シネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区若葉町3)で12月7日から、映画「ハーメルン」が公開される。
映画「ハーメルン」は、福島県会津地方を舞台に、移り変わる日々のなか、無くなっていく「場所」と「記憶」の本質を優しい視線で描いた物語。監督は、作品「美式天然(うつくしきてんねん)」(2005年)で、第23回トリノ国際映画祭で史上初のグランプリと最優秀観客賞のダブル受賞を果たした北海道出身の坪川拓史監督。
映画化にあたり、監督自らが全国の小学校を探し歩き、1980年に閉鎖され、廃校が決まっていた福島県大沼郡昭和村の旧喰丸小学校に出会ったという。映画製作に向けて、村長をはじめとする村の人々の理解と協力を得て、撮影終了までの校舎保存が決定。映画「ハーメルン」は、2009年夏の撮影スタート後、異常気象の影響や東日本大震災の発生など紆余曲折(うよきょくせつ)を経て、舞台構想から7年、撮影期間2年半を費やして完成した。ユーロスペース(東京都渋谷区)を皮切りに全国で順次公開されている。
劇中では、廃校となった学校で一人静かに暮らす年老いた元校長と、過疎が進むその村に暮らす人々の記憶を繊細に描く。作品の舞台は、福島県の奥会津に位置し、日本の原風景とも言われる美しい山村「昭和村」。昭和村はからむし織の原料となる宿根草の植物・苧麻(からむし)を本州で唯一生産する「からむし織の里」としても知られている。
キャストは、主演の西島秀俊さんと倍賞千恵子さん。坂本長利さん、守田比呂也さん、水橋研二さん、内田春菊さん、小松政夫さん、風見章子さん。監督・脚本・編集は坪川さん。配給はメディア・コンテンツやクリエイティブをプロデュースする「トリクスタ」(中区山下町1)。
同映画のプロデューサーを務めるのは、トリクスタ代表の筒井龍平さん。筒井さんは馬車道の東京藝術大学大学院映像研究科(中区本町4)の一期生で、在学中の2006年12月にトリクスタを創業し、2007年に同大学院を卒業。同大学院映像研究科映画専攻のプロデューサー領域の1期生として、卒業後7年目に初めて念願の劇場公開にこぎ着けた。
12月8日は、11時50分の回の上映後に、筒井さんと共同プロデューサーのひとり、白水聡一郎さんをゲストに迎えた舞台あいさつを実施する。
筒井さんは「ハーメルンは、1場面1場面が絵画のように美しく、ゆったりと流れる時間の中に紡がれる人々の記憶の物語。8日の舞台あいさつでは、横浜でのがいせん上映を実現した経緯や苦労を邦画界、特にインディペンデントの置かれた現状と共に、ここでしか聞けない裏話なども交えてお話しできれば」と話している。
チケットは前売券=1,400円、当日券=一般1,800円・大専1,500円・高校生以下/シニア1,000円。問い合わせはシネマ・ジャック&ベティ(TEL 045-243-9800)。12月20日まで。