神奈川近代文学館(横浜市中区山手町110)で、「生誕105年 太宰治展 - 語りかける言葉 -」が開催されている。
太宰治(1909年~1948年)は青森県出身の小説家。作品集「晩年」の諸作で文壇に登場し、語りの名品「女生徒」「駈込み訴へ」を経て、戦後、「斜陽」「人間失格」を世に問いながら39年の短い生涯を閉じた。
同展では、日本近代文学館に昨年新たに収蔵された旧制中学・高校時代のノートのほか、近年発見された全集未収の資料など各地の文学館、個人が所蔵する多彩な資料を通して、今もなお多くの人々に読み継がれている太宰作品の魅力とその人物像に迫る。
展示作品は、パピナール中毒のなか芥川賞受賞の確信を伝える「小館善四郎あて書簡」(1936年8月7日消印)、弘前高校時代のノートから(同人誌「細胞文芸」表紙案)、自画像(1947年頃、油彩)、「人間失格」原稿(1948年6~8月号に連載)など。代表作の自筆原稿の一部は、妻の美知子が太宰の死後、愛用の着物の布地を使って表装し大切に保管していたという。
関連イベントとして、俳優の平田満さんによる作品「ヴィヨンの妻」の記念朗読会(5月11日)、記念トークイベント「太宰さん、あなたは何を待っていたのか」(5月18日)、記念講座「戦時下の太宰 - 浪曼的完成への道」(5月24日)が行われる。
そのほか、太宰が登場するコミック「文豪ストレイドッグス」の複製原画やパネル展示、太宰の肉筆原稿から受けた衝撃をもとに若手アーティストが制作したオブジェ作品の展示、太宰の言葉が出てくる「カプセル缶バッジ」(1回100円)の販売も。
神奈川近代文学館の半田典子さんは「『人間失格』『斜陽』など、代表作の自筆原稿からは作品にかけた太宰の気迫が伝わってくると思う。また、背が高く当時の既製服が合わず和服を着用していた太宰が晩年に愛用していたマントも展示する。今回の『文豪ストレイドッグス』とのコラボ企画は、コミック読者を文学の世界へ近づける、文学館としては初の試み」と話している。
会場は神奈川近代文学館・展示室。開館時間は9時30分~17時(入館は16時30分まで)。月曜休館。観覧料は一般=700円、65歳以上/20歳未満・学生=300円、高校生=100円、中学生以下は入場無料。5月25日まで。