6月24日、日産自動車のカルロス・ゴーン社長と中田宏横浜市長は共同記者会見を行い、みなとみらい21地区66街区に日産自動車の世界本社ビルを建設し、2010年に銀座から本社機能を移転することを発表した。新社屋には大規模ショールームや本社機能を持つオフィス、日産の歴史を展示する博物館などの施設が建設される予定。日産は1968年に銀座に移って以来、36年ぶりに創業の地である横浜市へ回帰することになった。現在の銀座本社の従業員は約3,000人。浜銀総合研究所の試算によると、日産移転に伴う県内への経済波及効果は少なく見積もっても約620億円になるという。移転を決めた背景には、横浜市のMM21地区進出企業への固定資産税や都市計画税を5年間半減するなどの優遇措置により費用が約100億円以上抑えられることがある。ゴーン社長はグローバル企業として創業の地・横浜をアイデンティティーと位置づけている考えを述べるとともに、東京と比較した横浜の先進性、柔軟性を高く評価した。新高島地区は横浜駅東口から徒歩数分という好立地。横浜市は同ビルを横浜駅からMM21地区への新たな玄関口と位置づけ、日産が新本社建設に着工する2007年度までに横浜駅東口とビルを結ぶ歩行者専用立体通路「横浜駅東口ペデストリアンデッキ」を19億円かけて整備する予定だ。
この日産本社の誘致が転機となり新高島地区への企業誘致が加速、開発事業予定者が続々と決定。8月にはセガが55・56街区の事業予定者に決定、大型複合エンターテイメント施設を建設する予定だ。67街区には家電量販店最大手のヤマダ電機が進出する計画も発表されている。また、11月には横浜マリノス(日産自動車関連会社)が61街区への本社移転を発表、2006年までにトレーニングセンターやクラブハウス、グラウンド4面などの施設を建設する。また、横浜市は12月に日本サッカー協会から「モデル的スポーツ環境整備助成金」の内定を受けたことを発表、横浜マリノス本社建設予定地の隣、60街区にサッカーを中心としたフィールド系スポーツの拠点「横浜みなとみらいスポーツパーク(仮称)」を整備する。助成金交付額は1億2600万円で、2006年までに人工芝グラウンドやクラブハウスなどを建設する予定。さらに11月にはエンターテイメント複合施設「GENTO YOKOHAMA」もオープンし、早くも横浜の新たなエンタメスポットとして注目を集めている。新高島地区は今後、ビジネス、エンターテイメント、スポーツの新たな拠点としての発展が期待される。
日産移転で加速する新開発エリア 「新高島地区」の未来予想図2月1日、横浜と元町・中華街間の臨海部4.1キロを7分で結ぶ横浜の地下鉄新線「みなとみらい線」が開業。東急東横線との相互直通運転により、渋谷と元町・中華街間が最短35分で結ばれた。同線開通に向けて新設された駅は「新高島」「みなとみらい」「馬車道」「日本大通り」「元町・中華街」。駅のデザインは、1992年に設けたデザイン委員会が各駅毎に選定した別々の建築設計事務所が手掛けたもので、構想から完成まで10年以上の歳月が費やされた。駅をその地区を代表する地域財産として位置付け、個性的な構造とし、駅周辺の施設などとの一体化やオープンスペースの音楽演奏などへの有効活用に取り組んでいることなどが評価され、今年、みなとみらい線は「グッドデザイン賞」(建築・環境デザイン部門)、「鉄道建築協会賞」、「日本鉄道賞」の3つの賞を受賞した。横浜高速鉄道の発表では、平成16年度上半期の平均利用人員は1日あたり12.3万人と、当初の計画(13.7万人/日)に対し約90%の水準となった。また、横浜市都市計画局が6月に実施したMM地区・関内地区の歩行者流動調査によると、元町・中華街駅付近で開通前と比べて通行量が2.7倍という増加を記録した地区もあったが、JR桜木町駅付近や野毛では2割から3割減となり、開通により明暗を分けた形となった。観光客が多かったこともあり上半期は4億円あまりの黒字を計上したものの、借入金の利息支払い後の経常ベースでは9億円以上の赤字。債務償還を早めるには、さらなる利用客の掘り起こしが必要なようだ。 9月には、東京メトロの建設線となる地下鉄13号線との相互直通協議会が発足した。協議会メンバーは東京メトロ、東武鉄道、西武鉄道、東京急行電鉄と横浜高速鉄道の5社で、渋谷と池袋を経由して埼玉まで伸びていく相互運転の開始に向けて、基本事項等を具体的に協議していく。
みなとみらい線開通で元町・中華街と直結。エリア間競争に新たなライバル出現!(シブヤ経済新聞)横浜市は4月に「文化芸術都市創造事業本部」を発足。同事業本部は、文化芸術の力で横浜を活性化させる「クリエイティブシティ・ヨコハマ構想」の実現を目指す戦略プロジェクトチーム。まちづくりや経済の活性化という視点から文化芸術の役割をとらえ直し、横浜の新たな都市戦略として、その推進に取り組んでいる。そんな中、東京芸術大学が、大学院「映像研究科」を、2005年4月に馬車道にある昭和4年建造の旧富士銀行横浜支店に新設することを発表。12月2日に映像研究科の教授や募集要項などが公開された。2005年度に「映画専攻」、2006年度に「アニメーション専攻」、2007年度に「メディア映像専攻」と3つの専攻を設置し、一流講師による少人数、実践型の教育をおこなう計画。「国際的に流通しうる物語を基礎とした映像作品を創造するクリエーター、及び高度な専門知識と芸術性を併せもつ映画制作技術者を育成すること」を目的とする「映像研究科」の専任教員には、北野武氏や黒沢清氏など、映画製作の第一線で活躍する8名が名を連ねた。映像文化都市構想を推進する横浜市が、東京美術学校(東京芸大の前身)創始者の岡倉天心の生誕地でもある「横浜」のさまざまな優位性を大学側にアピール、誘致が決まったということだ。これにより2004年2月より、横浜市による都心部歴史的建築物文化芸術活用実験事業の拠点として旧富士銀行を使用していた「BankART1929馬車道」は、海岸通り旧日本郵船倉庫に移転し、2005年1月より「BankART Studio NYK」として活動を継続することとなった。
ヨコハマは世界のアートの発信地になれるか?アーティスト支援実験プロジェクトの全容 北野武氏、東京芸術大学大学院映像研究科教授に 東京芸大映像学科の新設について 「BankART Studio NYK」みなとみらい21地区53街区(西区高島1)に複合娯楽施設「GENTO YOKOHAMA(ゲントヨコハマ)」が、11月25日全面オープン。シネマコンプレックス・アミューズメント棟には11のスクリーン、2200席の大型シネコン 『109シネマズMM横浜』、横浜発祥の「もののはじめ」をテーマにタイトーが運営するアミューズメント施設『横濱はじめて物語』とショップ&レストランが入居。テイクアンドギヴ・ニーズがハウスウェディング『ベイサイド迎賓館・ベイサイドガーデンクラブ』を、TBSが横浜最大のライブハウス『横浜ブリッツ』を運営する。新高島駅からすぐの1万4200平米の事業用地は、東急不動産と三菱地所が、横浜市・同市土地開発公社から10年間の期限つきで賃借。総事業費は約37億円で、年間250万人の来場を見込んでいる。名称の「GENTO(ゲント)」とは「GENKI(元気)なENTERTAINMENT(エンターテイメント)のOASIS(オアシス)」からなる造語だ。横浜ブリッツのこけら落とし公演はミッキー吉野氏プロデュースの「横浜 BACKBAYBLUES SESSIONS 2004」で、ジョー山中氏、エディー藩氏ら横浜馴染みのミュージシャンが出演した。ホール1階壁面に導入された、横浜ブリッツ独自企画の36台の「サラウンド・スピーカーシステム」も一聴の価値がある。
新高島に出現したエンターテイメント拠点 複合施設「GENTO YOKOHAMA」の全貌 複合娯楽施設「GENTO YOKOHAMA」オープンデジタル作品のコンテスト「第3回デジコンフェスタ横浜」が12月3日から3日間情報文化センターで開催された。今年から「ヨコハマをテーマにした作品」が応募条件となり、下は小学生から上はリタイア後にデジタル技術を学んだ73才まで、幅広い年齢の多様なクリエイターが参加。今年のデジコンは、コンテストだけでなく、デジドルによるトークイベントや、最先端のプリクラやネイルプリントのサービスなど、若手クリエイターだけでなく、学生や一般の社会人にも楽しんでもらえる体験的要素を多数取り込んだ「参加型ITイベント」として生まれ変わった。公募は、動画部門・ホームページ部門・静止画部門の3部門と、今年から新たに「ジュニア部門」を加えた4部門。過去2回を上回る数の応募作品の中から、横浜をイメージして創られた24のデジタル作品が一次審査を通過した。特別審査員には中田宏横浜市長のほか、ハイパーメディアクリエイターの高城剛氏が参加。グランプリは山本聡氏(62)の作品に決定。ジュニア部門でもクオリティの高い作品が選出されるなど、内外から注目されるコンテストとなった。民間組織と自治体の協働で制作・運営するコンテストとして2001年に始まった同コンテストについて実行委員長のヒラヤマユウジ氏は「若手クリエイターの人材育成や、IT・クリエイティブ関連産業企業の連携促進などを目指すさまざまな団体と連携し、来年さらに進化させていきたい」と語った。
ヨコハマから新たなクリエイターを発掘! 参加型ITイベント「デジコンフェスタ横浜」国際交流基金、横浜市、NHK、朝日新聞社からなる横浜トリエンナーレ組織委員会は12月13日、2005年9月から12月まで、山下ふ頭第3、4号公共上屋ほかで開催される国際現代美術展「横浜トリエンナーレ2005」のディレクター、磯崎新氏(73)の辞任表明を受けて、後任に現代美術家の川俣正氏(51)が就任すると発表。7月にディレクターに就任したばかりの磯崎氏は、開催時期や予算措置などで主催者側と対立し、期間延期や代替案を提示したが合意が得られなかった。東京芸大の美術学部先端芸術表現科の教授でもある後任の川俣氏は「現代美術家として作品出品するのでなく、国際展の企画運営を任されたことに戸惑いもあるが、 様々な国際展に参加した経験を生かし、今までにどこにもなかった国際展として横浜トリエンナーレを組み立てていきたいと思う。」と就任のメッセージを表明した。また、市民や地域によるトリエンナーレの応援団づくりを目的とする「作戦会議」や、市民と横浜市芸術文化振興財団との共催でおこなう応援事業の公募・実施も行われた。
ヨコハマ発、現代アートの祭典 動き始めた「横浜トリエンナーレ2005」 横浜トリエンナーレ作戦会議2003年に結成されたハマカレー制作委員会の主催による、ハマカレープロジェクト2004「横濱カレーシティ・ムーブメント」が横浜観光プロモーションフォーラム事業にも認定され活動を本格化。スタートアップイベントとして7月には同委員会名誉会長である中田宏市長や作家の山崎洋子氏、地元商店会長らがランチミーティングを行った。カレーランチミーティングを頻繁に行っている中田市長は「年間50食以上のカレーを食べている実績を認め、名誉会長とはいわず、実質的な委員をやらせて欲しい」と意欲を披露。また、日本のカレー発祥地として、カレーで横浜を活性化する正当性について力強く語った。プロジェクトの第1事業である横浜カレーの名店「ハマカレー」発掘事業では発掘した100店を紹介する「ハマカレーMAP2004」を作成。マップは12月1日から横浜市内の観光案内所や横濱カレーミュージアムで配布されている。第2事業は『横浜ご当地カレー「ハマカレー」創作事業』で、横濱元町「霧笛楼」の今平茂総料理長を創作料理人とし、料理研究家、スパイス専門家などによるスペシャルチームで、オリジナルの「横浜フランスカレー」を創作した。
ハマカレープロジェクト 横浜市中田市長との「カレーランチミーティング」参加者公募 横濱カレーミュージアム ハマカレーマップ2004「公共」を税金のみで担うことが困難な都市経営の台所事情を背景に、全国的に「協働」という新しい時代のキーワードに注目が集まってきた。横浜市は、市民の意欲や発想、実行力が活きる「協働の都市づくり」を進める中で、2004年度を「協働元年」と位置づけ、4月に「市民協働推進事業本部」という新たな機構を設置した。事業本部とは、横浜市が市政課題のうちでとりわけ力を入れて取り組むために設ける市の組織。7月には、市民と行政が真に対等な関係に立って課題解決を図っていくための共通認識として「協働推進の基本指針」を策定。同月、協働事業の提案募集も行われた。12月には横浜市開港記念会館などで「コラボレーションフォーラム横浜2004」が実施され、全国各地から有識者や実践者が集まり「協働による地域づくり」ついて意見が交換された。また、旧富士銀行横浜支店を暫定的に活用していた「市民活動共同オフィス」が10月で閉鎖され、新たなオフィスがみなとみらい21クリーンセンタービルに設置されることが12月に発表となった。
「コラボレーションが街を元気にする」ヨコハマの協働ストーリー 協働を考える「コラボレーションフォーラム横浜」開催 市民活動共同オフィス管理運営団体・入居団体を募集 横浜市市民活動共同オフィス 横浜市における市民活動との協働に関する基本方針(横浜コード) 協働事業提案制度モデル事業横浜市内に本社を置く9社が、横浜へのベンチャー企業誘致を目的に、地域振興型の民間投資ファンド「横浜メリットファンド1号」を11月に設立した。同ファンドは「オール横浜体制で官民が一体となり、横浜で創業しようとするベンチャー企業を応援する」という趣旨で、横浜市のベンチャー誘致施策と連動し、横浜に移転・創業する企業に投資を行う。ファンドには、相模鉄道や居酒屋チェーンのコロワイド、タカナシ乳業、みなとみらいキャピタルなどが出資。運営を担当するみなとみらいキャピタルの代表取締役の大田氏は「市からの出資は受けない純民間のファンド。来年春まで追加出資企業を募り、ファンドは20~30億円規模を目指す。1社当たり2,000万から3,000万円、計60から70社程度に投資する計画。運用期間は10年で投資利回りは10から15%を想定する。」と語った。
横浜メリットファンド 横浜へ企業誘致を目的に「横浜メリットファンド」設立 横浜起業家サポートデスク横浜市経済局は12月24日、横浜の強みを活かしてIT(情報技術)産業の集積促進を目指す「横浜市IT産業戦略」を発表した。横浜が目指すITのあり方を「市民生活を豊かにする人間中心のIT活用」とし、「交流」「創業」「誘致」「人材育成」の4点を基本戦略に据え、横浜にある地域資源を有機的に結び付けたIT産業の総合的な発展を目指す。1月28日には「横浜を先端のデジタル技術で世界に新しい感動を発信する拠点にしていく」ために「横浜市IT産業戦略シンポジウム」が開催され、中田市長による同戦略のプレゼンテーションやパネルディスカッションなどが予定されている。2005年から3年間の計画で、国際的に産業競争力がある「横浜型IT産業クラスター」の形成にむけた取り組みが始まろうとしている。
横浜市、「IT産業戦略」発表、シンポジウムも開催 横浜市経済局 記者発表 「横浜市IT産業戦略」策定!!以上、ヨコハマ経済新聞的な目線でふりかえった「ヨコハマ十大ニュース」。今年のヨコハマは全国発信型の話題性あるニュースが多く、「始動」や「新設」といった、未来への発展を思わせる単語が目立った。「横浜」というブランドの価値が高まった1年だったと言える。横浜市もここ2年、矢継ぎ早に組織の改革を進め、新しい政策を様々な方面で展開している。その中でもEU諸都市で注目されている「創造都市」の考え方、都市再生へ取り組む「クリエイティブシティ・ヨコハマ」の展開が期待される。変わりゆく時代の中で、新しいスタイル・考え方で情報コミュニケーション技術を使いこなす人達は確実に増加している。「クリエイティブ・シティ」を提唱する「ヨコハマ」に、そういった人材にとって「創発的」且つ「魅力的」な場が、より増えていく事を期待したい。
弓月ひろみ + ヨコハマ経済新聞編集部