横浜在住の映画監督・利重剛さんが、ふるさと・横浜の街を舞台に、市井の人々の人生に展開するかけがえのない一瞬を切り取った短編映画シリーズ「Life works」が完成し、10月11日、4作品がイオンシネマ みなとみらい(横浜市中区新港2)で開催中の「横浜みなと映画祭」で初上映された。
「Life works」を製作した利重剛監督(右)とプロデューサーの中村高寛さん
「Life works」は、5分から15分程度の連作ショートフィルムだ。2014年6月から製作が始まった。港や海にとどまらず、里山や畑、歓楽街・簡易宿泊所(ドヤ)街から高級住宅地やニュータウンまで、一つの都市の中に、バラエティーに富む風景と「まちの文化」が息づく「横浜」。この大都市を一つの舞台に見立て、そこで住み暮らす人の言葉・記憶・感情を切り取り、映像に焼き付けるプロジェクトでもある。
また、このショートフィルムの上映方法もユニークだ。「『映画のまち・横浜』を復活させたい」というねらいもあって、映画館に足を運ばないと見られない。かつての「ニュース映画」のように、本上映する映画の前に「オマケ」として無料上映し、毎月、新作に替えていく。
試写会で上映された4作品のうち、3作品は中華街のジャズバー、日本大通り、みなとみらい21地区などいわゆる「横浜らしい」とされる場所でロケをしているが、1作品は横浜市郊外・泉区の団地「ドリームハイツ」で撮影。利重さんは50本、100本と撮影を続けるなかで市内各地でロケ撮影を行い、ウェブ上の地図にマッピングして「横浜市の財産にしたい」と意気込む。
スタッフにも横浜ゆかりのクリエイターがそろう。プロデュースを担当した「ヨコハマ・メリー」(2006年公開)監督の中村高寛さん、利重作品「さよならドビュッシー」(2013年)で準主演を務めたピアニストの清塚信也さんが3作品で音楽を担当するなど気心の知れたメンバーで脇を固めている。
また、利重さんが俳優に演技を指導するために設けている「Life works studio(ライフワークス スタジオ)」(中区山下町217)で練り上げられたシーンも、作品に使われている。
舞台挨拶に立った利重さんは「横浜というまちには、多種多様な人たちが住んでいて、どんなドラマでも撮影しようと思えば撮れる。ぼくが映画を作るときのテーマは一貫していて『さまざまな人がさまざまな思いを抱えて生きている。そして自分の人生を生きることについては、だれもが主役だ』ということ。Life worksでは、そうした人たちの人生が交錯することによって気持ちが救われたり、心が動いたりする一瞬を伝えていきたい」と話していた。
「Life works」は2015年早々、シネマジャック&ベティ(中区若葉町3)、横浜シネマリン(中区長者町6)で無料上映がスタートする予定。