャズ・フェスティバル「横濱ジャズプロムナード2013」が開催され、街全体がジャズの音色に染まった。

立ち見の観客でにぎわう老舗ジャズ喫茶「ちぐさ」（13日）

　21回目を迎えた今年は、プロ・アマ総勢2,910人のミュージシャンが参加し、ホールライブや街角ライブ、ジャズクラブライブの全51会場で計377のステージを繰り広げた。運営は約400人の市民ボランティアが支えた。来場者は過去最多となる14万6,000人（12日＝68,000人、13日＝78,000人）を記録。

　2日間とも秋晴れに恵まれ、各会場には開場前から多くの観客が来場し、初出演のテレビタレント・ジャズ評論家の大橋巨泉さんのステージ「大橋巨泉（vo）、豊田チカ（vo）with 椎名豊（p）トリオ＋三木俊雄（ts）」（関内ホール）をはじめ、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館などのホール会場で満席や立ち見が続出。横浜みなとみらいホールでは、カナダ、オランダ、フィンランド、ルクセンブルクのミュージシャンがインターナショナルなステージを披露し、例年以上のにぎわいをみせた。

　街角ライブのクイーンズサークル会場では13日、宮城県石巻市に拠点を置く石巻ジュニアジャズオーケストラ「スウィング リバティ パイレーツ」の招待公演を実施。700人以上の観客が見守る中、20人のメンバーがイン・ザ・ムード、セントルイス・ブルースなど、スウィングからバラード曲までアンコールを含む6曲を演奏した。

　石巻ジュニアジャズオーケストラは、宮城県石巻市、東松島市、女川町に居住または通学する小学5年生から高校3年生までのメンバーで構成されるアマチュアジャズオーケストラ。震災復興に直面する石巻地域の人々を勇気づけようと、昨年6月に結成された。現在のメンバーは25人（9月末時点）。地元のジャズ愛好家のもと、石巻中央公民館で毎週土曜、3時間の練習を重ねている。オーケストラ結成後、わずか1年足らずで40分のステージが組めるほどに成長し、将来の夢にジャズプレーヤーを掲げる小学5年生（女子）もいる。

　同オーケストラ事務長の石垣敦さんは「演奏を通して、子どもたちの元気の中から、全国からのご支援に対する感謝と、『宮城に遊びにきてください』という気持ちが伝われば幸い。今後は、音楽を通して同世代の子どもたちが交流できる場が必要だと感じている。ぜひ各地のジュニアジャズの団体に石巻に来てほしい」と語る。

　また、ゲストプレーヤーとしてセッションに参加したピアニストの榊原光裕さんは「子どもたちが辛い経験を抱えながらも、それを感じさせないほど、本当に明るく音楽に打ち込んでいる姿があり、一緒にプレイできて幸せ」と振り返った。

　23年の歴史をもつ「定禅寺ストリートジャズフェスティバル in 仙台」の発起人で、自身の音楽活動の傍ら、みやぎ音楽支援ネットワーク代表を務め、被災地の音楽支援に尽力している榊原さんは、「みやぎ音楽支援ネットワークは、被災地の復興を『音楽の力』で支えるネットワーク。楽器の支援、子どもの音楽環境の整備、音楽教室の企画開催、チャリティーコンサートなどを行っている。今後も、日々変化する被災地それぞれの環境に応じた支援活動を模索するとともに、全国との情報交換やネットワークを通して被災地の現状を伝え、新しい町づくりを音楽を通して考えていきたい」と話している。

　今回の石巻ジュニアジャズオーケストラの招待公演を企画した「復興支援音楽の会」は、被災地の音楽環境の復興を目的に、横浜ジャズ協会、横濱ジャズプロムナードの有志が中心となり2011年5月設立。チャリティーコンサート「ヨコハマから届けよう JAZZの元気」（NHK横浜放送局）を5月に開催し、その寄付金などを活用して今回の公演が実現した。同チャリティーコンサートは2011年から毎年行われており、集まった寄付金は、約70万円（2011年）、約30万円（2012年）、約15万円（2013年）。同会は被災地における音楽環境の実情を踏まえ、継続的な支援の必要性を呼びかけている。

　横濱ジャズプロムナードは、「街全体をステージに！」を合言葉に、1993年に市民とミュージシャンが一体となりスタートしたジャズイベント。日本のジャズのふるさとである横浜が、日本各地へジャズ文化を根付かせ、若いミュージシャンの才能を育み、新しいジャズの潮流を世界へ発信し交流することを願い開催されている。