「ファブラボ関内」(横浜市中区相生町3)のメンバーが6月28日、東京都多摩市立愛和小学校で特別授業を実施した。
ファブラボとは、3次元(3D)プリンターやレーザー加工機といったデジタル工作機械をそなえ、市民に開放された実験工房と、その世界的なネットワークのこと。2014年7月現在、日本国内にはファブラボ関内のほかに、仙台・つくば・鎌倉・渋谷・北加賀屋・鳥取・大分・佐賀の8つのファブラボがあり、世界では世界50カ国250都市以上にあると言われている。
愛和小学校は、デジタル機器を活用した情報コミュニケーション技術(ICT)教育に積極的な学校で、2013年10月から、全校児童ひとり一人にiPadを貸与し、授業に活用している。今回の特別授業は、同校の松田孝校長から「3Dプリンターを活用した図工の授業を行いたい」という要望があり、実現した。
3Dプリンターの授業は、3年生向けに行われた。ファブラボ関内ディレクターの増田恒夫さんから「プラスチックを重ねて層を作ることで、かたちを作っていきます」と、3Dプリンターの仕組みを説明した後、児童たちは専用アプリで、思い思いに「デジタルハンコ」をデザインしていった。指で描いた自分の名字が、そのままハンコの立体データになる仕組みだ。データはサーバー上に保存され、後日3D出力されて、児童たちの手に渡る。
今回の特別授業で同校では「iPadの日常化による新しい教育Styleの創造-iPad最後の挑戦」をテーマに、1~6年生の各授業が公開された。3Dプリンターの授業以外にも、レゴブロックを使った物語の創作や、実際にロボットを動かす算数など、ICTを駆使した多様な授業が行われた。
愛和小学校のこうした取組は、iPadを使った授業・プログラムを先駆的に開発したイギリスの「フリッチ・グリーン・アカデミー」を参考にしている。松田校長は、今後もデジタルなものづくりやデザインに関する授業を積極的に取り入れていく考えだ。
ファブラボ関内の会員で「デジタルハンコ作成アプリ」を提供した事務機器大手のリコーの井内育生さんは「初めての試みだったが、子どもたちが楽しんでくれてよかった。『創造性』という、計測しにくい能力をどう高めていくか、先生のフィードバックをもらって考えていきたい」と話している。